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中村大使 生きたスイスを語る

ベルンの日本大使館にて、中村雄二スイス大使。

(swissinfo.ch)

ドイツ語に堪能な中村雄二スイス大使は旧東ドイツも含めた欧州の全ての独語圏に在勤した。オペラ好きで読書家の大使の会話からは教養が滲み出るが「スイス26州全部に足を踏み入れた」とフットワークも軽い。「スイスの自治体それぞれ特有の文化が面白い」と好奇心は尽きない。スイス赴任は2002年の11月から。目下、最大の関心はスイスの危機管理だ。

 「この仕事の醍醐味は現代史と共に生きているという実感があること」と語る中村大使は冷戦時代に東ベルリンに駐在していた。秘密警察の監視や盗聴は日常茶飯事で夫人と庭で、歩きながら話すこともしばしばだった。何よりも、西側に行く自由がない現地の知り合いを見ているのが辛かった。忘れもしない1989年11月9日、ベルリンの壁が崩壊した。旧東西ドイツ国境へ出向き、自分の目でそれを確かめ日本に報告した。誰も予想できなかったことが一挙に起こった。「歴史は変わるし、動き出したら流れは速い」という教訓を得た。

 スイスに住んでみて実感したのが「小さい国土なのにバラェティーに富んでいる」ということ。グラウビュンデン州ではロマンシュ語が本当に5種類あるのを確かめ驚いた。それぞれの自治体に独自の文化があるのが面白い。最も注目するのは危機に対する準備だ。有名な核シェルターだけでなく、災害、事故、食料やエネルギー供給が途絶えた状況を想定し備えている。「万が一、何か起こった時に何ができるか?を考える現実的で実用的なスイス人の姿勢が素晴らしい」という。

 スイスは「ここ10年で新しい局面に入っている」と分析する大使。まずは冷戦終結に伴う「中立」概念の変化が第二次大戦以来の、中立国としてのスイスの立場を変えた。加えてEU統合の進展だ。両者が予想外のスピードで進んでいるために内政面の変化にも繋がった。

 EU加盟については大きな隣人に飲み込まれてしまい、スイスの大きな特徴である直接民主制が危うくなるという心理的抵抗が大きいようだ。「現在はスイス人も模索中なのだろう。すぐには結論がでないのではないか」と中村大使は語る。


swissinfo 聞き手 屋山明乃(ややまあけの)

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