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中立国スイスの企業、イラク復興進出で模索

イラクでは電力の復旧作業が今一番求められている Keystone

旧フセイン政権崩壊1周年を9日に迎えるイラクで、中立国スイスのビジネスマンたちは米英主導による復興事業にどう食い込むか模索している。スイスの企業によるイラク進出は、現地の不安定な治安情勢に加え、外交問題が絡むため、複雑な様相をみせている。

イラクでは現在、反米武装勢力が攻撃の標的を米軍だけでなく、イラク警察や民間人、復興事業に携わる外国人など狙いやすい「ソフト・ターゲット」に拡げており、民間人の犠牲者が急増している。

スイス系企業の海外進出を支援する貿易振興会「Osec ビジネス・ネットワーク」は先週、イラク復興事業に関する会議をチューリヒで開いたが、会議では社員の安全問題に議論が集中したという。

高まる反米感情

 イラクのファルージャで3月31日におきた米民間人殺害事件は、現地の治安情勢の悪化と反米感情の強さを見せつけた。

 この事件が衝撃的だったのは、武装勢力が米民間人の乗った自動車を襲撃し放火しただけでなく、イラク住民が車内から黒こげの遺体を引きずり出し踏みつけ、車で引きずって橋の上につるし歓喜した点にある。

 殺害された米民間人は米国防省の委託を受け、ファルージャへの食料輸送車両の護衛にあたっていた。

 事件後、イラク復興ビジネスに関わる外国企業を対象に5日からバグダッドで開かれる予定だった国際見本市「バグダッド・エキスポ」も、治安悪化への不安の高まりから無期延長となっている。

 現地のスイス政府代表部のマーティン・エシュバッハ氏も、「自国のビジネスマンたちにイラク復興に積極的に関わるようにと促すことはできない状態だ」と話す。

国籍問われる復興事業

 イラク戦争に反対した国の企業は、イラクの主要な復興事業から事実上外されている。

 米国は昨年12月、イラク復興事業の第1段階で入札に、カナダ、フランス、ロシア、ドイツの4カ国を事実上排除する方針を打ち出した。欧州連合(EU)は、政府調達で国籍による差別を禁じた世界貿易機関(WTO)のルールに抵触する可能性があると指摘し、反発してみせた経緯がある。

 その後、米国は一部見直しに動き、第2段階から参加を認める方針を示している。

 中立国スイスも主要な復興事業の入札から外されており、受注はあくまで下請けに限られる。だた、仮に米英などの企業と下請け契約にこぎつけられても、反米感情が高まっているイラクで働く社員の安全をどう確保すべきか、という問題は依然付きまとう。


 スイス国際放送  ロバート・ブルックス  安達聡子(あだちさとこ)意訳

スイス貿易振興会「オセック・ビジネス・ネットワーク」は先週、イラク復興事業に関する会議をチューリヒで開いた。

5日からバグダッドで開かれる予定だった国際見本市「バグダッド・エキスポ」が無期延長に。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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