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今年の歴史的レストラン・コンテスト、優勝者発表

450年の歴史を持つ建物が1年の改築を経て観光客を待っている swissinfo.ch

もし建物が口をきくことができたら、ウールヴァルトハウス・レストランは、優勝スピーチをどのように語るだろう。

このコンテンツは 2005/10/14 15:38

代わりにスイスインフォが、スイス東部にあるこの由緒正しいレストランの関係者にインタビューした。450年の歴史を持つ優勝者の素顔は実に魅力的だ。

スイス歴史的建築物保存協会に属するピーター・オーマッヘンさんは、権威ある「スイス歴史的ホテル・レストラン・コンテスト」の選考委員会の委員長だ。オーマッヘンさんにかかると古い建築物の保存を目的としたコンテストも、まるで「美人コンテスト」のようだ。

「美しい女性はたくさんいましたが、私たちは外見だけでなく、カリスマとも呼ぶべきもので選ぶのです。そしてその中身も当然、重要な選考基準になります」

細部までも心血を注いで復元

今年の優勝者、ウールヴァルトハウス(Urwaldhaus)は、スイス東部にある牧歌的な村、アッペンツェルの丘の上にたたずんでいる。大掛かりな改築が行われ、見事に生まれ変わったこのレストランは、まさに優勝者にふさわしい風格だ。

ここは過去200年間、農家を改築したレストランとして営業していた。しかし、今回の改築はただ昔のままの姿をぽんと復元したわけではない。歴史的な細部まで心血注がれた。これが選考委員会の興味を引いた。

「もちろん、この建築物の古さは特筆ものです」。アッペンツェルの歴史的建築物保存協会のフレディ・アルトへールさんは語る。「しかし、選考委員の度肝を抜いたのは、このレストランはオープンした当時とほとんど同じ状態である、ということです」

硬い木材で出来た窓のよろい戸は、昔のままの姿を頑固に守り、なめし皮の紐を使って、えいっとばかり引っ張って開け閉めをしなければならない。小さな折りたたみ式のベッドは、桜の木の棚に埋め込まれているし、ろうそく立ては壁からぽんと飛び出す仕組みになっている。

涙ぐましい努力は通常目につかないような所にまで及ぶ。壁を支えているのは、がっしりした木材の横梁だが、この横梁と横梁の間に、長い年月の間に出来た裂け目も丁寧に保存されたばかりか、床のぎしぎしいう音がなくなってしまわないように、改築には細心の注意が払われた。

2003年にこの歴史的建築物の復元を行うために必要な資金が集められ、財団が設立された。経営を任されたのはウカツ夫婦だ。ウカツ家は、レストランの上階にあるアパートに引っ越して来た。

食事も折り紙付きだ。以前に湖畔のレストランを経営していたディーター・ウカツさんは、魚介類のメニューにはかなりうるさい。山間の村、アッペンツェルでは珍しい存在だ。よだれが出そうなスモーク・サーモンや海老の料理。小さいけれども良く手入れのされた台所で、芸術の域にまで達したと言える料理群がアッペンツェルの村人の舌を開拓した。

人々の思いの一杯詰まった貴重な財産

この伝統的な賞を選考するのはユネスコ公認の非政府機関、国際記念物及び遺跡会議(International Council on Monuments and Sites、ICOMOS)のスイス支部。去年、優勝したのはシルス・マリア(Sils Maria)だった。

「新築の建物なんて、まつわる話が何もなくてつまらないわ」。アギ夫人の底抜けに明るい笑い声を前に、つられて微笑んでしまわない人はいないだろう。「日曜日、店を閉じた後、主人と私は食堂に腰をおろしてフリーダ(1927年から1966年までここを切り盛りした伝説的なオーナー)に話しかけるの。私たちはちゃんとやっていますでしょうかって聞いてみるのよ。絶対、フリーダには私たちの声が聞こえていると思うの」

ただ一つ、しっかり近代化された場所はトイレなどの水周りだ。利用客にとってはありがたいことだが、これだって地元の住民は「近代化しすぎるのではないか」と心配したものだ。

古くても機能的

古い建物を保存するという目的はありますが、それで生活に支障がでるほど不便になるのでは困ります。このため保存協会では、一定の改築や改造を認めています」とアルトヘールさんは説明する。歴史的建築物が現代社会と共存するコツというものだろうか。

「もちろん、こんな家に住むのはいつも100%快適、というわけにはいきませんよね。古い家にありがちですが、とにかくそこら中埃だらけなんです」と、ウカツ家の娘ステファニーさんは語る。「でも、建物自体に歴史があるということは素敵なことです。家の中を歩いていると、ふと、何世紀もの間、同じ床板の上をこうやって歩いていた人々がいたんだなあ、と思いをはせたりします」

ステファニーさんによると、ウールヴァルトハウスはまだまだ可能性を秘めている。観光学科の学生でもあるウカツ家の希望の星は、歴史的建築物をどうやってうまくビジネスに乗せていくかという研究をしている。「食べるものを売るより、ずっと大変です」と、ステファニーさんは言う。

ただのレストランホテルでは、競争に負ける。そこで思いついたのが冬のアウトドア・スポーツとのパッケージ料金だ。これに加えて、泊り客は家族の一員のように温かく迎えられる。これはこの地域一帯の伝統でもある。

新しい風

ウカツ家は村にとって新しい風だった。アギ夫人は初めてここにやってきた日のことを振り返る。彼女の外見に、村人たちは眉をひそめた。「私はいつものようにエレガントな帽子をかぶり、しっかりお化粧をしていたの」

ウールヴァルトハウスの新しい女主人の姿に、彼らは緊張したのだ。「皆は、馴染みのウールヴァルトハウスの敷居が高くなったと感じたようだし、私の方でも、村の男の人たちを見て、まるで下着を着ているみたい、と目を丸くしたの」。アギ夫人は笑う。「あら、急いで皆に適当なシャツを買ってきてあげなくちゃ!って思ったのよ」

心配ご無用。アギ夫人によると、新生ウールヴァルトハウスは瞬く間に村人に溶け込んだ。人々はトランプをしたり、お気に入りのテーブルでワインやビールを楽しむために定期的に通ってきている。ずっと今までそうしてきたように。

swissinfo、デイル・ベヒテル 遊佐弘美(ゆさひろみ)意訳

キーワード

ウールヴァルトハウスは2005年の「スイス歴史的ホテル・レストランコンテスト」に優勝した。
元々は1550年に建てられた農家だった。レストランになったのは1805年から。
去年1年間かけて大掛かりな改築が行われた。

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