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健康食品のミューズリーを食べましょう

100年前のレシピはいまは流行らない。数々あるレシピの中でも、果物がたくさん入っていて、クリーミーなミューズリーが人気。 foodnews.ch

フォンデューやラクレットといった料理だけがスイス料理ではない。穀物と果物とミルクで作るヘルシーな朝食、ミューズリーも実はスイスが元祖。発明者はチューリヒのサナトリウムを経営した医師、マックス・ビルヒャー。スイスではミューズリーをビルヒャー・ミューズリーと言う。

ビルヒャーが経営していたサナトリウムが現在も存在していれば今年で100周年を迎える。当時は革新的な食べ物だったミューズリーの歴史と、レシピを紹介する。

マックス・ビルヒャーがチューリヒで医者になった頃、医学は対症療法が主で、病気の症状が出てから、症状を軽くしたり、症状を取り払うことにあるという考え方が一般的だった。ビルヒャーは、日常の食事が健康に大きく関わると考え病気の予防には栄養の摂取が重要だと目をつけた。1904年にはチューリヒにサナトリウムを開設し、食事療法を実践する。現代にも通用する健康に対する考え方だが、当時は受け入れられなかったという。

ケロックと対照的なビルヒャー

 毎日の食事が健康をもたらすと考えたビルヒャー。アルコール、コーヒー、カカオといった嗜好品は禁止し、ダイエットができて栄養満点なミューズリーを、経営するサナトリウムで取り入れた。今ではあたりまえの考えだが、当時は認められなかった。その後、ビルヒャー自らのビタミンの研究が発表され、徐々に食事の重要性が認められるようになった。

 米国では1906年、ケロッグ兄弟がコーンフレークを発明。こちらは早速製品化され、今では売上90億ドルを誇る有名食品である。一方、ミューズリーは商品登録もなされず、ビルヒャーは「お金儲けは考えていなかった」とチューリヒ州立大学の医学史のエバーハルト・ヴォルフ氏。「唯一商品登録された彼の考案品は、りんごを擦り卸す金具の板だろう」と、ビジネスにはほとんど無縁に生涯を終えた。卸し金は日本の大根卸しとは違って、目が粗く、りんごは細切れのようになる。

 ビルヒャーのサナトリウムは、作家のトーマス・マンやヘルマン・ヘッセも宿泊した場所。しかし、1994年に経営難となり、大手保険会社に売却されコンベンションセンターとなっている。

医者のレシピでは満足しない いまのミューズリー

 ビルヒャーは医者であってコックではないことは明らかで、オリジナルのミューズリーはあまり美味しそうには見えない。オリジナルのレシピによれば、まず、オートミルのフレーク8gを12時間大さじ3杯の水に漬けたものにレモン半分の汁とコンデンスミルク大さじ1杯を混ぜ合わせる。これに、乱切りのりんご200gを加えミキサーに掛ける。飾りに各種ナッツを大さじ1杯振り掛ける。まるで「りんごのおかゆ」とでも言いたくなるミューズリーを今作るスイス人はまずいないだろう。

 喫茶店やレストランではそれぞれレシピに工夫がある。ミルクの代わりに生クリームを使ったり、りんごのおろし方も荒いものもあればきめの細かいものもあり、さまざま。イチゴやラズベリーなど高級な果物を混ぜ合わせ、マンゴがトッピングとして飾られていたりする。

 チューリヒの高級喫茶店、シュプルングリでは、定番のレシピとシーズンごとに代わるミューズリーの2種類を毎日300キロから400キロ製造し、ショップと喫茶店で売っている。ミルクの代わりにヨーグルトを入れ、砂糖も控えめ。賞味期間は1日と限られていて生鮮食品の代表であることが健康的なイメージを引き上げる。 
 マーケッティング責任者、トマス・プレノシル氏によると人気の理由は「健康的だから」で、「スイスの喫茶店のメニューとしては決して欠かせないもの」という。

スイス国際放送 佐藤夕美 (さとうゆうみ)

りんご200gを芯と種ごとすりおろす。
オートミルのフレーク大さじ1杯を大さじ3杯の水で12時間ふやかす。
レモン汁半個分
コンデンスミルク大さじ1杯
ナッツ(クルミ、ハーゼルナッツ、アーモンド)の粉砕大さじ1杯
水でふやかされたオートミルにレモン汁、コンデンスミルクを混ぜたものに上からりんごをすりおろし、酸化しないように常にかき回すのがコツ。最後にナッツをふりかけ飾りとする。
現在はコンデンスミルクは使わず、ミルク、ヨーグルト、生クリームを使うのが一般的。りんごのほか、角切りにした果物やベリーをふんだんに使う。トッピングにはかぼちゃの種やマツの実などを振りかけ、ホイップクリームでトッピングすることもある。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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