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剣道で結ばれたふたり キムラ家を訪ねる

子どもの教育と安全のために、スイスに住むことにした木村夫婦。 swissinfo.ch

木村オスカールさん(28歳)はブラジル生まれの日系3世。妻のダニエラさん(31歳)はスイス人で、8月で1歳になるタイスちゃんのお母さんでもある。永住の地を夫妻がスイスに求めてきたのは2年半前。二人とも、アフターファイブにチューリヒの道場で剣道を教える。                                          

 家族3人の食卓に上るのは、うどんやそばのほか、茶碗蒸しなどの和食が多い。二人が千葉の国際武道大学で剣道の修行をしていた時に、初めて和食の味を覚え、スイスでも作るようになったという。

 ダニエラさんは父親が剣道をしている姿を見て「格好いい」と思い、自分も剣道を始めるようになった。武具の葵染めと汗のにおいを嫌がる妹とは違った。ダニエラさん、12歳の時である。大学で日本語を学んだのも剣道があったから。一方、オスカールさんはサンパウロで5歳から始めた空手を止め、13歳で剣道へ鞍替えした。厳しい家庭で育ち「剣道の厳しさが自分に合っていると思った」こうして二人はそれぞれ剣道にのめりこみ、毎日稽古すれば強くなれるからと来日。日本の道場でめぐり合った。

 子どもの将来を考えるとスイスの方がより住みやすいと判断した二人だが、オスカールさんはチューリヒでなかなか就職できず、寿司バーで働いていたことも。やっとエンジニアとして認められ、スイスの企業に雇われた。

 欧州選手権などの大会では勝ちたいと思うし、剣道はスポーツの一種だとも思うが、フェンシングとは違うと言うオスカールさん。「フェンシングの伝統は、いまの欧州の日常生活には残っていない」と見る。一方、剣道はまだ日本の生活の端はしにその精神を見出すことができるので、スイス人にも共感されるという。宮本武蔵の『五倫書』を小脇に入門を願う人もいるが、勝たなければ死ぬのだといった武士道の一面は「スイス人は理解したがらない」という。

 スイスで剣道を習う人の数は100人程度とわずか。欧州では強国のフランスの5分の1にも満たない。「まずは弟子のレベルを上げ、自分たちの技を鍛えたい」若い夫婦は口をそろえて将来の展望を語った。

swissinfo 聞き手 佐藤夕美(さとうゆうみ)

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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