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多文化チームのスイス代表、ユーロ2020勝ち抜けるか

パニーニのサッカーステッカー冊子
MFジェルダン・シャキリもユーロ2020の代表メンバーに招集された。「アルプスのメッシ」とも呼ばれるシャキリは、スイスをユーロ2020の栄光へと導くことができるのか? © Keystone / Gaetan Bally

サッカー欧州選手権(ユーロ2020)が11日、1年遅れで開幕する。サッカーファンも政治家も大会関係者も、今回はピッチ上に政治が持ち込まれないことを祈るばかりだ。

ユーロ2020は新型コロナウイルスの影響で延期されていた。計24チームが出場する4週間のトーナメント大会で、今回は初めて4つのタイムゾーンと最大4700キロメートル離れた欧州11カ国11都市外部リンクで開催する。スイスは08年大会をオーストリアと共同開催したが、今年は開催地に含まれていない。

11都市がそれぞれ一度だけホスト国を務めるという分散開催型の計画は、コロナで渡航が制限されている現状を鑑みると、サッカーファンにとっては最良の結果と言える。開催国11カ国のうち、アゼルバイジャンとルーマニアを除く9カ国が出場権を獲得したため、観客は少なくとも2つのホームゲームを観戦するチャンスがある。

スイスにある欧州サッカー連盟(UEFA)は、スイス連邦保健庁感染症班の班長として昨年のパンデミック対策を指揮したダニエル・コッホ氏を、ユーロ2020の観客問題に関するアドバイザーに起用した。

コッホ氏がリスクと感じていたのは、大会に出場する24チームのファンが、1つの国の国内を移動する点だ。コッホ氏はAP通信に対し「(ユーロ2020を)1カ所で開催すればもっと簡単になるだろうという考えは間違っていたと思う」と述べた。

開催地が11カ所(アイルランド・ダブリンは4月に辞退)になり、UEFAにはより柔軟な対応が可能になったほか、各国の政府が健康と安全の問題に集中的に取り組めるようになった。コッホ氏は「(局所的な流行が)猛威を振るうリスクははるかに少ない」と話す。

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「双頭のワシ」再び?

スイス代表のグラニット・シャカ主将はレッドカードでよく批判を浴びる外部リンクが、代表戦の出場試合数が93と最も経験豊富な選手だ。コソボやアルバニアにルーツを持ち、父親は旧ユーゴスラビアの政治犯だった。兄のタウラントはアルバニアでプレーしている。

そうした家族の絆は、18年のサッカー・ワールドカップ(W杯)のスイス対セルビア戦で明らかになった。シャカと、同じくコソボ・アルバニア系の出身であるジェルダン・シャキリがゴールを決めた後に、アルバニアの国旗に描かれた「ワシのポーズ」をしたからだ。このジェスチャーはスイス各紙が批判し、移民が多くを占める代表チームが本当にスイス代表と言えるのかという古い議論にまで火が付いた。

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この問題は尾を引き、シュテファン・リヒトシュタイナー主将ら3選手が罰金処分を受けた。またスイスサッカー連盟(SFV)のアレックス・ミーシャー事務総長は二重国籍の選手を代表に選出すべきではないと発言し、その後引責辞任した。

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シャカの主将抜擢は歴代の選手たちからも疑問視された。しかしシャカはそれをものともせず、ユーロ予選を見事に突破。今大会では多文化チームを率いて大会を勝ち抜きたいと意欲を燃やす。

スイス代表26選手のうち、3分の2は移民のバックグラウンドを持つが、ほとんどははシャカと同様スイス生まれだ。また、スイスのサッカークラブでプレーしている選手は4人にとどまる。

勝利のチャンス

では、スイスのファンはスイス代表の勝利にどれくらい期待して良いのだろうか?

スイス代表チームのウラジミール・ペトコビッチ監督は、独語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーに対し「目標を設定するのは好きではない」と語ったが、その後、グループステージ突破(ベスト16進出)が目標だと明かした。60年の歴史を持つ同大会で、スイスが過去にこの目標を達成できたのは、16年大会の1度だけ。ベスト16に残ったが、PK戦でポーランドに敗れた。

ブックメーカーの勝敗予想では、FIFAの世界ランキングで現在13位のスイスはこれを成し遂げることができるはずだという見方が多いが、厳しい状況になることが予想される。優勝チームは来月11日に決まるが、スイスの勝算は現在約70対1。5対1の勝算があるフランス、ベルギー、イングランドから大きく引き離されている。

シャカは、ユーロ大会やW杯などの主要大会でスイスが準決勝に進出する可能性はあると繰り返し語っている。

ペトコビッチ氏は独語圏の日刊紙NZZに対し次のように語った。「こう言い換えよう。楽観的にはグラニット・シャカに賛成だが、現実的にはそうではないかもしれない」

(英語からの翻訳・大野瑠衣子)

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