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スイスアルプスで飛行機事故相次ぐ 旧軍用機Ju52が墜落

戦前に作られたヴィンテージ飛行機Ju52が4日、スイス東部のスイスアルプスで墜落した。 乗っていた20人全員が死亡し、2001年以来の大惨事となった。

墜落現場となったのはグラウビュンデン州フリムス付近。同州警察は5日の記者会見で、乗客17人とパイロット2人、客室乗務員1人の全員が墜落で死亡したと発表した。

チューリヒ州バッサースドルフでのクロスエアの飛行機が墜落し24人が犠牲になった2001年の事故以来、スイス最悪の事故の一つとなった。

事故機に搭乗していた乗客・乗組員は、オーストラリア人カップルとその息子以外、スイス人だった。

飛行機は4日午後、ティチーノ州ロカルノからデューベンドルフに向かう途中で、ピッツ・セグナス山(標高2540メートル)の西側に墜落した(地図参照)。

ヘリコプター5機を始め大規模な救助作業が5日朝まで続いた。事故現場周辺の空域は閉鎖され、登山客に人気の登山道も一部通行止めとなった。

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事故原因

事故の原因はまだ分かっていない。警察は、事故前の遭難通報もなかったと述べた。

スイス交通安全調査委員会のダニエル・クネヒト氏はフリムスでの記者会見で、飛行機はほぼ垂直に、高速で地面にぶつかったようだと語った。

旧式の事故機には現代の航空機では標準装備されている操縦室音声記録装置やや飛行記録装置が備え付けられていなかったため、さらなる調査は難しい。 

クネヒト氏によると、調査の結果他の航空機やワイヤーなどの障害物にぶつかった可能性はないことが分かった。犯罪行為や墜落前に機体部品がなくなったり壊れたりした証拠もないという。

天気に関しては、高い気温がエンジンの性能に影響を与えたかどうかについてはコメントしなかった。ただ調査に当たっては全ての可能性が検討されると述べた。

飛行機の使用年数は、航空機が十分に管理されている限り、安全とは関係がない、と話した。

「Auntie Ju(Juおばさん)」

事故機は旧軍用機を使用した遊覧飛行を専門とするJUエアー社(本社・チューリヒ州デューベンドルフ)が所有・運行していたドイツのユンカース製のプロペラ機「Ju52」。ドイツ語では「Juおばさん」と呼ばれ、1939年製造、4日までの飛行時間は1万187時間だった。

JUエアーのクルト・ヴァルトマイヤー最高経営責任者(CEO)は、1983年の創立以来3機のJu52で遊覧飛行を行っていたと説明した。

62歳と63歳の2人のパイロットはスイスエアーやスイス・インターナショナル・エアラインズ、エーデルワイス航空でも働いていた。30年以上にわたってスイス空軍の軍事パイロットを務めていた経験もある。ともにJu52で数百時間の飛行経験があった。

ヴァルトマイヤー氏によると、客室乗務員(66)は40年の専門的経験があった。事故機は直近で7月に点検され、欠陥は見つからなかった。

事故を受け、同社が運航するすべての便は現在、飛行を取りやめている。

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1932年から1952年にかけて製造されたプロペラ機Ju52 Keystone

家族の悲劇

また、同日午前10時前には、フリムスの事故とは別の航空機がヘルギスヴィール近くに落ちたとニトヴァルデン準州の州警察が発表。

衝突の際、飛行機が爆発し周囲の森林地帯が炎に包まれた。救助隊員が現場に到着する前に、消火のためにヘリコプターが出動した。

同日夕、警察はこの事故で4人家族が死亡したと発表した。遺体は損傷が激しく、犠牲者の特定が困難だったと話していた。

家族は両親と2人の幼い子供たちで、同地域に居住。午前9時半ごろにフランスに向け出発した。

また、わずか1週間前にはヴァレー(ヴァリス)州で軽飛行機が墜落し、4人が死亡した事故が起きたばかりだった。

伝説の航空機

この三発機は1931~52年に製造された。当初は民間の使用のために考案され、ルフトハンザとスイス航空の旅客機として使用われた。

第二次世界大戦中、ドイツの空中戦隊ルフトヴァッフェが同機を爆撃や物資・パラシュートなど様々な任務のため輸送機として広く運用していた。

終戦後も引退することなく、インドシナ戦争中にフランスが軍事作戦に使用したり、ポルトガルがアフリカの植民地戦争中にパラシュート部隊を輸送するために使用したりした。

スイス空軍は、39年に3機を購入し、82年まで運用した。

広告と映画

スイス空軍の仲間内で設立したJUエアーは、スイスの軍用機のうち2機を民間機として使用した。観光向けの飛行が大ヒットし、海外から2機を追加購入した。

同社は観光飛行のほか、映画業界やスイスの時計メーカーIWCを始めとする高級品の広告に機体を貸し出して収入を得ている。

(英語からの翻訳ムートゥ朋子)

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