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大雪で大洪水の危険性

大雪にも負けず、野生のクロッカスが雪の間からつぼみを覗かせる Keystone

アルプス北部に降った3月末の大雪は、スイスのいくつかの地域で積雪量をさらに増やし、10年前と同様の大洪水を起こす原因になりかねないという

ダボスにある「雪、雪崩研究所」によれば、今年の冬の降雪量は、いくつかの気象天文台で最高を記録し、ほかの多くの気象天文台でも最高に近いか、平均を大きく上回る量を絶えず記録したという。

温暖化で洪水の規模拡大

 「戦後何回かあった厳冬に比べ、今年の冬の特徴は、降雪量がスイス全域でさほど違わなかったことだ」
 と「雪・雪崩研究所 ( SLF ) 」は指摘する。

 先週グリムゼル・パス( Grimsel Passe ) では24時間に24センチメートルの雪が降り、以前降った雪と共に4メートル以上の積雪を記録した。こうした大量の雪が今後数カ月にどれ程溶けるかによって、1999年と同様の大洪水が起こるか否かが決まる。

 雪、雪崩研究所によれば、雪が含む水分の量、今後降る雨の量、標高が高い場所での比較的高い春の気温という3つの条件が洪水の規模を決定する。また1999年もそうであったように、春にまた雪が降ることも重要な要素で、今年はその可能性が高いという。

 また、ベルン州が行った洪水に関する昨年の研究は、降雨時の降水量と集中度が高くなるのは温暖化が原因だと指摘している。同研究はさらに、今後洪水が起こった場合、修復費に5億8000万フラン ( 約498億円 ) かかった1999年の洪水や、20億フラン ( 約1720億円 ) かかった2005年の洪水より、規模は拡大すると警告している。

完成が待たれる「危険マップ」

 現在政府が取り掛かっているスイス全域のリスク評価「危険マップ」は洪水の危険度が高い地域を表示し、また危険度の高い町や村に、洪水に充分耐えるインフラ設備強化のデータも提供することになる。しかし問題は、各州のデータ提供が遅れており、マップは2011年まで完成しないことだ。

 1999年の大洪水の経験以降、多くの市町村は、独自の対策プロジェクトを立ててきた。例えば、2005年の大洪水で被害の大きかったルツェルン市では、旧市街を守るため2300万フラン ( 約19億円 ) の費用をかけた。

 もう1つの湖畔の街、ベルン州のトゥーン市では、5350万フラン( 約46億円 ) かけ地下に約1キロメートルの長さのトンネルを掘った。トゥーン市は、これを使って緊急時には1秒に100立方メートルの水量をトゥーン湖からアーレ川に流すという。こうした独自の対策も「危険マップ」には掲載されることになる。

 さて、今年の洪水の危険性はまず、今始まったばかりの春に吹く暖かい南風フェーン現象の強度や時期によると、雪、雪崩研究所はいう。もし春の早い時期に吹けば、雪解けが早まり、洪水の危険性は減る。しかし問題はこのフェーン現象がいつやってくるかまったく予測できないことだ。

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2007年8月、大洪水で修復費に2億フラン( 約172億円 ) かかった。

2007年6月、ベルン州のヒュットヴィル ( Huttwil ) とエリスヴィル ( Eriswil ) での洪水で3人が死亡。道路や線路などが泥水に覆われた。

2005年8月、ベルン州と北部、中部スイスでの大雨と洪水で8人が死亡。修復費に20億フラン ( 約1720億円 ) かかった。

2000年10月、ヴァレー州で豪雨と洪水のため16人死亡。修復費に5億フラン( 約430億円 ) かかった。

1999年5月、洪水でべルン州のトゥーン ( Thurn ) 、ラインフェルデン ( Rheinfelden ) やボーデン湖などが大被害を受け、修復に5億8000万フラン ( 約498億円 ) かかった。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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