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寒中の温かい親交

(swissinfo.ch)

グリンデルヴァルトで1月19日から24日まで「第27回世界雪祭り」が開催された。スイスや日本をはじめオランダ、ロシア、イギリスなど10カ国のグループが、「一瞬 ( Augenblick ) 」をテーマにして雪からそれぞれのイメージ像を彫り上げた。

作業が佳境にある21日、筆者は日本チームを訪ねるため、小雪が舞う現場に向かった。

道具の貸し借り

 長野氷彫倶楽部会長の野田真一さん ( 47歳 ) 、由紀美さん ( 46歳 ) 夫妻と山本久夫さん ( 56歳 ) 、優子 ( 51歳 ) さん夫妻の日本チームが取り組んでいたのは「雫」。作業場にはすでに、見上げるほどの大きさで、荒削りながら先のとがった円錐形の「雫」が出来上がっていた。
「雫が水面に落ちる瞬間を表現したいので、綺麗に輪を描く波紋も彫ります」
 と野田真一さん。水滴のはかなさを表現する「和的な考え」を念頭に、彼が決めたという。真一さんと久夫さんの2人は、2年前にもこの祭に参加し、五重塔と東京タワーを作った。グリンデルワルト日本語観光案内所の安東康代さんによると「見事な細かい彫り物を施した作品だった」が、入賞は逸した。
「テーマの『高・低』を今と昔の高い建物で表現したのですが、分かってもらえなかったようで。今回は、( 誰にでも分かってもらえる ) 単純なものがいいと思いました」
 と真一さんは説明する。

 4人は、グリンデルヴァルトと姉妹都市にある長野県松本市の出身だ。姉妹都市の交流を深めようと2年前から、お互いの冬の祭りで交互に参加するようにしている。というわけで、昨年1月中旬、松本城公園で開催された「第22回国宝松本城氷彫フェスティバル」には、グリンデルワルトから4人のスイス人が参加した。当時のメンバーの1人、ブルーノ・カウフマンさん ( 32歳 ) が、大きなノミのような道具を携えて日本チームが働く作業場にやってきた。2国間の協力体制は万全の様子。早速、優子さんがそのノミで、「雫」の表面を滑らかにするため、シャリ、シャリと軽快に雪を削り始めた。

 真一さんも久夫さんも調理師で、氷の彫刻が専門。氷と雪では硬さがまったく違い、手に馴染んでいる道具がここでは通用しないという。必要な道具は主催者が用意しているので、日本からは持って来なかった。
「ほかのチームは最新兵器 ( 道具 ) を持っていますねえ。でもわれわれはマイペースです」
 と久夫さんはユーモアたっぷり。「道具を貸してくれ」と来たフランスチームにも、言葉が通じないなりに親切に接する。

ハイジの奇跡

 グリンデルヴァルトの世界雪祭りは、今でこそ世界から多数の応募があり、10グループに絞らなければならないほどの人気があるが、発端は札幌の自衛隊員が作った1つの雪像だった。

 その雪像はアニメの大ヒット「アルプスの少女ハイジ」を模した巨大なハイジ。スイスと日本の修好120年を記念し1983年3月、札幌雪祭りで雪像作りを担当していた自衛隊員7名が、グリンデルヴァルトに出向して作ったものだ。現在、札幌の陸上自衛隊11旅団司令部広報部に残っている当時の広報誌「希望」( 第199号 ) 1983年4月15日発行 ) によると、成田から飛行機でチューリヒまで22時間かけ、そこから車でグリンデルヴァルトにやって来た7名の隊員は、現地の15度という気温の高さに悩まされたようだ。

 「まるで、ハワイで雪像を作っているようだ」とジョークを飛ばしながら作業をしたが「約4日間で雪像は暖気のため、無残な姿になり、地元の人達の目には復旧困難と映った」とある。しかし期限までの2日間は徹夜で修復作業を続け、開幕式に間に合ったという。地元の人たちは自衛隊員の早業に驚いていたとある。

 こうして「ハイジの奇跡」の感動が、世界各国のアーティストに波及し、ヨーロッパはもとより南米からも幅広く参加者を呼ぶ世界雪祭りになった。また、グリンデルヴァルトと松本市の姉妹都市としての交流を深めることにも役立っている。

 高地のため空気が薄くて息がすぐ切れるという中、朝9時から夕方6時まで、雪模様にもかかわらずうっすらと汗をかきながら作業を続ける日本チームの横でカウフマンさんは、日本チームを手伝いたそうに「雫」の作品を見上げる。
「松本市の祭りに参加して分かったのですが、日本では動物や人が作品対象になるようです。スイスではシンボルを抽象的な形にします。来年も松本に行けたら、そんな違いも念頭に入れたいものです」
 とカウフマンさんは語った。

 なお、24日の審査結果によると日本チームは、残念ながら今年も受賞を逃した。

swissinfo、佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )  グリンデルヴァルトにて

世界雪祭り ( World Snow Festival )

今年のテーマは「一瞬 ( Augenblick ) 」。
今年参加したのは、ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、日本、オランダ、オーストリア、ロシア、スイス、アメリカで、それぞれ4人1組のチームで、木彫、石彫刻などの専門家たちが集まる。1月19日から24日午前中までに50立方メートルの雪から雪像を作り上げた。
地元企業などの寄付も含め総予算は約10万フラン ( 約800万円 ) 。

1辺が約3.5メートルの4枚の正方形の板で囲んだ中に、グリンデルヴァルトの郊外からトラックで運んできた雪を空圧ポンプで入れ込み作られた立方体から、それぞれのモチーフを彫り上げていく。

今年の審査員賞は1位オランダ、2位スイス、3位ロシア、観客賞は1位ロシア、2位スイス、3位イギリスが受賞した。
受賞グループの名前は水晶のトロフィーに刻まれる。

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