惑星発見新時代
地球から、はるか数百光年向こうに輝く星がある。太陽系の外側にある木星サイズの惑星2つを、ジュネーブ大学天文観測所の天文学者を含む国際チームが確認した。
最先端技術を駆使して発見されたこの系外惑星は、WASP-1bとWASP-2bと名づけられた。
ホットジュピター ( 熱い木星 ) として知られるこの2つの惑星は、地球の約300倍の大きさ。WASP-1bの表面温度は摂氏1800度以上と推定されている。
イギリス、フランス、スイスの共同チーム
イギリス主導の天体観測プログラムを持つ天体望遠鏡、SuperWASP ( Wide Angle search for Planets ) は太陽系外の惑星の探査では世界最大だ。惑星の出す光を計測しながら何百もの星を繰り返し測量できる。この2つの惑星は、SuperWASPが独自で見つけると思われていた。
しかし実際は、9月初旬にSuperWASPの研究者がスイスとフランスの共同チームに参加して確認に成功した。この共同チームもソフィーと呼ばれる分光観測装置天体望遠鏡を使ってフランスのオート・プロヴァンス天文台で観測を行ってきたが、イギリスのSuperWASPと力を合わせてやっと星の確認にたどりついたというわけだ。「3国寄れば文殊の知恵」、ということか。
ソフィーは星の周りを廻っている惑星の、ほんの少しのまたたきも見逃さない。この発見はソフィーの性能を世界に知らしめる大事件だった。なぜなら、この最新の機械は、オート・プロヴァンス天文台に取り付けられている途中で、公式な開設記念式典も11月30日とずいぶん先なのだ。
「古いエロディ望遠鏡が数週間前に壊れてしまったので、まだ取り付けている途中だった新しい天体望遠鏡を使ってみたのです」とジュネーブ大学天文台の天文学者、シュテファン・ウドゥリ氏が語った。「使い始めて4日目で、新しい星を2つも発見したのです。もうそれは、大喜びでしたよ」
新しい時代に入りました
ウドゥリ氏は、「ヨーロッパ宇宙局が3500万ユーロ (約 52 億円 ) をかけて準備しているコロー人工衛星プロジェクトを控え、ソフィーの成功は、幸先の良い知らせとなりました」と語る。コロー人工衛星は、今回の星より小さい、地球サイズの惑星の発見を目指している。
研究者たちは、この最新技術のおかげで、惑星システムの形成と、地球の起源について鍵を握ったと信じている。スイスの天文学者たちはソフィーを使って、このコロー・プロジェクトに引き続き計測結果を与えていく予定だ。
「今回の発見によって、我々は惑星発見の新しい時代に入りました」とウドゥリ氏は続ける。「惑星発見の数もぐんと伸びるでしょうし、これまで私たちが受け取っていた情報も今後は違ったものになるでしょう。現在、私たちは惑星をただ見つけるだけでなく、どのような物質で構成されているか、内側はどのようになっているのか、という研究にまで到達しています」
SuperWASPの研究者は、スイスとフランスの共同チームと協力すれば、この2〜3年で10個以上の惑星を発見できると期待している。SuperWASPのプロジェクト研究者、ドン・ポラコ氏は意気揚々だ。「この2つの機関による共同戦術は非常にパワフルですよ。SuperWASPで候補の惑星を探し出し、半径を特定し、ソフィーがその星の性質や重さを計測するのです」
swissinfo、アダム・ボーモン 遊佐弘美 ( ゆさ ひろみ ) 意訳
SuperWASPには8台のカメラが取り付けてあり、星の写真を何十万枚も繰り返し撮影できる。
SuperWASPの性能は従来の天体望遠鏡の2000倍。
ソフィーは、星の集団を計測し、それがどれほど密集しているかも観測できる。
Sophie、Spectrograph for Observation of Astroseismologic Phenomenon and Extrasolar Planetsの略。分光観測装置がついた最新技術の天体望遠鏡
フランスのオート・プロヴァンス天文台で、ソフィーを使って星の形成や星の間の距離が確認された。
太陽以外の輝く星（ 恒星 ）の周りを廻る惑星。太陽系外惑星とも呼ばれる。
SuperWASP天文台は、スペイン領カナリア諸島に設置されている。
SuperWASPの天体望遠鏡は、系外惑星探査では世界最大。
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