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挑発的な民族学者に聞く

ジュネーブで3月に、「大惨事のシナリオ」と題した展覧会を行ったエナー氏。 Keystone

挑発的な展示を行うことで有名な民族学者、ジャック・エナー氏が「ジュネーブ民族学博物館 ( Musée d’ethnographie de Genève )」の館長に就任して1年になる。

このコンテンツは 2007/09/23 15:26

スイス一のコレクションを誇る同館を拡張し、民族学が現代社会で果たす役割の大切さをもっと一般に知ってもらいたいという。

ヌーシャテルの民族学博物館に勤めていた時代、「悪と苦しみ」、「穴」など、日常のオブジェに違う視点をあてることで、さまざまな論議をかもし出すような展示を行ってきたエナー氏。今度はジュネーブの民族学博物館館長としてチャレンジしている。しかし、根底のコンセプトは変わらない。それは、ポスト工業化社会の諸問題を民族学的な視点、しばしば原始的と見なされてきた社会の視点から、解読していく方法である。

swissinfo : 民族学的視点が、スイス社会にもたらすものは何でしょうか?

エナー : 民族学は、一般の人には、まったくと言っていいほど知られておらず、民族学者はよく歴史学者や考古学者と一緒にされます。我々の仕事は、現代人や、現代社会の理解を助けることなのです。民族学は実際のところ、日々の広い領域にわたる問題に関わることができる。しかし必ずしも解決策を提示するわけではない。ただ衝撃的だが意味ある方法で問題に光を当てることができるのです。

この方法はしばしば衝撃的過ぎて、政治家や政策施行者は民族学者と一緒に仕事をしたがりません。実は、今の社会は問題の再検討をしたがらない社会。討論をする意味さえ忘れています。スイスでは、しばしば批評、批判も個人攻撃だととらえてしまうのです。

この仕事をやっていて一番素晴らしいことは、「絶対なる真実はない」ということを人々に伝えられることです。この自分をちょっと疑ってみる態度によって、他人のあり方を考え、他人に対してもっと寛容になれるのです。

swissinfo : ジュネーブはスイスの他の地域からはエキゾチックに見られますが、1年住まれてどう感じられますか?

エナー : まず驚いたのは、ジュネーブは磁石のように人を引きつけるということです。、ヌーシャテルには来ると言わなかった仕事仲間が、ジュネーブに寄りたいのだがいつ都合がいいかと聞いてきます。

ジュネーブは国際的であると同時に、非常に地方色の強い都市。民俗学博物館もこの二面性の狭間に置かれています。博物館もそのコレクッションも世界的に有名なのに、地方的な「壁」に囲まれうまく発展できずにいます。

ジュネーブの政治はヌーシャテルなどに比べると派手で、博物館を発展させるには政治家と同じように舞台に立ち、やり合わなければならない。ここはまた、ビジネスの都市であり、国際関係の都市。そのせいで、スイスの他の地域からは尊大だと見られがちなのだと思います。

swissinfo : ジュネーブ民族学博物館の拡張のために建築家のコンペをなさっていますが。

エナー : 民族学博物館は来館者のアクセスに問題があり、一方、10万個の民俗学的オブジェが保管されているのに、ほんの一部しか展示できないという問題もあります。したがってこの豊かな、特にジュネーブのコレクターによるコレクションを一般に広く公開できる空間を作り出してくれる建築家を探しています。

swissinfo : 他の機関との協同展示、イベントなどを考えておられますか?

エナー : 協同イベントはここに着任した時から、考えていました。民族学博物館のある通りには、たくさんのアートギャラリーと現代美術館があり、これらは1つの協会に属しています。その協会がわれわれの博物館も特別メンバーとして認めてくれました。だからギャラリーや美術館のイベントや展覧会のオープニングに合わせ、博物館も動いていこうと思っています。

いずれにせよ、将来これらの機関と力を合わせ、協同でイベントのコンセプトをまとめたり、実行していくことは確かです。というのも、現代美術、特にアーティストの視点や社会の読み取り方は、民俗学からさほど遠くない。実は、ヌーシャテルでの展覧会を通して、私のことを現代美術のアーティストと呼ぶ人もいるくらいですから。

swissinfo、 聞き手 フレデリック・ビュルナン 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 意訳

ジャック・エナー氏略歴

1943年生まれ。ヌーシャテル大学文学部卒業
1969~1971年、バーゼルの民俗学博物館の学芸員
1973~1980年、ヌーシャテル民俗学インスティテュートの学長
1981~2005年、ヌーシャテル民俗学博物館の学芸員として25の展覧会を企画
2006年~、ジュネーブ民俗学博物館館長

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ジャック・エナー氏による民族学の定義

ある観点からすれば、民族学、社会学は1つに統合される。しかし民族学は特に民族学者自身が研究対象の社会に入り込み、参加する形での観察と質的な分析を行う。

つい最近まで、民族学はヨーロッパ以外の国の社会の研究に、社会学は工業化社会の研究にと限定されていた。しかしこの「2分化」は今は通用しない。民族学者は現在、今日のヨーロッパ社会も研究の対象にし、「多様性」を保護する立場にある。異なる考え方、異なる信仰のあり方、異なる反応の仕方があることを意識化するよう促す。

他者への視点と他者からの視点を通して、今日の社会での多くの問題点を発見できる。

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