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住む人がこっそり明かす観光スポット その1 バーゼル

バーゼル名物、ファスナハト. basel.ch

もうすぐバーゼルで最大のお祭り、ファスナハト。この中世からの仮装行列を見にバーゼルを訪れる観光客は多い。地元の市民にこの街の魅力を語ってもらった。

バーゼルの見所は語りつくせない様子だったが、この街の見所や名物の煙突や城門について説明してくれた。

 落ち合う場所として指定されたのは、バーゼルのまさに中心地にあるレーヴェンツォルン・レストランだ。

生きた伝説

 「ちょうどここはダイアンの店と私の事務所の真ん中にあるんですよ」とマイケル・サンドマンさん(通称マイク)は、ドイツ語圏に住んで16年とはとても思えないほどアメリカ式にずばりと切り出した。「レーヴェンツォルンはバーゼルで象徴的な場所なんですよ」

 ダイアン・ディックスさんもうなずく。「ファスナハトに参加するグループは、ここに集まるんです」。彼女はスイスの英語コミュニテイでは、ちょっとした伝説的人物だ。1960年代にスイスに移り住んでから、アルプスの国々の生活を英語で紹介する本を出版し(ベルグリ本、Bergli Books)、同名の本屋を開いたのだ。

 マイクさんは1989年から家族と共にこの街に腰を落ち着けている。当初は大手薬品会社のチバガイギに12カ月の契約で働いていたのだが、バーゼル保険に国際業務担当として移り、1999年に自分でコンサルティング会社を開いた。

 彼らの出身はアメリカだが、雰囲気から何から、彼らをバーゼルの地元民と区別することは難しい。彼らはここを「故郷」と呼ぶ。

お勧め観光ルート

 「バーゼルは他の街とは全く違うのです」とマイクが始めた。「ここの産業は非常に発達していますが、同時に研究分野でも最先端をいっています。つまり、人々は知的で文化的な空気を備えているのです」

 「ここで働く人々は頭が良く、洗練されています。この雰囲気は美術館にも反映されていますよ。これはもう、信じられないくらいです。私のお気に入りはアンティーク美術館ですね。家具にはあまり興味ありませんが、ローマ時代やエトルリア時代をお好きな方ならたまらないところです」。マイクさんは私が理解できないことを少々心配しながら強調した。

 ダイアンさんがバーゼルで特に好きなのはバイエラー美術館だ。これに人形博物館とバーゼルが世界に誇る高品質の薬品が続く。「まあ、バーゼルとしては驚く選択ではありませんが」と付け加えた。

 彼女が観光客に薦めるのは、このレストランから出発して旧市街の小道を歩き、郊外のバイエラー美術館に行くルートだ。その後はライン川の岸辺に沿って散歩し、動く芸術作品で有名なティンガリー美術館(スイスではタンガリーと発音する)や劇場、動物園などに行くのも楽しい。

 おっとっと、記者が口をはさまなければダイアンさんの話は永遠に止まらなさそうだ。すいません、観光客は、市内観光には数時間しか取れない人がほとんどだと思うのですが・・・・。

 すると今度は私の番とばかりマイクさんが話を継いだ。「ダイアンさんのルートは確かにぜひ経験していただきたいお勧めルートです。けれども私だったら、ライン川にかかる橋の真ん中から出発しますね。バーゼルは煙突で有名ですからね、それを上流に下流に眺めながら川沿いを歩くのもオツなものですよ」

 「でももうあまり煙突なんてないじゃないですか」とダイアンさんは抗議する。彼女によると企業が環境問題に配慮するようになってから煙突はかなり減ったそうだ。

ひょいとフランス、ひょいとドイツ

 ダイアンさんは続ける。「暑い夏の日なら、川にどぼんと飛び込むほど、爽快なことはありません。何千人もの人々が同じことをしています。プールよりよっぽど水はきれいですよ」

 マイクさんは「ひょいと自転車にまたがってフランスに足を伸ばしたり、ドイツにでかけてゴルフをするのも面白いですね」。何しろ、バーゼルはスイス、ドイツ、フランスの国境の交差点に位置しているのだ。

 この街が生み出した19世紀を代表する哲学者、ニーチェのことも忘れてはならない。彼はここで勉強し、教授として生徒を教えていた。ダイアンさんは言う。「私はミュンスター広場にある家の前に立たずんで、ニーチェがここで過ごした日々を想像してみることがあります。そこで、ニーチェは良くピアノ・コンサートを開いたそうですよ」

 14世紀にバーゼルに張り巡らされた街の城壁は19世紀に取り壊されたが、美しいシュパレン城門だけは残された。マイクさんは語る。「私の事務所からすぐ近くなので、毎日眺めていますよ。中世の時代、ここで数多くの兵士たちが戦ったことでしょう。今で言ったら、コンピュータ・ウイルスから身を守るファイヤーウォールのようなものですね」

 「シュパレンといえば」ダイアンさんは笑う。「私の時代には、女性は寒い時には膝まで来る下着をつけていたものですが、なぜだか、これは同じつづりでシュパレン城門・パンツ(Sparentor Pants)と言ったのですよ」。寒さも撃退か。

 マイクさんとダイアンさんのバーゼル紹介は全く趣を異にする。バーゼルがいかに訪れる人々によって違う顔を見せるかを象徴する証といえよう。

swissinfo、 デイル・ベヒテル 遊佐弘美(ゆさひろみ)意訳

取材場所となったレーヴェンツォルン・レストランはファスナハトに繰り出すグループが集合する場所となっている。

バーゼルは薬品、チューリヒは金融、ジュネーブは国際外交都市として有名。

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