日本語レッスン・ワン
英語の授業を小学校から始める自治体もあるスイス。母国語のほかに2、3カ国語を操る人も珍しくない。スイス人は語学の達人だ。
スイス人が話す言語は、英語、ドイツ語、フランス語などインド・ヨーロッパ語がやはり多いが、エキゾチックな外国語を学びたいと思う人も多い。
日本語を学ぶ人口数は把握できないが、国際交流基金が運営する2006年の日本語能力試験にはスイスから、1級から4級に230人が受験し、そのうち228人が合格した。
アニメがきっかけ
多言語文化を持つスイスは語学取得で、それが大きなメリットになるようだ。語学専門学校の「旅行高等学校 ( Reisehochschule ) 」で教えるメルキ能子 ( よしこ ) さんは
「スイス人は語学のセンスがあります。ほかの言語を学んでから日本語を学ぼうとする人が多く、コツを覚えているのか、文法も教えやすいですね」
とスイス人の語学能力を評価する。
仕事で日本と関係があるため、日本人の剣術の先生のことばを日本語で理解したい、パートナーが日本人、日本人の友だちが多くいるのでといったきっかけでスイス人は「難しい日本語」を学ぼうと思うようだ。中でも、日本のアニメや漫画がきっかけになっている人は多いと、ミグロ・クルブシューレ( Migros Klubschule ) で日本語を教えるレーダーあつ子さんは、最近の傾向を認める。
ここで学ぶウルス・グロブさん ( 29歳 ) も、日本語教室で彼の席の隣に座るマガリ・ブルクハルトさん ( 17歳 ) も、きっかけはアニメだった。
「きっかけはいろいろです。日本語がうまくなるためには、やる気が大切です。また、日本語を面白いと思うことですね。ちょっと難しくなったら大変と思うようでは続きません」
とレーダー・さんは言う。
語学に王道なし
チューリヒ市内のトラムで、電子辞書のようなものをおもむろに広げると、付属のペンでディスプレーに「山の裾野」と書き始めたスイス人の男性を見かけた。漢字検定5級を目指しているという、チューリヒ州大学日本科の学生、クリスティアン・イェンチさん ( 28歳 ) だった。
イェンチさんが学ぶチューリヒ州立大学日本科では、本科で学ぶ前に学生は、読み書きを中心に週15時間の日本語の授業を受ける。彼はすでに高校生時代に2年間、日本語を独学で学んだ。この間に単語を2000個から3000個覚え、漢字も500個は読めるようになったという。
「大学での授業はとても大変です。難しい漢字を覚えなければなりません。漢字を知らないと単語数も増えません。でも、頑張りましたから」
とよどみない日本語でにっこり。日本語能力試験の1級の実力だ。日本学科の常任講師、ハフナー町子さんも
「大学では、書くことや読むことを重視します。たゆみない努力。全力を投入しなければだめです」
とスイス人にとっても、語学取得は丸暗記や毎日のドリルが必要だと語る。
イェンチさんは、会話は1年間の日本留学で上手になったという。
「ともかく留学してください」
とイェンチさんからの外国語を取得したいと思う日本人へのメッセージだ。
留学は難しい日本人に対して、旅行高等学校で日本語を学ぶリリアン・シュトライトさん ( 22歳 ) とウルスラ・レンディさん ( 47歳 ) は
「恥ずかしがらずに人と話すことです」
と口をそろえて言う。外国語を取得するには、語学の達人であるスイス人にとっても、王道はないということらしい。
swissinfo、 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )
JTI基準に準拠
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。