スイスの視点を10言語で

スイス、3段階でロックダウン解除 まずは生活密着サービス

Man and barrier
スイスでは3月16日からロックダウン(都市封鎖)が続いていたが、4月27日以降3段階で正常化する計画が発表された Keystone / Gian Ehrenzeller

スイス連邦政府は16日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を防ぐための行動制限を解除する出口戦略を発表した。4月27日、5月11日、6月8日の3段階で制限を緩めていくが、流行状況によっては遅れる可能性もある。通常通りスイス観光を楽しめるようになるのは、夏以降になりそうだ。

政府はロックダウン(都市封鎖)を3段階で解除外部リンクする。まず4月27日に美容院やガーデンセンターなどが営業を再開。5月11日から義務教育の学校や一般の商業店も始まる。そして6月8日に高等教育機関や美術館など公共施設が再開する。ただしCOVID-19が再流行しないことが条件だ。

シモネッタ・ソマルーガ連邦大統領は16日の記者会見で、制限解除の道筋を示したことで「企業は社会的距離や衛生のルールを整え、営業再開への準備をする猶予がある」と語った。

おすすめの記事
ワクチン

おすすめの記事

スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし

このコンテンツが公開されたのは、 スイスは4月1日、新型コロナウイルス感染症に対する全国的な感染対策を全て撤廃した。秋冬の感染再拡大が懸念される中、スイス公衆衛生当局はマスク義務の再開は必要ないとしている。

もっと読む スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし

入国できる?

3月25日以来、スイス国民やスイスの滞在許可保持者、職業上の理由など一部の例外を除き、外国(リヒテンシュタインを除く)からの入国が禁止されている(最長6カ月間)。ソマルーガ氏は16日、国境管理については「司法・警察省と財務省に対し、(国境封鎖をいつ解くか)検討するよう指示した。隣国など他国の対応を踏まえなければならない」と説明した。

EU(欧州連合)は域内への移動制限を5月15日まで延長することを検討している。スイスはEU非加盟だが、欧州内の移動の自由を定めたシェンゲン協定に加盟しており、足並みを揃えるとみられる。

スイス入国時に国際空港で体温検査はなく、PCR検査は義務付けられていない。入国後の移動制限はないが、症状が出た場合は最低10日間自主隔離しなければならない。

日本の外務省外部リンクも3月25日、世界全国・地域への不要不急の渡航を中止する勧告を出している。厚生労働省外部リンクによると、スイスに滞在経験のある入国者は全員PCR検査を受け、結果が出るまでは自宅待機が求められる。

スイス・インターナショナルエアラインズは16日、運航を最小限に減らしている現行措置を5月17日まで延長すると発表外部リンクした。長距離便はニューヨーク、間のみで、成田・チューリヒ間、3月初めに就航外部リンクした関西・チューリヒ間は運休が続く。

乗り継ぎ便はロンドンまたはフランクフルト経由を日本航空(JAL)や全日空(ANA)が便数を減らして運航している。

国内の移動は?

スイス連邦鉄道(SBB/CFF)は3月19日から全国で本数を減らして運航している。連邦政府の出口戦略と足並みを揃え、4月27日と5月11日に段階的に正常化していくと発表外部リンクした。トラム・バスなどの地域交通もダイヤを削減。登山鉄道は全て運休中だ。タクシー業者は通常通り運営している。

ソマルーガ氏は16日の会見で、まずは通勤・通学に必要な最小限の公共交通の再開に注力する意向を示した。登山鉄道や湖上船など観光交通は、第2弾以降の解除の是非と合わせて検討を続ける。「夏になっても移動方法が制限されていれば、政府に対処を求める声が大きくなることは認識している」として、観光シーズン前の再開を目指すことをにおわせた。

食事・宿泊は?

レストランやバーは3月16日以来閉鎖されている。禁止措置は4月26日までだが、その後どう再開していくか、政府は16日の会見で道筋を示さなかった。

「2メートルの距離を開けて友人とビールを飲んでも楽しくないし、マスクを着けて食べるのは難しい」(ソマルーガ氏)。店舗の規模や構造などにより、衛生ルールを守る方法も異なるため、一斉解禁ではなく段階的に再開させる可能性を示した。ただ具体的な判断時期は言及しなかった。

スーパーなど食料品店、テイクアウトやデリバリーはロックダウン中も営業が許されている。

ホテルはロックダウンの対象外だ。ただ併設のレストランは休業している。

施設や店舗、イベント、アクティビティは?

正常化第1弾の4月27日に解禁されるのは美容院やマッサージ店、タトゥー・コスメティックスタジオ、生花店、工務店、園芸店など。住民が日常的に利用する生活密着サービスで、社会的距離・衛生ルールを保てることが条件だ。歯科診療の制限も解かれ、病院で緊急でない手術もできるようになる。スーパーでは生活必需品以外の棚は封鎖されていたが、これも解除。葬儀は参列者が身近な家族に限定されていたが、制限がなくなる。

第2弾の5月11日にデパートなど一般店舗が再開し、ショッピングを楽しめるようになる見込みだ。美術館や博物館、動物園など文化施設の再開は第3弾の6月8日を予定。スイス観光の要であるアルプスの展望台は、登山鉄道の運行次第となりそうだ。

ただ第2弾以降の解除を実施するかどうか、連邦内閣は4月29日の閣議で改めて検討する。アラン・ベルセ内務相は16日、「できる限り迅速に、必要な限りゆっくり進めたい」と強調した。特に新たな感染者数や入院・死亡者数、入院率が判断基準になると説明した。

また音楽祭やスポーツ大会、政治集会などの大規模イベントの禁止についても29日に方針を示す。ベルセ氏は16日の会見で、イベントの開催は「最後に解禁するカテゴリーに属する」と述べた。

6月末にバーゼルで開催予定だった第31回ヨーデル・フェスティバルは17日、21年6月25~27日に延期すると発表外部リンクした。3年に1度の開催だが、主要参加者やスポンサーとの調整がつき1年の延期になった。

スイス最大の野外フェス・パレオフェスティバルの主催者は16日、7月20~26日に予定されていた第45回の開催を中止すると発表外部リンク。1976年からの歴史で中止は初めて。2021年7月19~25日にセリーヌ・ディオンなど今年予定されていたプログラムと同じ内容で開催し、購入済みのチケットはそのまま使える。

7月3~18日のモントルー・ジャズフェスティバルも45年の歴史で初めて中止外部リンクが決まった。

坂本龍一氏外部リンクが登壇を予定する8月5~15日のロカルノ映画祭は、今のところ開催予定外部リンク。同映画祭のマルコ・ソラーリ会長は先月10日COVID-19に感染し入院していたが、今月12日に退院した。

サイクリングやハイキングは禁止されていない。だが公共スペースで5人を超えて集まることは引き続き禁止だ。違反は100フランの罰金が科される。

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部