ナビゲーション

ナビゲーションへ

グローバルメニュー

日本企業もスイスにTOB 外国資本、スイスの伝統会社を狙う 

ザイア・バージェスの製品の一部。スイス社に魅力を感じた日本企業が触手を伸ばしている(写真ザイア・バージェス提供)

最近、スイスの会社が外国資本に買収されたり、買収のターゲットとなっている。以前もスイスの企業が次々と外国資本に買収される時期があったが、今回の連続して起こっている3件は敵対買収だ。

今回買収の対象となった3社とも、スイスでは伝統のある会社。すでに、重工業のユナクシス(旧エリコン・ビューレ)は、資本参加が50%以下にもかかわらず、オーストリアのホールディング会社ヴィクトリーに実質的経営を乗っ取られてしまった。残りの2社はいまだに抵抗を続けている。1件は日本の企業による買収だ。

 測量・計測のライカ・ジェオシステム(以下ライカ)はスウェーデンの同業者ヘクサゴンに買収のオファーを受けている。また、電子部品メーカーのザイア・バージェス(以下ザイア)は、日本のコイル大手スミダコーポレーションにTOB(株式公開買い付け)をかけられ、いずれも抵抗している。

伝統的スイスの企業が狙われる

 ユナクシスは重工機械メーカー、エリコン・ビューレとして1906年に創立。2000年に現在の社名に変えた。04年の売上高は18億5000万フラン(約1600億円)。01年、02年と赤字続きだったが03年に黒字に転じた。しかし、04年は再び3億7800万フラン(約320億円)の赤字を計上。従業員は6800人である。宇宙飛行技術のコントラーベス、小型飛行機のピラトゥスや高級革製品バリーなどを子会社として所有していたこともあるが、経営難にあり、多くの子会社を手放し続けていた。

 オーストリアのヴィクトリーは、いまから2カ月前に所有するユナクシスの資本を33 1/3%まで伸ばした。連邦銀行委員会は6月28日、ヴィクトリーはユナクシスの他の株主に対して、株の買い取りを申し出る必要はないと判断した。ヴィクトリーは現在のところ42%のユナクシスの株を所有しているが、今回の資本参加では、14億フラン(約1200億円)の出費となり、巨額の負債を抱えている。このため、今後、資本率を高める意向はないという。連邦銀行委員会の決定が、外国資本のスイス企業参入の手助けをした結果となった。

 銀行委員会の決断が出たその日に開催されたユナクシスの株主総会は、ヴィクトリーの思惑通りに運び、経営陣が一掃され、スイス人の役員は一人もいなくなった。

ライカは抵抗中

 ライカは1921年に創立した測量・計測機器のメーカーで、現在はGPS機能なども取り入れた最新技術を持つ。同分野では世界でも有数で日本を含め23カ国に子会社がある。05年(04年4月〜05年3月末まで)の売上は7億7300万フラン(約660億円)、税引き前の利益は7160万フラン(約60億円)、社の上場株式の時価総額はおよそ1億1000万フラン(約94億円)従業員は2400人だった。

 ユナクシスと同様スイスの伝統あるライカは6月2週目の週末、スウェーデンの同業者ヘクサゴンに買収の意向があると通達された。「提示された買収価格は1株440フラン(約3万7700円)だが、安すぎる。社の可能性を見ればせめて500フラン(約4万2850円)はする。株主の利益にはならない」という理由を挙げ、週明けにはヘクサゴンのオファーは受け入れられないと表明した。一方ヘクサゴンは買収のためには11億フラン(約943億円)以上は払わないと表明している。

 社長のハンス・ヘス氏は6月30日記者会見を行い、安すぎる買収価格のほか、両者に共通する度量衡学の技術分野はライカの売上の1割を占めるのみ。ヘクサゴンのコンピュータソフトは質が良いがライカとの互換性はない。合併しても業務内容の幅が広まるだけで、合併後の相乗効果もあまり期待できない」と今回の買収に対して反発した。ライカのスイス証券取引所での3日の終値は462フラン(約3万9593円)で、ヘクサゴンの買収提示価格を大きく上回っている。

日本もスイス企業の買収へ

 ザイア・バージェスも創立年は1920年と伝統ある、電子部品メーカである。04年の売上高は5億6840万フラン(約487億円)、純利益2630万フラン(約22億円)で、社の株式の時価総額は昨年末で4億1700万フラン(約357億円)。従業員は3700人。スミダはザイアに対し6月30日、同日の終値の2割り増しにあたる1株950フラン(約8万1416円)と好条件の買収価格を提示した。これを受けザイアのダニエル・ヒルシ社長は4日に記者会見を開き「ザイアが現行のまま存続するのが株主にとって一番有益である」とスミダのオファーを受けないよう呼びかけた。しかし、買収価格は株主にとって魅力的なため、売却を引き止めるのは困難が伴うと見られている。

 スミダの八幡滋行社長の買収行為はスイスのメディアには「英米流で、日本人らしくない経営人」(6月30日付けノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング)と形容されている。社長は3日、当地のドイツ語圏日曜新聞NZZゾンタークに応じ、買収について語った。このインタビュー記事によると、2年前から欧州における自動車部品メーカーで提携が可能な企業を物色していたという。さらに、ザイアの売上の7割は欧州で、日本やアジアはほとんどないことを指し、ザイアにとって、たとえばスミダが強い中国などに進出することは有利であるり、買収後はザイアの生産の一部は中国へ移行することも考えているとほのめかした。
 
 4日、王子製紙がイルフォード・イメージング・スイス(以下イルフォード)の買収を発表。イルフォードはスイスの写真用紙メーカーで、世界のシェアーは20%と、日本の三菱製紙(22%)に次いで第2位。およそ1世紀の伝統もあった。王子製紙はこの買収で写真印刷用紙で三菱製紙に並ぶ大手となることが魅力だった模様。買収価格は公開されていない。

 まだ、結末を見ないライカおよびザイアの買収だが、今後の帰趨が注目される。

swissinfo 佐藤夕美(さとうゆうみ)


リンク

×