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日・スイス関係 日本市場でスイスにかかる圧力

エメンタールチーズ

日・欧州連合(EU)間の経済連携協定(EPA)が発効すれば、エメンタールを始めとするスイス特産チーズの対日輸出は苦境に立たされる可能性がある

(Keystone)

日本と欧州連合(EU)の間で経済連携協定(EPA)が結ばれることで、スイスは競争力を失うのか――?

 スイスが日本とEPAを結んだ2009年当時、スイスは先駆者としての誉れを喜んでいた。日本とのEPAの発効は、欧州では最初の国となったからだ。EPAで市場競争力が大きく上がるとの期待に満ちていた。それから数年、この有利な立ち位置が失われる恐れが出てきた。農産品や加工品を中心に、日本市場においてスイス企業は差別と戦わなければならなくなりそうだ。

4番目に大きい輸出相手国

 日本市場におけるスイスの競争相手はEUだ。EU本部は昨年12月、日本との間でEPA締結に合意したと発表した。両国・地域の経済規模からすれば、世界最大の自由貿易圏を構築する内容で、EUは2019年中に発効できるとみている。スイス連邦経済省経済管轄局(SECO)は最近明らかにされた合意文書を基に、日・EU間EPAがスイス経済にもたらす影響を分析している最中だ。

 連邦政府は3月、全州議会(上院)のエリザベス・シュナイダー・シュナイター議員(キリスト教民主党)の質問趣意書に対する答弁書他のサイトへで危機感をあらわにした。同議員はスイス・日本議員連盟の代表で、対日本EPAの改定を求め、趣意書でスイスが予測できる将来、競争力のあるEU企業により日本市場から追いやられると案じた。この憂慮には根拠がある。欧州委員会の試算では、足元で年間10億ユーロ(約1280億円)にも及ぶ関税の大半が対日EPAにより撤廃されるというのだ。

 シュナイダー・シュナイター議員の質問趣意書を機に、連邦政府は本腰を入れた。政府は日本に対し、EPAを改定したい意思をちらつかせ、2016年10月を最後に開催されていない二国間の合同委員会の再開を求めた。前回はモノの貿易に関する協定の見直し、通関手続きの簡素化や持続的な発展などが提案された。だが日本政府は今の協定内容に満足しているとして、全く関心を見せなかった。

 スイスは大きな危険にさらされることになった。日本はEU、米国、中国に次いで4番目に大きい輸出相手国だ。急速に高齢化が進む日本は、スイス医薬品の一大需要地となっている。日本への医薬品輸出額は過去10年で2倍以上に膨らみ、対日輸出の4割を占める。次いで多いのが時計。日本は貿易黒字国だが、スイスとの時計貿易に関しては赤字国。17年の赤字額は39億フランだった。「ニッポン」への輸出総額は前年比0.7%増の73億フラン。EPA発効直後には11%増を記録したのに比べると冴えない結果だ。

 過去数年、スイス側が協定内容に満足していないのは公然の秘密だった。協定から期待されていたほどの効果が得られていないのだ。こうした状況を変えるため、ヨハン・シュナイダー・アマン大統領(当時)は2014年、経済界の代表団を率いて日本を訪れた。だが訪日による大きな変化はなかった。日・EU間EPAの発効で、スイスが農業分野で大きく遅れをとると恐れているのにも不思議はない。現行のEPAは、農業分野で特筆すべき自由化はされていない。日本が清酒の関税即時撤廃を勝ち取り、スイス側は乾燥肉やスイス特産のナチュラルチーズ、ワイン、チョコレートの関税で優先的地位を得た程度だ。

 両国とも、譲歩による痛みはなかった。協定交渉が敵対的にならなかったことには理由がある。日本もスイスも、世界貿易機関(WTO)が「G10他のサイトへ」と呼ぶ農産物の純輸入国に属し、互いに自国農業の保護を揺さぶらない方針に早々と合意したためだ。加えて交渉は完全に二国間で進められ、欧州自由貿易連合(EFTA)の枠組みとは別だった。EFTAにはスイスやリヒテンシュタインのほかノルウェーやアイスランドも加盟しており、そこでの交渉は微妙な漁業政策上の問題を引き起こしかねなかった。日本はEFTAとの交渉には関心がなかった。

麻痺している農業

 だが日本はそれから動いた。日本政府は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉において、農業分野で10年前には考えられなかったような譲歩を決めた。それだけではなく、日本はEUに対しても農産品市場を一部開放する姿勢を見せた。ワインに関しては関税が完全に撤廃され、ゴーダチーズなどへの高い関税も段階的に撤廃されることが決まった。他の種類のチーズや乳製品も、少なくとも無税か関税割当になる予定で、スイスの同業者に痛みをもたらしかねない。一方、日本の自動車メーカーはEU市場により参入しやすくなった。

 日本が農産品市場をいくぶん開放した一方で、スイスの農業分野に同様の姿勢は全く見られない。EPAの締結や改定のためには、この頑なさが大きな障害になっている。メルコスール(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイで構成される南米南部共同市場)・EU間のEPA締結が間近に迫る南米に関しても同じことが言える。経済業界団体エコノミースイスが最近指摘したように、同EPAによってもスイスは大きな差別を受ける可能性を秘めている。


(独語からの翻訳・ムートゥ朋子)


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