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本物のナルトみたいに、スイスでコスプレ

第6回ポリマンガのポスターになったジェシカ・ユングさんの作品 Jessica Jung / Polymanga

日本のマンガやアニメのファンが一堂に集まり、総合的なマンガ体験ができるイベント「ポリマンガ 」がローザンヌで開催される。

マンガ家との交流、コスプレのコンクール、アニメ鑑賞、ビデオゲーム、囲碁などの日本文化体験、もちろんマンガ本も購入できる。今年6年目を迎える「ポリマンガ ( Polymanga) 」は1人の青年の情熱から生まれた。

文化の融和

 「マンガやアニメ作品の販売が主流を占めるパリのジャパンエクスポのようにはしたくなかった。あくまでマンガやアニメのファンが参加し、自分で直接体験できるようなイベントにしたかった」
 とポリマンガの主催者ダビッド・アイム氏 ( 26歳 ) は話す。幼いときから日本マンガの大ファン。17歳でアニメの評論を書き始め、マネージメントの資格を取得後パリで日本アニメを配信する会社で研修。その後、マンガへの情熱を形にしたいとこのイベントを始めた。

 初年の2005年の開催ではわずか6000人だった訪問者が今年は4月3日から5日の3日間で約1万7000人を期待している。9割がスイス人、1割が隣国フランスからやってくるファンたちだ。

 8000平方メートルの展示会場は3割だけを販売スペースに当て、残りは日本から招待した有名なマンガ作家の講演 ( 今年の招待作家は松江名俊氏 ) やワークショップ、アマチュアを中心にした「ハイレベルのマンガ作家」30人による作品展示など、マンガ好きはペンと紙を持参したくなる企画で埋まっている。

 30人の招待作家には、すでにマンガを出版しているプロも数人含まれるが、ほとんどがこれからの出版を夢見る人たちだ。実際ポリマンガへの参加を契機に出版にこぎつけた例が過去幾つもあった。彼らは、美術学校でマンガを講義するアイム氏が、教え子や仕事のネットワークの中から見つけ出した才能ある作家たちだ。
 
「みんな、非常にレベルが高い。スタイルは日本のマンガ風なのだが、どこかヨーロッパ的なものが混ざり合った独特な作風。ただストーリーは、例えば日本の『カワイイ文化』的なものはあまりなく、あくまでヨーロッパ的なものが中心だ」
 とアイム氏。

 日本文化は現在ヨーロッパに深く浸透している。アイム氏はパリの日本レストランで普通の焼き鳥の横にチーズと牛肉の串刺しが並べられているのを見た。こうした2つの食文化が自然に融和しているのと同様
 「マンガでも日本のスタイルを深く取り込んだ上でヨーロッパ的なものとミックスさせているのではないか」
 と考える。

強烈なコスプレ

 一方、コスプレも参加型の大イベントだ。グループか個人で参加し、自慢の衣装でマンガのキャラクターになりきり、ステージの上で1人1、2分間のパーフォーマンスを行う。合計150人が参加する。
 「コスプレのレベルは色々だ。二つの流れがあり、ゲルマン系は凝りに凝った衣装で登場するが、何もしないでスッと舞台を通り過ぎる。一方地中海系は、衣装はたいしたことはないが、舞台での踊りや表現が凄い」
 とアイム氏は微笑む。

 いずれにせよ、コスプレは彼らにとってカーニバルに参加するような楽しいひと時だ。また準備でも、規定で自作の衣装しか持ち込めないため、数人が一緒にミシンを囲んでワイワイ言いながら衣装を作る時間を共有する。そのことが大切だという。

マンガファンの喜びがモチベーション

 ところで、スイスはもちろんのことヨーロッパ中で日本のマンガが広まったのは、70年代後半から90年代後半にかけフランスのプロダクションが日本のアニメを紹介し、一日に4時間もテレビ放映を続けたからだ。この影響でその後マンガ本が流行した。今ではマンガの本は日本風に右開きでないと納得しないファンが増えている程だ。

 また一方で
「日本のマンガも飛躍的に進歩した。昔、ディズニーの凄さには勝てないと多くの日本の作家が言っていたが、今では反対にディズニーがスタジオジブリと密接な契約を結びたがっている」
 とアイム氏は解説する。

 マンガのヨーロッパでの歴史といったうんちくを尻目に、今のティーンエイジャーは日常の中で自然に日本のマンガを享受している。そうしてポリマンガが開催されるのを毎年心待ちにしている。

 しかしこのイベントは採算が取れず、アイム氏は今後も兼業を続けなくてはならない。だが、会場に訪れるマンガファンの喜びに溢れた顔を見ると来年もやろうと勇気が沸く。結局こうした姿やマンガファンとの交流がアイム氏にとっての、ポリマンガを続けて行くモチベーションなのだという

里信邦子( さとのぶ くにこ) 、swissinfo.ch

今年6回目を迎える、マンガやアニメを総合的に体験するイベント。
4月3日から5日にかけ、ローザンヌのボーリュウ ( Beaulieu ) で行われる。
毎年訪問者数は増え続け、今年は3日間で1万6000~1万7000人の訪問者を予定している。訪問者の9割がスイス人、残り1割が隣国のフランスから。
アトリエでのマンガ制作、コスプレのコンクール、アニメ鑑賞、ビデオゲームなど訪問者が参加し体験する場に当てられている。そのほか、マンガ関連ショップもある。
今年の日本からの招待マンガ作家は松江名俊 ( しゅん)氏。ほかにアマチュアでハイレベルのスイス人、フランス人の作家30人が招待されている。
コスプレではおよそ150人がマンガのキャラクターになり、自慢の自作衣装を披露する。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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