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世界で一番高価なスイスの高級品5選

Patek Philippe s Grandmaster Chime
パテック・フィリップのグランドマスター・チャイムは文字盤がリバーシブルになっている Christie's

1枚640フラン(約7万円)の板チョコは、文明の終わりなのか、はたまた健全な市場経済の象徴なのか。いずれにしても、スイスは高額に関していくつかの世界タイトルを保持している。

「3100万ドル(約34億円)でハンマーが降り下ろされた瞬間、聴衆は一斉に立ち上がり、熱烈な歓声と拍手が上がった」。ジュネーブで9日に開かれたオークションでパテック・フィリップの腕時計が世界最高額で落札された瞬間を、英フィナンシャル・タイムズ紙外部リンクはこう描いた。

落札された「グランドマスター・チャイム」はパテック・フィリップ外部リンクが2014年に創業175周年を記念して発売した限定シリーズで、第1弾は約250万フランだった。8日落札されたモデルは唯一のスチール製。表裏両面に文字盤があり、20個の特殊機能と5個のチャイムモードを備えている。

腕時計はデュシェンヌ型筋ジストロフィーの研究資金を集めるチャリティーオークションのために作られた。

ジュネーブのオークションハウスは、ダイヤモンドやワインなどでも世界最高落札額を叩き出している。

バレンタインの贈り物には高すぎる?チューリヒのチョコレート菓子製造店Attimo外部リンクが発売した「ラ・チュオルサ」は80グラムで640フラン。キロ当たり8千フランで、先月31日にはギネスブック外部リンクで世界最高額のチョコレートと認定された。

A bar of La Chuorsa chocolate
世界最高額の板チョコ「ラ・チュオルサ」 Attimo

使われているはスイス南部のムント産サフランのほか、ベネズエラ・チュアオ産カカオ含有量68%で、いずれも希少な原材料。特にカカオに関して、Attimoは「世界中の名ショコラティエが19年前から発注しなければ入手できない」ほどの高品質だと太鼓判を押す。

米食品医薬品局(FDA)は今年5月、スイス製薬大手ノバルティスが開発した脊髄性筋萎縮症(SMA)遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」を承認した。その薬価は210万ドルと、医薬品として史上最高額。この価格は正当化できるのか?

ノバルティスのヴァス・ナラシンハン最高経営責任者(CEO)は、ゾルゲンスマはたった一瓶で不治の病とされていた遺伝病を治す希望の光だと主張する。これまでSMAの治療は1年に4度、一生続けていかなければならない。最初の年に75万ドル、その後も毎年35万ドルかかるため、10年で治療費は400万ドルにのぼる。

薬価がどう決まったのか、どんな仕組みで効果を発揮するのか、遺伝子操作に倫理的な問題はないのか――批判や疑問は尽きないが、誰がこの薬を買うのかについてはあまり触れられずにいる。

2017年の食肉価格指数によれば、スイスの食肉は世界で最も高い。世界平均の2.42倍で、第2位のノルウェー(1.64倍)をはるかにしのぐ。特に割高なのは鶏肉だ。

高さの理由は生産コスト。人件費、燃料、肥料、獣医、建築費、保険、飼料…最低水準の動物の福祉を守るのも容易ではない。

価格は消費者の購入意欲にも左右される。2016年の調査で、スイス人は国内産なら輸入品の最大1.27倍高い牛・豚・鶏肉でも買うとの心意気を見せた。

エコノミスト・インテリジェンス・ユニットが3月に公表した「世界で最も生活費が高い都市」ランキングで、チューリヒとジュネーブがそれぞれ4位と5位にランクイン。娯楽・エンターテイメントでは1、2位を占めた。

調査を担当したロクサナ・スラブシェナ氏は「これらの都市、あるいは市民が任意の支出(非生活必需品への支出)にお金を多く充てるからではないか」と解説した。

娯楽・エンターテイメントに含まれるのはテレビ・パソコン価格、新聞・雑誌の購読料、映画館・劇場の入場料、外食費など。


(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)

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