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研究と産業のチームワーク コンピューター、空気の代わりに水で省エネ

, チューリヒにて
(Reuters)

ヨーロッパ最速の水冷式スーパーコンピューターは、空冷式に比べてエネルギー消費を4割削減できる。この画期的な水冷却システムは、連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ/EPFZ)とIBM社の共同研究により開発された。

 飛行機や車を使うのは環境に悪い 。コンピューターを使っておしゃべり、情報交換、ビデオ会議をすればエネルギーを節約でき、環境保護につながる。この意見は巷に広まっているが、実は間違いである。

 正式に公表されている数字はないが、世界中のコンピューターと全航空交通機関が排出する二酸化炭素(CO2)はほぼ同量と推測される。省エネルギーで高性能のコンピューターを開発することは、電力費用を節約するためにも重要な問題だ。

 巨大な高性能データセンターである、スーパーコンピューターの製造や稼働にかかる費用を見てみると、製造費とエネルギー費はほぼ同額だ。製造費におよそ1億フラン(約84億円)かかるとなると、エネルギーに費やす金額も相当なものになる。多くのセンターでは空冷却が利用されているが、それだけで電気代全体の半額に達するほどだ。

 「コンピューターは電気エネルギーを100%熱に変えるが、空冷式はこの熱を利用せずに、ただコンピューターの外部に放出する。 また、通常、空冷はあらかじめ冷やした空気を使う。更に、排出熱を取り除くために使う通風機にもエネルギーを必要とする」と連邦工科大学チューリヒ校の新テクノロジー熱力学研究室長、ディモス・ポウリカコス氏は言う。

敏感なインターフェイス、熱交換器

ポウリカコス氏の後ろには、2010年から稼働中の試作巨大コンピューター、「アクアサール(Aquasar)」が置かれている。製造したのは、コンピューターメーカーのIBM。連邦工科大学チューリヒ校は冷却システムを開発した。冷却した空気の代わりに、コンピューターの中を循環して冷やすのは水だ。その際に温められた水は、校舎の暖房や温水に活用される。

 「水を循環させて使う水冷式は万能だ。ここでは暖房に再利用しているが、熱帯の国では海水の除塩などプロセス工業に利用できる。空気の冷却や排除の必要がない水冷式を使えば、エネルギー費用を半分に削減できる。その上、熱も失うことなく利用できるのだ」

 こう聞けば簡単そうだが、水冷式の実用は難題だった。なぜなら空気と違い、水には通電性があるからだ。「そのため特別な熱交換機を開発し、通電していないチップの下部に貼付けることにした。試作モデルのアクアサールは数年前から何の問題もなく稼働している」

外科医のように緻密な作業

 だが、連邦工科大学チューリヒ校の研究者はこれで満足しているわけではない。「もっとチップに近い場所で熱を除くことが理想。一番高い熱を放出するのはチップなので、外科医のような緻密さで少しずつそこに近づいていって熱を取り除かなければならない。連邦工科大学チューリヒ校が開発した最新技術は極小の水路を使い、よりチップの近くからさらに効率良く除熱することができる。この極小水路システムも正確に稼働しているようなので、産業生産に入るのも時間の問題だろう」

 一方、アクアサールに使用され、何年も試された水冷式システムは既に生産されている。「アクアサールは、科学と産業が連携して革新的な製品を生み出せるという良い一例だ」とポウリカコス氏は喜びを隠せない。

IBMはマーケットリーダー

 コンピューターメーカーのIBMはアクアサールに使用されている水冷式システムを数カ月前から本格的に投入。この夏、スーパーMUC(Super MUC)というヨーロッパ最速のスーパーコンピューターをミュンヘン近郊で稼働させた。

 この巨大コンピューターは驚くべき高機能だ。1秒間に最高3000兆回の演算が可能であり、研究と産業分野で利用される。

 IBMチューリヒ研究所センターのブルーノ・ミケル氏は、「この水冷式システムで、エネルギー費を4割削減できる。これは稼働中に必要な全費用の約2割にあたる。IBMは水冷式の先駆けで、極小水路システムのスーパーMUCの産業生産も始まるところだ。しかし、これからライバル会社も市場に参入してくるだろう」と言う。

2013年から2016年の科学研究費

向こう4年間、スイス政府が援助する科学研究費は260億フラン(約2兆1000億円)を上回る。

連邦議会は秋の会期で238億フランの融資を認めた。それに加え、20億フランが欧州連合(EU)科学研究プログラムに当てられる。

内閣閣僚はまもなく、エネルギー政策転換に伴う研究の特別支援を議会に要請する予定。

これにより、200万フランのエネルギー研究費が連邦工科大学関連の研究所(連邦工科大学チューリヒ校・ETHZ/EPFZ、およびローザンヌ校・ETHL/EPFL、連邦マテリアル科学技術センター・EMPA, パウル・シェラー研究所)に支払われる見込み。

その他、連邦工科大学関連の研究には向こう4年間の通常研究費として、国内最高額の95億フランが用意されている。

 

スイス連邦基金(SNF/FNS)には約37億フランの助成金が割り当てられる。この資金で、医学、精神科学、自然科学の各分野における自由な基礎研究活動を援助し、第一線での研究を維持するのが目的。

連邦基金は若手研究者の育成も援助している。

大学が国から受け取る資金は31億フラン。6億フランは研究開発機関のKTIが受け取る。

さらに約800万フランが数学、情報処理、自然科学、技術の特別助成金に当てられる。

インフォボックス終わり


(独語からの翻訳 アダム由紀), swissinfo.ch


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