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米軍攻撃で食糧援助ストップ、数百万人が餓死の危機

封鎖されたイラン国境からアフガニスタンに戻る難民ら。7日 Keystone

国連によると、アフガニスタンでは約600万人が完全にまたは一部を食糧援助に頼って生活している。米国の報復攻撃開始で食糧援助が不可能になった今、迫り来る冬の間に数百万人もの国民が餓死の危機に直面している。赤十字国際委員会によると、アフガン国内で都市から山岳地帯に逃れた人々には、地雷が待ち受けているという。

ルドルフ・ハーゲル・スイス開発協力局パキスタン事務所長は、「アフガニスタンの人道危機は避け難い。600万人から700万人が餓死する危険がある。」とswissinfoに語った。ハーゲル所長は7日夜の米英軍の攻撃開始後、食糧輸送ができなくなったとし、「4週間から6週間のうちに雪が降り始める。そうしたら遠隔地への食糧輸送はもう不可能になる。」という。ハーゲル所長は、米国の行った食糧投下を全く無意味だと批判した。そして「あれは単なる米国のプロパガンダだ。」と切り捨てた。

現地では今のところ、まだ難民がアフガニスタン各地から雪崩のように流出しているという状況ではない。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、約150万人が国外に脱出しようとしていると見ているが、正確な予測はできないとしている。クリス・ヤノウスキーUNHCR報道官は「人々は都市から脱出しようとしているはずだが、カブール、カンダハル、ジャララバードなどからパキスタン国境に達するまでに数日かかるため、まだ難民が国境地帯に殺到しているという状況ではない。」とswissinfoに語った。UNHCRは、アフガニスタンからの未確認情報として、大勢の難民がイラン国境に向かっていると伝えた。UNHCRでは難民流入に備え、パキスタンーアフガニスタン国境地域にテントと食料を配備しており、最大10万人までは多少の困難はあるものの食料と保護を供給できるとしている。が、これらの急造難民キャンプは遠隔地の少数民族準自治地区にあり、十分に機能できるとは思われない。ヤノウスキー報道官も「これらの地域への物資の運搬は悪夢だ。」と認めている。そして、「適切な設備の整った施設が圧倒的に不足している。もし大量の難民がパキスタンに流入してきたら、このままでは対処しきれないと思う。パキスタン政府は、是非これらの難民を国境から離れた地域でも受け入れてほしい。現時点では、問題の規模は予測と仮想の段階でしかない。」と、パキスタン政府に「忍耐と柔軟性」を持って、インフラと水道施設の整ったパキスタン中心部に難民キャンプを設けるよう要請している旨を明らかにした。

また、アフガン人スタッフ1000人が国内に残り活動を続けている赤十字国際委員会(ICRC)は、アフガン国内からの報告として、攻撃後カブールやカンダハルから多くの人々が村落部へ逃れているという。マカレナ・アギラー・スポークスマンは「ICRCスタッフの現地からの報告では、大規模な人の移動はない。」と述べた。ICRCの活動は、主要都市での医療援助にしぼられているが、食糧や医薬品を山岳地帯やアクセス不能な地域へ逃れた何万人もの人々にどうやって届けるかが問題だとしている。さらに、アギラーさんは「田舎へ逃げたら地雷も危ない」と、地雷による被害も心配している。

アフガニスタン国内では、世界食糧計画(WFP)が撤退して以来、食糧事情はさらに悪化している。ジュネーブのWFP本部は、国連は米英軍の第1撃の影響を調査中で、この間アフガニスタンへの食糧輸送およびアフガニスタン国内での食糧配給は停止するとしている。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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