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紅一点のレーサー

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スイスの女性ドライバーで、F1のセバスチャン・ブエミ選手のいとこ、ナターシャ・ガシュナン選手が5月28日、バレンシアで始まるFIA F2に参加する。

1984年以降中断されていたF2の復活版、「FIA F2 2009 ( フォーミュラ2 2009 ) 」の参加者24人の中で紅一点のガシュナン選手は21歳。2007年の「スターマツダ・チャンピオンシップ」でトップ10に食い込み、2008年の「F3スペイン大会」では3位を飾った経歴の持ち主だ。FIA F2での活躍が期待される。

swissinfo : モータースポーツを始めたのはいつですか。

ガシュナン : 5歳の時です。いとこのセバスチャン・ブエミと一緒に始めました。私の父がゴーカートをクリスマスに買ってくれ、セバスチャンの父も同じものをセバスチャンに贈り、2人でガレージの辺りをぐるぐる回って遊びました。

フランスのゴーカート乗場に行った頃から本格的にレーシング・ドライバーになることを考え始め、8歳で最初のチャンピオンシップに参加しました。

次いで、セバスチャンと一緒に「スイス・ミニカート・チャンピオンシップ」に参加し、その後フランス、イタリア、ヨーロッパチャンピオンシップと参加を重ねる度に、プロになることが現実のものになっていきました。

そしてついに15歳で、2人ともフォーミュラカーを始める決心をしたのです。

swissinfo : 新しく始まるF2 の復活版、2009年の「FIA F2 ・チャンピオンシップ」に参加されますが、目標は何でしょうか。

ガシュナン : 到達目標はトップ5に入ることです。しかしたくさんの優れたドライバーが参加します。24人の参加者のうち、3人がレッドブルのドライバーでトップの力量を持っています。GP2からの参加者やスペイン、イタリアのF3チャンピオンシップの優勝者もいます。

swissinfo : F2への参加がF1へのステップになると考えますか。

ガシュナン : よく分かりません。というのも、新しいF2がどういうものに成長して行くか本当に分からないからです。

このままF2としてとどまるか、格を上げてF1への道を開くような競技になるか未知数です。しかし、もしF2として定着するなら、私はF1に移る前にGP2に参加すると思います。

swissinfo :  F2はF3に比べ、ドライブの点からどういった違いがありますか。

ガシュナン : 今回のF2の車は、F3の車より数秒早く走ります。F3は250馬力ですが、F2は400馬力です。

今回のF2に参加することはとてもよい経験になると考えています。チームがないので、みんなが同じチャンスを与えられているし、全員が同じ車、同じエンジンで走るので、ベストのドライバーたちに挑戦するには、最高の条件が揃っていると思います。

swissinfo : 今回の新しいF2では、初めての女性ドライバーであり、紅一点でもありますが、そのことをどう思いますか。

ガシュナン : 女性であることを意識していません。ベストを尽くすことしか頭にありません。ただ、女性のドライバーも男性のトップドライバーたちと同じ土俵で戦えることを示したいとは思います。

この気持ちは変わりません。この世界では数人の女性ドライバーしかいません。もちろん人から尊敬されることは大切ですが、尊敬されるのは、早く走れるからであって、それ以外の ( 女性だからといった ) ものからくるのではないと思いますし、そう信じてがんばっています。

swissinfo : あなたをアメリカの女性ドライバー、ダニカ・パトリックと比較する人がいますが、そのことをどう思いますか?

ガシュナン : 私はセクシーシンボルではありません。もちろん私は男性が中心の競技世界にいる女性ですが、だからと言ってビキニ姿で車の上でポーズを取ったりすることはしたくありません。この世界に入れたのは、努力に努力を重ねてきた結果であって、ビキニ姿などを見せたお陰ではないからです。

ダニカ・パトリックは才能のある女性です。彼女が成功しているのは、彼女の才能のお陰なのに、多くの人が彼女のイメージのお陰だと考えていることはとても残念です。

swissinfo : モーターレースはスイスでは禁止されていますが、それはこの国でドライバーとしてのキャリアを続けていく上で問題になりますか。

ガシュナン : もし家族のサポートがなければ、ドライバーになっていないと思います。スイスでは、このスポーツに対しては何の支援もないからです。

危険で環境に優しくないスポーツと見なされていることは、確かにつらいものがあります。しかし、スイスではラリーは許可されています。10倍も危険な競技なのですが。

swissinfo : いとこのセバスチャン・ブエミ選手がF1で活躍されていることをどう感じますか。

ガシュナン : 今でも信じられないし、本当に驚くべきことです。しかし、セバスチャンはもちろんのこと、家族が一体となって投入したエネルギーと努力が実ったのだということです。スタートした日から何日も何日もトッラクの上で過ごし、身体トレーニングを欠かさず、多くの犠牲を払ってきました。彼がそこにいるのは、こうしたすべての努力の結果なのです。

しかし、F1に残るには戦い続けなければなりません。彼の背後には、多くのドライバーがその座を奪おうと狙っているからです。今の席は、とても軽い席に過ぎないのです。

いとこのセバスチャンは、優秀で本物のプロです。レースを行うときは、決してミスをしません。でも実は、以前私はセバスチャンを負かしたことがあるんですよ ( 笑い ) 。

聞き手 サイモン・ブラッドレー、swissinfo.ch
( 英語からの翻訳、里信邦子 ) 

スイスのヴェヴェイ ( Vevey ) に1987年10月27日生まれる。カートでの競技をスタートにモータースポーツ界に入り、2003年プロのドラーバーになる決心をする。
 
2005年、「フォーミュラ・BMWドイツ選手権」に参加。シリーズで6位になる。

2006年、「オーストラリア・F3大会」に参加し、第4位になる。また7つの「F3・ヨーロッパ大会」に参加。

2007年、アメリカ、カナダで年間13レースを競う「スターマツダ・チャンピオンシップ」に参加。ポートランド ( Portland ) で2位、クレーブランド ( Cleveland ) で3位の座を獲得し、最終的に全競技でトップ10に食い込んだ。

2008年、ヨーロッパに戻り、スペインの「F3大会」で3位を飾る。

ガシュナン氏がモータースポーツ界に入った背景には、家族的な環境がある。祖父は「ル・マン24時間レース」にも参加したレーシング・ドラーバー。いとこのセバスチャン・ブエミ選手はF1のレーシング・ドラーバー。

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