スイスの視点を10言語で

経営再建した「スイス」航空が再編成

イラク戦争やSARSで経営難のスイス・インターナショナル・エアラインズ。 Keystone

スイス・インターナショナル・エアラインズ(以下「スイス」)はバーゼル本社で記者会見を行い、欧州地域への路線を2003年11月から、子会社「スイス・エクスプレス」として分割することで、より安いサービスを提供し、20%の経費削減を実現できる予定だと発表した。

13ヶ月前に経営再建した「スイス」だが、イラク戦争や新型肺炎=SARSの影響を受けて経営難に直面しており、この分割案の他に10%の賃下げ(1億フラン=8億2千万円)を発表、高級管理職は即座に14%の給料カットを実行される。

「スイス」の経営状態

 2002年の「スイス」の営業損失は180万フラン(約1億6千万円)で、1月から5月までの損失を合わせると、250万から300万フラン(約2億2千万〜2億6千万円)に相当する。アンドレ・ドーゼ社長はこの対策により「来年から黒字になるだろう」と言い、「2002年末の流動資産は12億フラン(約1058億円)だったが現在まだ、8億フラン(約700億円)残っているのは業界では良い方の成績だ」との楽観的な見方をしている。

SARSの影響

 「スイス」は5日付けの国内主要新聞に広告で「スイスに関する事実」と題して、スイスの経営方針を説明しているが、経営不振の原因として「SARSの方がイラク戦争より更なる打撃を与えている。イラク戦争では貨物運送が増えたことによりどうにか持ち超えた。しかし、アジアは需要の減少が深刻でバンコク、シンガポール便は76%減、香港便は49%減、東京便は44%減、北京便は46%減まで落ちた」と説明する。また、この広告には国際航空運送協会(IATA)は今年の業界のロスを80億ドルとの見通しており、400万人の解雇を予想していると書いてある。なお、5日にIATAはSARSによる世界の航空会社の損失は100億ドルに達すると各国通信社などは伝えている。
 
分割反対

 この分割案に反対しているのは元クロスエアーパイロットの労働組合、スイスパイロット(Swiss Pilot)で「旧クロスエアをリストラして、旧スイス航空のパイロットの給料を出そうという考えはばかげている」と腹を立てており、抗議のストライキを行う予定だとスイス紙ルタンは伝えている。また、航空専門家は将来の「スイス・エクスプレス」が欧州で成功しているイージージェットやラインエアーなど激安航空会社と対抗するのは難しいという見方が多い。  

これまでの経過

 2001年11月に経営破綻したスイス航空は政府と民間企業の支援により、地域航空会社クロスエアと統合され、2002年4月からスイス・インターナショナル・エアラインズとして新しく生まれ変わった。スイス政府は「スイス」の発足にあたり、26億フラン(約2300億円)を出資しており、今後更なる経営難に陥ってもお金は出さない方針を明らかにしている。

合併案も?

 ルフトハンザとの合併が業界内で噂されていたが、4日付の「ノイエ・チュルヒャ・ツァイトゥング」のインタビューでアンドレ・ドーゼ社長は両社の合併について「将来的には排除できない考えだ」と語った。

スイス国際放送、A.Y.

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部