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経済都市バーゼルの力

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税制度と並び、鉄道網やバス網の充実度も企業が新しい拠点を決めるに当たり重要な要素となっている。大手銀行クレディ・スイスによるビジネスの魅力調査は、スイスではツーク州やチューリヒ州に並び、ビジネスの可能性を含む町としてバーゼルシュタット州の勢いが増してきたと評価している。

調査は5年に1度、スイスの26州を対象にして行われる。各地の企業立地の魅力を、法人税、個人税、教育レベル、労働者の質など多肢にわたる観点からチェックするものだ。

交通網の充実

 特に今回はビジネスのための移動のしやすさに注目し、交通の便に重点を置いて調査が行われ、初めてローカルバス網や路面電車網もチェックされた。過去5年の間で税が引き下げられたことと公共交通網の充実度が幸いし、バーゼルシュタット州は以前の調査より4位上昇し、ツーク州、チューリヒ州に次いで3位にのし上がった。

 短距離の公共交通網の充実度を考慮したため今回の調査では、多くの都市の点数が上がった。しかし、ベルン州は18位。経済都市としてではなく政府機関の中心地として評価されたとクレディ・スイス ( Credit Suisse ) のチーフエコノミスト、マルティン・ネフ氏は説明する。一方3位のバーゼルシュタット州は
「すべての経済関連拠点は路面電車に乗って30分以内で行ける範囲に集中している。これが、ベルン市から電車で同じ州内の都市に行こうとすると、バーゼルシュタット州のようなわけにはいかない」

 ほかの都市もその魅力を上げるために交通網の充実度を今後の調査の念頭に入れるという。トンネルやバイパスを多く作ると、大都市から遠距離にある都市へのアクセスがたやすくなり、都市の魅力が増す。こうしたことは税優遇措置より魅力のあることだとネフ氏は語る。

広い視野で評価

 もちろん税制も、その地域の企業誘致の条件として無視できない。クレディ・スイスの調査によると、過去2年間多くの州が企業誘致を目的に、法人税を引き下げることに躍起になっていると指摘する。中央スイスにある州の中でもランクを下げたニトヴァルデン、シュヴィーツの両州を横目に、2007年に税制改革をしたオプヴァルデン州は8位に上昇した。

しかし、急激な税の引き下げは景気の良かった時期に多用されたが、今の不景気には避けた方がよいとネフ氏は助言する。
「不景気にあっても、各州は企業誘致の努力を続けるべきであるというのが、私からのメッセージだ」

 クレディ・スイスの調査のみならず一般に、州別ランキングの調査はその州の一面しか捉えていない。例えば、個人の生活にとってより重要な要素となる不動産価格などは考慮されない場合が多い。クレディ・スイスは昨年11月に、住民が税、家賃や住宅ローン、そのほかの必要経費を差し引いた所得を比較した調査も発表している。この調査ではアッペンツェル・インナーローデン州が、スイスで最も住民に優しい州とランクされた。一方バーゼルシュタット州はワースト2に終わっている。

マシュー・アレン、swissinfo.ch
( 英語からの翻訳、佐藤夕美 )

クレディ・スイスの企業立地魅力州別ランキング
1. ツーク ( 前回のランク1 ) 
2. チューリヒ ( 2 ) 
3. バーゼルシュタット ( 7 ) 
4. ジュネーブ ( 4 ) 
5. ニトヴァルデン ( 3 )
6. アールガウ ( 6 ) 
7. シュヴィーツ ( 5 ) 
8. オプヴァルデン ( 13 ) 
9. シャフハウゼン ( 12 ) 
10. トゥールガウ ( 11 ) 
11. バーゼルラント ( 9 ) 
12. アッペンツェル・アウーサーロデン ( 8 ) 
13. ゾロトゥルン ( 15 ) 
14. ヴォー ( 14 ) 
15. アッペンツェル・インアナーローデン ( 10 ) 
16. ルツェルン ( 17 ) 
17. ザンクトガレン ( 18 ) 
18. ベルン ( 16 ) 
19. グラウビュンデン ( 22 )
20. フリブール/フリブルク ( 21 )
21. ティチーノ ( 19 )
22. グラールス ( 20 )  
23. ヴァレー/ヴァリス ( 24 ) 
24. ヌーシャテル ( 23 ) 
25. ウーリ ( 25 ) 
26. ジュラ ( 26 )

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