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著作権 スイスは違法ダウンロードのパラダイス?



スイスでは私的使用の目的で映画や音楽をダウンロードすることは合法とされる

スイスでは私的使用の目的で映画や音楽をダウンロードすることは合法とされる

(123RF)

著作物のダウンロードに関して、スイスの法律は他の多くの国と比べてかなり緩い。特にスイスはインターネット上での著作権侵害に関して特別な対策を取っていないため、米国の「ブラックリスト」に記載されるほどだ。そんなスイスがようやく法改正に向けて動き出した。

 スーパーでパンを買うにはレジでお金を払わなければならない。もしパン職人が夜通し働いた対価を得られなければ、別の仕事を探さなければならなくなるだろう。同じことは映画や音楽などの「無形物」を作る人たちにも言える。

 「新しい映画や作家が誕生するためには収入が必要。国の支援は不十分だ」と、オーディオビジュアル作品の著作権保護団体「スイスイメージ(Suissimage)」のディーター・マイヤー事務局長は語る。この団体は、著作物が複製される場合に著作者が補償金を受け取れるよう支援している。

違法ダウンロード対策は困難

 インターネット時代、行政にとって著作権保護が難しくなったことは世界各国に共通する。そして違法ダウンロードや、著作物をアップロードして配布するファイル共有サービスへの取り締まりも厳しさを増すようになった。

 その最たる例が、イタリアで最近行われた152のストリーミングサービスの「差し押さえ」だ。この例では、イタリアがスイスよりもネット上での著作権侵害に厳しい態度を取っていることが分かる。また、今年7月には世界最大級の米国のファイル共有サイト「KickassTorrents」が閉鎖された。このサイトの運営者と見られる人物に捜査が入ったため、ネット世界では動揺が走った。

 違法ダウンロードはその性質上、世界的現象となっており、この問題に関して各国は独自に対策を講じている。米国の取締りが特に厳しいことは偶然ではない。米国ではテレビ番組や映画作品の輸出が重要な地位を占め、その輸出額は年間約160億ドル(約1兆8411億円)に上るからだ。

 そんな米国は今年の4月、スイスを「ブラックリスト」に記載した。このリストには、違法ダウンロードに対し十分な措置を講じず著作権保護も不十分だと米国が判断した国がリストアップされている。

 スイスイメージのマイヤー氏は次のように説明する。「米国では映画産業やメディア産業がとりわけ重要だ。そのため、米国がスイスに圧力をかけてきたのはこれが初めてではない。米国は、著作物を無断でダウンロードする行為を違法と見なしたいのだ。しかし、スイスの連邦議会は2008年にこれを否決した」

弁護士であり、南スイス応用科学芸術大学でインターネット法の講師を務めるジャンニ・カッタネオ氏は次のように話す。「スイスではどのインターネットユーザーも、アップロードされた著作物が合法か否かに関わらず、それを私的使用の目的でダウンロードしたり使用したりできる(ソフトウェアを除く)。この権利は、親族や友人など、頻繁に交流する少人数の人たちの間でファイルを配布・複製する場合にも適用される」

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プライベートの保護

 「BitTorrent」など大半のファイル共有サービスでは、ファイルをダウンロードする際に自動的にアップロードもされるため、スイスではそうしたサービスの利用は違法とされる。しかし、スイスの最高裁判所である連邦裁判所は2010年、消費者のプライベート保護は著作権保護よりも重いとの判断を示した。

 南スイス応用科学芸術大学のジャンニ・カッタネオ氏(インターネット法)は、「行政がファイル共有サービスのユーザーを監視することは、個人データ保護に関する規定に抵触するため違法」と話す。

 警察が介入するのは、著作権者が告訴した場合のみだという。「そしてその著作権者にとって、誰が容疑者であるのかを判断するのは容易ではなく、著作権の侵害を(デジタルで)立証するのも難しい」(カッタネオ氏)

 スイス著作権侵害対策連盟(SAFE)によれば、こうした法的状況では著作権を侵害している人が刑事訴追を受けることは事実上なく、スイスにはこの現状に対する有効な手立てはないという。


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消費者を犯罪者にさせない

 しかし、ようやく問題への解決策が検討されることになった。シモネッタ・ソマルガ司法警察相はすでに2012年にAGUR12という作業部会を立ち上げ、今日のネット利用状況に著作権法を適応させるための案を検討させた。

 この作業部会にはスイスイメージのマイヤー氏も参加。同氏の望みは、違法ダウンロードをする人ではなく、そうしたダウンロードサービスの提供者に責任を取らせることだ。「我々は消費者の後をつけ回すようなことはしたくない。我々の狙いは、本当の被害を引き起こす張本人だ」

 同氏はさらにこう続ける。「こうした提供者は広告を載せたりユーザー情報を売ったりすることで金銭を得ている。我々はこのような提供者を排除したい。提供者がいなければダウンロードも行われないからだ」

 作業部会が作成を目指す法案では、コンテンツ提供者(サイトコンテンツの責任者)に対し、違法コンテンツの削除および転送禁止(いわゆるTake Down Stay Down)が命じられる。

スイス著作権侵害対策連盟(SAFE)は次のような見解を出している。「国が繁栄するためには、スイスは知的財産の保護を強化し、国際基準に適応しなければならない。文化および娯楽分野で競争力を保つことは、消費者、コミュニケーション部門のサービス業者、芸術家、芸術産業といったすべての人に利益がある。だが、それに必要な政治的プロセスは長期を要するかもしれない。また法を巡る争いが起きる可能性もあるが、この問題の関係者各人の責任の範囲が訴訟の中で明らかになるだろう」

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 一方で、インターネット接続サービスの提供者(プロバイダー)に対し、違法コンテンツを含む特定のサイトを強制的に閉鎖させることも、作業部会では検討されている。また、著作権を著しく侵害するすべてのユーザーの身元をプロバイダーが確認し、そうしたユーザーに民事訴訟で責任を取らせるという案も浮上している。この案では、訴訟になる前にユーザーには警告が2回出されることになっている。

 これらの案ではユーザーないし消費者が一方的に犯罪者扱いされることはないため、スイス政府も支持。しかし、プロバイダーの反応は冷ややかだ。なぜなら、プロバイダーにはユーザーに対し特定の行為に警告を出したり、特定のコンテンツが合法か否かをチェックしたりする義務が生じるからだ。

2018年まで現状維持

 作業部会AGURはまもなく協議を終了し、来年2月には結果を発表する。法案の内容は当然、その結果に左右される。連邦議会はおそらく2018年に法案について議論する予定だ。

 だが、法案が可決・成立したとしても、米国がそれに納得し、スイスをブラックリストから外すかどうかは未定だ。インターネット事情に詳しいカッタネオ氏は、違法ダウンロードに対する各国の取り組みは今後、スイスの手法に近いものになるだろうと考える。「個人ユーザーが非合法的なところからストリーミングやダウンロードをすることを、米国は違法と見なそうとしている。だが、それでは問題解決にならないだろう」(同氏)

映画や音楽のダウンロードは今後も合法であるべきでしょうか?ご意見をお寄せください。


(独語からの翻訳・鹿島田芙美)

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