スイスの視点を10言語で

観光客にセックスアピール

この冬、より多くの観光客を呼び込もうと「脱ぐ」観光業界 swiss-image

スイスの観光産業はウインターシーズンに向けて準備万端。新しいキャンペーンで主役を演じるのは上半身裸のスキーインストラクターだ。

しかし、スキー場の景気は今ひとつ。世界経済の好況や格安エアラインの人気でにぎやかさが増す都市部に比べると、山間部の予測成長率はずっと低い。

 バーゼルの経済研究所「BAKバーゼルエコノミックス」は、この冬を通してスイスのホテルの宿泊数は3.1%の伸びを見せると予測している。この予測が当たれば、これまでで初めて年間1600万泊を突破する。今年の夏は天気が不安定だったにもかかわらず、宿泊数は3.8%上昇した。この冬の展望は明るい。

人気の都市部

 しかし、この数字にはチューリヒ、ジュネーブ、バーゼルを含む都市部の6.2%という成長率が大きく影響しており、天候がものをいう山間部では2.1%増にとどまっている。

 これまでにないほど大勢の観光客がスイスを訪れている主な理由として、BAKは好況の世界経済とユーロ高を挙げる。また、格安エアラインの就航が都市部に与えるメリットも大きい。「格安エアラインのおかげで、2~3年前には見られなかった新しい客層がスイスを訪れるようになりました。町に泊まる客の3分の1はこのような客でしょう」とBAKのリチャード・ケンプフ氏は言う。

サッカー効果

 来年はオーストリアとの共催でサッカーのヨーロッパ選手権「ユーロ2008」がスイスで開かれる。そのため、さらに50万泊が都市部で期待されている。

 ケンプフ氏によると、昨シーズンの山岳リゾート地は雪不足で観光客の数が激減したが、強靭な世界経済の追い風を受け、2007/08年のスキーシーズンは2.4%の成長率が見込まれている。

 アルプス地域をさらに魅力的にするためにやるべきことはまだたくさんある。目前に迫る冬に向けて、スイス政府観光局 ( Switzerland Tourism ) は半裸の男性スキーインストラクターをキャンペーンに登場させた。ただし、スイス政府観光局長のユルク・シュミット氏が言うように、スキーリゾートは「セクシーさ」からかけ離れているようだが。

品質の問題

 「2つ星や3つ星といった中級クラスのホテルにも課題があります。4つ星や5つ星の高級ホテルに比べるとサービスの質がなかなか向上しません」とシュミット氏。スキー産業自体も、さまざまな前線でもっと活発な活動を行う必要があることを認識している。

 スイススキーリフト協会が先週行った会合では、気候の変動に対する取り組みがこの業界最大の課題になることが確認された。しかし、将来の戦略計画に世界的な温暖化の影響を組み入れている会社はまだ半数程度だ。そうかと思えば、人工雪を降らせるスノーマシンに何十億円もの大金を注ぎ込んでいるリゾート地もある。

 スイスでもっとも面積の広い観光地、グラウビュンデン州の広報担当ギエリ・スペシャ氏は、「過去数年間で、スキーリフトやホテルに巨額の投資を行ってきました。これがまもなく実を結び始めるでしょう」と期待する。

 外国の投資家もまた、スイスのアルプス観光産業にはまだ成長の余地があると確信している。エジプトの「オラスコムグループ ( Orascom Group )」 はアンデルマット ( Andermatt ) に全800室のマルチホテル&リゾートの建設を計画中だ。また、クウェートのある不動産会社も先週、ベルナーアルプスのリゾート地アーデルボーデン ( Adelboden ) に予定されている中規模スパ&5つ星ホテル建設に1億フラン ( 約99.7億円 ) を超える出資の準備があることを発表した。

swissinfo、デイル・ベヒテル チューリヒにて 小山千早 ( こやまちはや ) 訳

<ホテルの宿泊数>
2007年夏 +3.8%
2007/08年冬の予測 +3.1%
向こう12カ月の予測 +4% 

スイス政府観光局が行っている世界的なキャンペーンは美男スキーインストラクターのコンテストつき。観光局のサイト利用者はコンテストに投票でき、スキーのプライベートレッスンがついた1週間のスキーホリデーが当たる。

観光局のウェブサイト ( http://www.myswitzerland.com/en.cfm/home ) に紹介されているスキーインストラクターの中からもっとも魅力的な男性を選んで投票。

毎週、得票数のもっとも少ない候補者が1人ずつ脱落。最後に残るのが「ベストルッキング・スキーインストラクター」だ。

スキーパッケージの当選者は抽選で決定。

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部