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豚インフルエンザ 世界に拡大の恐れ

メキシコの町トルカ ( Toluca ) 。マスクをかけて病院の前に立つ人々 Keystone

世界保健機関 ( WHO ) の専門家は、メキシコとアメリカで発生した豚インフルエンザがパンデミック ( 世界的な大流行 ) となる可能性もあるとみている。スイス当局は今のところ緊急対策を取らず、経過の観察を続けていく。

豚インフルエンザの感染は広がる一方で、パンデミーの恐れが大きくなるばかりだ。メキシコ保健省の発表によると、豚インフルエンザ「H1N1型」が原因と思われる死者数はこれまで103人に増加した。

世界銀行が融資

 アメリカ政府は「公衆衛生に関する緊急事態」を宣言した。同国で感染が確認されたケースは少なくとも20件に及ぶ。カナダでも6件が確認され、ヨーロッパでも疑いのあるケースが1件報告されている。

 メキシコ保健省によると、メキシコでは4月中旬から約1600人が豚インフルエンザに感染している。フェリペ・カルデロン大統領は保健省に対し、インフルエンザ感染者を隔離し、感染者の住居を検査する権限を与えた。また、兵士が住民に600万枚のマスクを配布したほか、学校や市場、レストラン、映画館などが閉鎖された。世界銀行はメキシコ政府に対し、豚インフルエンザ対策費用として2億2500万ドル ( 約217億円 ) の融資を約束した。

 一方、ヨーロッパでは週末、メキシコから帰国した3人がスペインで、4人がフランスで観察下に置かれた。後に、うち3人はテストで陰性が確認された。そのほか、イスラエルとオランダでも疑いのあるケースが発生している。

スイスは特に対策を取らず

 ポーランド、イタリア、ベネズエラはメキシコへの渡航に関して注意を喚起している。また、メキシコ産、アメリカ産、カナダ産の豚肉の輸入を禁止する国も増える一方だ。中国、ロシア、台湾は豚インフルエンザの症状が出た人を隔離することにしたほか、シンガポールはアメリカからチャンギ国際空港に到着した乗客をサーモスキャンで検査する。

 スイスでは特に緊急対策を取る計画は持ち上がってない。連邦内務省保健局 ( BAG/OFSP ) の流行病学者パトリック・マティス氏によると、通常のインフルエンザ用の予防注射が豚インフルエンザのウイルスにどのくらい効くのかはまだ分からないという。しかし、インフルエンザ治療薬「タミフル」を使っての治療は可能だとみられており、緊急時に国民の25%に投与できる量が常時確保されている。国民からの質問に答えるため、保健局は4月27日正午、ホットライン ( +41 031 322 21 00 ) を開設する予定だ。

swissinfo、外電

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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