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農業廃棄物で自動車を走らせる   スイスの環境対策

野菜のカスやわらなど農業廃棄物からできた自動車用燃料。スイスのガソリンスタンドで給油できるようになる. etha-plus.ch

野菜の残りカスや藁(わら)から自動車用燃料をつくる——。

従来は処分されるだけだった農業廃棄物からエタノールをつくり、新エネルギーとして再利用する動きがスイスでも出始めた。

エタノールを燃料として利用すれば、ガソリンが節約できる上、二酸化炭素の排出量も減らせるため、連邦政府も後押しする。地球温暖化防止に向けて、2月には各国の二酸化炭素削減目標を定めた京都議定書が発効した。原油価格の高騰でガソリン価格も値上がりする中、新エネルギーを利用する動きはさらに弾みがつきそうだ。

エッセンス5

 スイスが推進しているプロジェクト「etha+(エタ・プラス)」は、通常のガソリンに5%のエタノールを混合する「essEnce5(エッセンス5)」の導入が柱。エッセンス5は従来の車にそのまま給油できるのが特徴だ。

 工業用も含めたアルコール事業を管轄するスイス・アルコール協会のピエール・シャラー燃料開発部長も、「エッセンス5はガソリンスタンドや車を改造する必要がなく、商業用としてすぐに利用できるのが利点」と指摘する。

 このため、同協会は国内初のバイオ・エタノール精製工場を2008年までに建設すると発表。完成すれば国内の年間生産能力は4,500万リットルまで拡大する見通しだ。

 エッセンス5は来年にも街のガソリンスタンドにお目見えする予定だが、価格は従来のガソリンと同じ位か「多少割高」という。アルコール協会は2010年までに市場で売られているガソリン全てをエッセンス5に切り替える目標を掲げている。

環境重視

 環境規制の強化で、農産物やその廃棄物を処理してつくるエタノール混合燃料の利用はすでに外国で試みられている。

 例えば、米国はトウモロコシ、ブラジルではサトウキビの繊維質を発酵させて燃料用エタノールを生産し、ガソリンの消費量削減に役立てている。

 2月に発効した京都議定書でスイスは、2008〜2012年の温室効果ガス排出量を1990年時点の排出量から8%減らす義務を負っている。このため、連邦政府は環境負荷の小さいエタノール混合燃料を免税措置にする方針を決めた。

 アルコール協会のシャラー燃料開発部長は、こうした動きも「プロジェクト・エタ・プラスの目標達成に追い風だ」と話している。


 swissinfo  ルイジ・ジョリオ   安達聡子(あだちさとこ)意訳

エタノール混合燃料:


農作物や農業廃棄物から取れる繊維質を発酵させてできたエタノールにガソリンを混ぜた燃料。

石油などの化石燃料と異なり、製造・燃焼しても有害物質の排出が少ないため、新エネルギーとして注目されている。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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