穴が開いてはグリュィエールでない
スイスの代表的なチーズと言えば、グリュイエール、アペンゼル、エメンタールが三大チーズ。グリュエールは中でも国内生産量が一番多く、年間2万5千トンで、その4分の3はスイスで消費される。そんなスイス自慢のチーズにも悩みがある。
グリュイエール製造者の悩みは偽者が10%も出回っていることと、フランスのグリュイエールが幅を利かせていることだ。そこで、スイスで特定の地方で作られる製品の品質を保証するAOC(原産地統制名称)制度を申請し、ラベルを2001年7月に授かった。しかし、これがEU内で認められるかが今後の焦点となってくる。
本物のグリュエールはどれだ?
グリュイエールの原産地は間違いなく、フリーブール州のグリュイエール渓谷地方にちなんで名づけられ、フランスのチーズはこの地方のチーズ職人がフランスに移民して作り方を伝えたので広がったという。チーズ製造を見学できる「グリュエールの家」のクリスチーヌ・ラブさんは「フランスのグリュイエールは穴が開いている。これはグリュイエールでない証拠です。味はゴムっぽいし…」と感心しない。ラブさんにによるとグリュイエールを製造許可されている農家は220あるが、牛がサイロで穀物を食べないこと、チーズを寝かせるには木の板でないといけないことなど細い規則があり、それを守らないとグリュイエールとは呼べない。ラブさんは「牛が美味しい多種の牧草を食べた牛乳でないと美味しくない」と断言する。牧草も高度が1600メートル以上だと草にバラエティーが富み、チーズの味も深みがあるという。
グリュイエールチーズとは?
昔、搾った乳を農家が保存食として山小屋で手作りしていたのがチーズの始まりだ。スイスの伝統的なチーズはハード・タイプが多いのもそのため。グリュイエールもその一つでプロピオン酸菌の作用で発酵させ、塩水でふきながら5ヶ月から10ヶ月熟成させたチーズだ。もちろん、そのまま食べても美味しいが若干塩味があり、粘りは少ないのでフォンデューなど料理にもよく使われる。グリュイエールはレマン湖の束端を入った山中、フランスのブルゴーニュ公の陪臣であったグリュイエール伯爵の城下町の名前だ。遡ると最古は12世紀初頭の修道院に納める「十分の一税」の物品記録に出てくるという。
美味しいチーズの選び方
スイスに近い、フランス領アヌシーの有名チーズ屋店長、ピエール・ゲイ氏は「美味しいグリュイエールの選び方はアルパージュ(高地の牧草)で作られたものを選ぶことと、一年経ったものが一番美味しい」と教えてくれた。夏のチーズは牛が山の牧草で何種類もの花を食べるため、より黄色いという。食べ頃も、冬に買うのなら18ヶ月前に作られたもの、夏なら12ヶ月前が最適らしい。冬でもその前の夏に作られたものが美味しいからだ。ゲイ氏は「フランス人はグリュイエールとエメンタールを混同している人が多い。穴の開いているエメンタールを指してグリュイエールというけど、フランスのグリュイエールはコンテーと同じ」と語る。フランス人の同氏は「本物のグリュイエールはスイスのもの。フランスのもの、コンテーは二級品です」と太鼓判を押してくれた。フランス人もチーズの種類の多さに少し混乱しているのかもしれない。
グリュイエール、 屋山明乃(ややまあけの)
-「グリュイエールの家」は年中、チーズの作り方を見学できる。日本語でも解説も聞くことが出来、10時、11時、15時にデモンスレーションも行われる。
– 10月11日,12日にはチーズ祭り、“ベリション際”といって、山から牛下ろしをする行事がシャメイで行われる。
– スイス人は毎年平均20キロのチーズを食べる。フランス人は24,5キロでギリシアと共にトップだが日本人はたったの2キロ程度。
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