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難民希望者数2割減

滞在許可が下りるまでの間、難民希望者が宿泊するバーゼルの難民施設にて。 Keystone

昨年中、スイスに難民を希望した人の数は前年より2割も減少し、2万8百人に留まった。                                         

一方で、難民としての明確な理由のない希望者が増加している。東欧諸国からの流入の増加し、暴力沙汰など問題化している。
補助金カットも見込まれる中、難民のスイス社会への同化など、問題は相変わらず抱えたままである。                                       

申請者数自体は減少しているものの、難民としてスイスに受け入れを願い出たした人のうち、7千8百人が拒否され、前年より2割増加した。難民局によれば、国家に迫害されているなどの難民としての理由を挙げなられない人が多くなったことと、「安全地帯」とEUで指定されている東欧からの希望者が増えたことが、拒否される人の増加の理由という。

ロシア人やグルジア人が増加

 以前は上位10位内に入らなかったロシア、グルジアからの難民が増加している。こうした傾向はスイスのみならず、欧州各国で見られる。 
 これまでどおり、セルビア、モンテネグロ、トルコが上位にあるが、イラクやアルジェリアからの希望者が増加しているのが新しい動き。一方、前年に急増したコンゴやナイジェリアなどアフリカからは減少している。

 難民局のドミニック・ボアラ広報担当官によれば、審査を待つロシアやグルジアから来た若者たちが、暴れるなどの問題が各州の難民局から報告されるようになった。
 世界の情勢に大きく左右されるものの、難民受け入れ局は今年の難民希望者数は前年並みになると見ている。

難民への予算は削減

 難民の受け入れを要請する人の数が減っている中、各州の難民局は経費削減が進められている。4月1日からは、審査前の人への日当の支払いなど、社会保障が打ち切られる予定だ。昨年末で審査前の人の数は、7千8百人。受け入れを拒否された人たちへの援助もカットする提案がなされている。
今年新しく司法相に就任したクリストフ・ブロッハー大臣はこれまで、難民受け入れに対しては消極的な発言を続けてきたことから、援助削減案を承認すると見られる。

 拒否された人たちへの社会援助の停止に対してスイス難民援助機関などは、抵抗していおり、申請を拒否された人たちへの援助停止は暫定期間を設けるべきだと訴えている。
 スイス赤十字も難民の受け入れを拒否されても多くの人がスイスに居残りつづけると指摘。せめて医療保険は国の補助金で掛け金を払いつづけるようにし、病気の際は、保険が掛かっていないことを理由に病院で治療を拒否されないようにと提案をしている。

スイス国際放送 佐藤夕美 (さとうゆうみ)

難民希望者数
2003年 20,806人
2002年 26,125人
認可されなかった人の数
2003年 7,818人
2002年 6,445人

2003年の難民希望者数は前年比で2割減。
ロシアとグルジア、イラク、アルジェリアが増加。
コンゴ、ナイジェリアは減少。
今年は前年並みと見込まれる。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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