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青少年とアルコール 

酩酊するまでの飲んでしまう人も多い。青少年の飲酒が心配される。 Keystone

スイスの青少年の中には、酩酊するまでお酒を飲む人も多いという。就学中の青少年を対象とした欧州各国の調査で分かった。

アルコール中毒を未然に防ぐ活動をしているスイスのアルコール・薬物使用予防機関は、両親自らがアルコール中毒だったり、両親が離婚して孤独を味わっている青少年や移民の子供たちがお酒を飲み始める頻度が高いと指摘している。

15歳前後のスイスの青少年の9割以上がお酒を飲んだことがあるという。飲酒経験のある人の3分の1が40回以上飲んだと答えている。深刻なのは、男子は5人に一人が、女子は10人に一人が、お酒を飲めば5杯以上で、酩酊するまで飲んだことも3回以上はあるという。

消費量は減っても問題は深刻

 2003年、欧州35カ国の12歳から18歳の就学中の青少年を対象として飲酒と麻薬の摂取の実態調査(ESPAD)が行われた。最終結果は本年12月に発表となるが、今回初めて参加したスイスは、暫定的な調査結果をこのほど発表した。スイスでは7,000人が調査の対象となった。

 ローザンヌ市のアルコール・薬物使用予防機関のミシェル・グラフ氏は、「青少年がアルコールを大量に飲んでいるという実態には驚かされる。しかも、時には酩酊するまで飲んでいる。身体にも精神的にも害を及ぼすような行為だ」と心配する。

 実は、スイスにおけるアルコール消費量は減少している。連邦内務省の健康局の統計によると、2002年スイスで消費されたアルコールの量は一人あたり年間、ワイン41.8�g(前年43.1�g)、ビール55.5�g(同57.1�g)、蒸留酒4�g(同4�g)と減少の傾向にある。

 アルコポップと呼ばれるカクテルは若者が簡単に手に入れることができるアルコールで、国内ではおよそ150銘柄が販売されている。ほとんどが外国製でスイスへの輸入量は、2002年の400万本をピークに2003年は3割強の激減となった。しかし、前出のグラフ氏は「減少しているからと言って安心はできない。若者はアルコポップでアルコールの味を知り、他のアルコールに手を広めるのが問題だ」と語る。

青少年の5万人が家族の飲酒で悩む

 ローザンヌのアルコール・薬物使用予防機関はこのほど、飲酒問題を抱える家庭のための専門家会議を開催した。スイスでは5万人の青少年の家庭で、両親が深刻なアルコール中毒になっていることがまず指摘される。こうした環境の中で、青少年はお酒を飲み始める機会も多い。アル中の両親が離婚したりして、青少年が孤独感に陥ることが最も大きい飲酒の原因と見られる。また、その土地の生活や文化に溶け込めないでいる移民の青少年がお酒に手を出すというケースが多いことも指摘された。

スイス国際放送 ハイメ・オルテガ (佐藤夕美 (さとうゆうみ)意訳)

欧州35ヶ国に及ぶ青少年のアルコール消費調査が行われた。
国内のアルコールの消費量は減少している。
一方で、青少年の飲酒問題は深刻。
5万人の青少年がアルコールの問題を抱える家庭にいる。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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