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香りで楽しむクリスマス

クリスマスマーケットのお菓子屋さん。レープクーヘンにキャラメルアーモンド・・・おいしそうな香りが鼻孔をくすぐります。

(swissinfo.ch)

クリスマスが近づくと多くの家庭で始まるクッキー作り。人によっては何百個も焼いて親戚や友人や日頃からお世話になっている人たちに配ることもあります。まるで日本のお歳暮のようです。普段クッキーを焼かない私もこの時期は特別。娘のお友だちが遊びに来た時などに、一緒に型抜きをしてクリスマスらしい雰囲気を楽しんでいます。オーブンから家中に広がるクッキーの甘い香り。それだけで温かく優しい気持ちになれるから香りの力は計り知れません。

 また、ある香りが特定の記憶と結びついていることもあるものです。アニス、シナモン、クローブ(丁字)、ジンジャー、カルダモンと聞いてクリスマスを連想しない人は少ないのでは?ドイツ語には「クリスマスのスパイス」という意味の「ヴァイナハツゲヴルツ(Weihnachtsgewürz)」という単語があるほど、スパイスとクリスマスは切っても切れない関係にあります。スパイス独特の香りがクリスマスをより特別な行事にしていると言っても過言ではありません。

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 古くから健胃剤として知られているアニス。ローマ時代には食後にアニス入りのお菓子を食べることで消化不良を軽減し、鼓腸(腸内にガスがたまること)を緩和していたそうです。このようなアニスの効能は現在もよく知られ、例えば、乳児が疝痛(コリック)で激しく泣く時はアニスのオイルでマッサージをしたり、アニスティーを与えたりもします。さらに、アニスティーは咳や気管支炎に効果があるので風邪薬にもなるそうです。

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 このアニスをふんだんに使ったクリスマスのお菓子といえば「アニスブロートリ(Anisbrötli)」。生地を長時間乾燥させて白く焼く点は別のアニス入りクッキー「アニスクラベリ(Anis Chräbeli)」と同じなのですが、モチーフが彫られた型を使うところが違います。モチーフはクリスマスの逸話、鳥、花などさまざまで、食べるのがもったいないくらいとても美しいお菓子です。ドイツの南部、スイス、オーストリアの一部に伝わり、ドイツでは「シュプリンゲルレ(Springerle)」の名前で知られています。このアニスブロートリの起源は中世にまでさかのぼります。16世紀の終わりごろ、ヨーロッパで砂糖が多く流通し始めると、修道院ではそれまで以上にお菓子作りが盛んに行われるようになりました。このような中で、アニスブロートリは聖書の逸話をモチーフにして人びとの関心を集めたそうです。まさに「食べる聖書」が誕生したというわけです。実際に食べてみると、絵の部分は歯ごたえがあるのに中はしっとり。噛めば噛むほどほのかなアニスの甘みが口の中に広がります。

(swissinfo.ch)

 ところで、クッキーと同じぐらい、もしかしたらそれ以上に存在感のあるクリスマス菓子といえば、丸い形をして底にオブラートを敷いた「レープクーヘン(Lebkuchen)」でしょう。こちらはアニスブロートリよりも歴史が古く、今日知られている形のレープクーヘンは14世紀ごろから伝わっているそうです。このレープクーヘンには「これぞクリスマス!」と思わせるスパイスがぎっしり詰まっています。辛味のあるハッカのような香りのするクローブ(丁字)には抗菌作用だけでなく健胃作用や整腸作用もあります。そのほかシナモン、ジンジャー(生姜)、ナツメグ、カルダモンなど、それぞれ独特な香りを放つ香辛料ばかりですが、どれも食欲を増進したり、消化器系の機能を促進したりと非常に身体想いのものばかり。

 日本のお正月に無病長寿を願って飲むお屠蘇にクローブをはじめとする数種類の生薬が使われていることを考えると、どうしても私にはこのレープクーヘンが「ヨーロッパ版お屠蘇」に思えて仕方ありません。蜂蜜が入っているのでもちろん甘いお菓子なのですが、キリストの誕生を祝うこの行事に健康に関係のあるスパイスが使われていることはただの偶然ではないのかもしれない。そんな想像も膨らみます。

 このほかにもスパイスの効いたホットワイン「グリューワイン(Glühwein)」やハーブティーなどもあります。さらに、食べ物以外ではアロマキャンドルやアロマオイルとしてもクリスマスの香りを楽しむことができます。このように香りというテーマに光を当てただけでも、クリスマスはとても魅力的で豊かな顔を見せてくれます。香り高いスパイスが持つ隠された癒しの力をもらって、楽しくクリスマスを祝い、そして健康に新年を迎えたいものです。

中村クネヒト友紀

プロフィール:中村クネヒト友紀

2007年にスイスに移住。現在ドイツ人の夫と2歳の長女と共にチューリヒ州に暮らす。職業、翻訳者。趣味は染織、キャンプ、山歩き。近頃は子どもを通じてスイス人と知り合う機会が増えて嬉しいものの、スイスドイツ語には悪戦苦闘中。

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