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高額報酬反対を掲げた白馬の騎士、全州議会議員に当選

トマス・ミンダー氏 Reuters

経済危機で政府から公的資金援助を受けたスイスの銀行最大手UBS。ところがトップマネージャーたちの相も変わらぬ巨額のボーナスに、国民はショックを受けた。シャフハウゼン州で行われた全州議会(上院)議員選挙で11月13日当選したのは、こうした高額報酬制度に反対するイニシアチブの提案者トマス・ミンダー氏だ。

ミンダー氏は無所属。「私はシャフハウゼン州と自分自身を代表するだけだ」と話す。

従業員20人の会社経営者

 10月23日に行われたスイス連邦議会の総選挙。しかし、各州2人ずつの代表で計46人(準州は1人)で構成される全州議会では、代表が投票時に過半数に満たなかった州が11州あり、そこで再投票が行われている。

 ミンダー氏は、こうした州の一つシャフハウゼンの代表としてこの週末、上院議員に選ばれた。

 61.7%という高い投票率の中で、2位の社会民主党(SP/PS)や3位の急進民主党(FDP/PLR)の候補者を破り、無所属でかつ政治的な経験もないミンダー氏が勝利した背景には、何といってもおよそ2年前に「高額報酬制度反対イニシアチブ」を打ち出し、スイス全国で高い支持を得て一躍有名になったからだ。

 20人の従業員を抱える歯磨き粉や自然化粧品の小型製造会社「トリボル(Trybol)」の経営者であるミンダー氏にとって、当時、トップマネージャーたちの高額報酬は「現実離れした経営陣の高慢さ」と映った。

政治に絶望していない

 ところで、政治的教育や経験がないミンダー氏だが、「(高額報酬制度反対の)イニシアチブを提示すること自体が彼の政治的才能を示すものであり、また脱原発に向けた運動でもその才覚を発揮した」と、社会民主党の下院議員ハンス・ユルク・フェール氏は、スイスフランス語圏の日刊紙「ル・タン ( Le temps ) 」の中で高く評価している。

 だが、ミンダー氏は社会民主党に属することは拒否している。「個人的には自由緑の党(GLP/PVL)と国民党(SVP/UDC)の考えに近い」と述べるが、あくまで全州議会では無所属の立場を取りながらも、いずれかの政党を中心としたグループに属し、主に経済危機や脱原発後のエネルギー問題を検討する委員会に属して活動することになると言う。

 「絶えず考えを変える政治家より、独立した企業家の方に人は信頼を置く」とル・タン紙に1年前に語っていたミンダー氏は、現在その政治家に姿を変えたわけだが、「政治家には失望していたが、政治に絶望していたわけではない。もし政治に絶望していたら、高額報酬制度反対のイニシアチブは発起しなかっただろう」と語る。その絶望していない政治での今後の活躍をシャフハウゼンの州民は期待している。

全州議会議員は各州でそれぞれ2人、ただし準州では1人が選出され、計46人から構成される。

2011年10月23日の総選挙では、11州で代表が過半数を勝ち取らなかったため、現在これら11州で再投票が行われており、今後3週間で終了する。

今回の総選挙で国民議会(下院)では、中道右派の急進民主党 (FDP/PLD)や右派の国民党 ( SVP/UDC )、キリスト教民主党(CVP/PDC)など中心的大政党がこぞって議席を減らし、その代わりに中道の小政党である自由緑の党(GLP/PVL)などが議席を伸ばした。

その傾向は残った11州の全州議会議員選出でも続いている。

200人の議員で構成される。以下2011年10月23日の選挙結果

国民党(SVP/UDC) 54議席(-8)
社会民主党(SP/PS)  46議席(+3)
急進民主党(FDP/PLR) 30議席(-5)
キリスト教民主党(CVP/PDC) 28議席(-3)
緑の党(Grüne/Les Verts) 15議席(-5)
自由緑の党(GLP/PVL) 12議席(+9)
市民民主党(BDP/PBD) 9議席(+9)
ティチーノ同盟(Lega di Ticinesi) 2議席(+1)
スイス福音党(EVP/PEV) 2議席(±0)
ロマンド市民運動(MCR) 1議席(+1)
キリスト教社会党(CSP/PCS) 1議席(±0)
スイス労働党(PdA/PST)0議席(-1)

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