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鳥人間 ドーバー海峡を飛ぶ

ロッシさん、念願のドーバー海峡飛行を遂げ、着陸態勢に入る Reuters

9月26日ジェット推進機を装備した翼を背負った鳥人間のイヴ・ロッシさん ( 49歳 ) が、 35キロメートルのドーバー海峡をフランスからイギリスへ一気に飛んだ。

フランス人のルイ・ブレリオが世界初めて飛行機でドーバー海峡を渡り、航空史にその足跡を残したのは99年前のことだった。スイス人のイヴ・ロッシさんがジェット推進機を装備した翼でドーバー海峡を渡ったことは、ブレリオの快挙と同じように歴史の1ページに記録されることになるだろう。

翼は自分の一部

 グリニッジ時間13時6分、ロッシさんは標高2500メートルを飛ぶスイス製の軽飛行機「ピラトゥス・ポーター ( Pilatus Porter ) 」からポロリと飛び降り翼を広げると、4台のジェット推進機を発進させた。ジェット噴流の高温でやけどをしないよう、断熱スーツを着ている。地上から見ると、まさしく鳥が飛ぶようだ。時速200キロで飛び、約10分半後にはイギリス上空に至り「名誉の一周」をした後、ジェットエンジンを止めパラシュートを開き、13分後にはイギリス海岸に着陸した。当初は25日に飛ぶ予定だったが、天候が悪く26日に延長された。

 飛行を終わりロッシさんは
「完璧に行った。天気も風も理想的だった。わたしは、今日最高に幸せな人間だ」
 と語った。
 ロッシさんは元空軍パイロットだが、向う見ずな人というわけではない。パラシュートを2枚準備し、蝋 ( ろう ) で固めた鳥の羽根が熱で溶け、夢に破れたイカロスのような事態には絶対にならないよう、用意周到だった。ロッシさんは自らを「フュージョンマン ( Fusionman ) 」と呼ぶ。
「自分と翼はフュージョン ( 融合 ) している。本当に自分の一部だ」
 と彼のホームページにもある。

 ロッシさんの夢はドーバー海峡を渡るだけで終わったわけではない。次の夢はグランドキャニオン上空を飛ぶことだという。

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9月26日のドーバー海峡飛行では、170以上のテレビ局がそのもようを中継で放送した。6年前から計画が始まり、4年前に処女飛行した。5月にはアルプス上空を飛行し、今回の本番に備えた。
ジェット推進翼は全長2.5メートル、重さ55キログラム、最高時速300キロ。ハイテク技術が満載されているが、操縦はロッシさんの肉眼だけが頼り。発進力や高度などの調節はロッシさんの感覚がものをいう。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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