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「守れスイスの中立と主権」 国連加盟反対派

人民党のクリストフ・ブロッハー議員 Keystone

3月3日の国連加盟の可否を問う国民投票まで、秒読みとなった。加盟反対派グループ「独立・中立スイスのためのキャンペーン」は、国連加盟はスイスの永世中立政策を損なうと最後の訴えに全力を尽す。

国連加盟に反対する人々は、自らに貼られた「孤立主義者」のレッテルを否定する。彼等は、スイスが国連加盟国となったら、外交政策を独自に決定する権限を失い、スイスの永世中立政策が侵害されると主張する。「スイスの強さはその独立性と世界への開放性に基づくものだ。我々は国連安全保障理事会など他国や他の機関の支配下に断じて入りたくない。」これが国連加盟反対キャンペーンの急先鋒に立つ右派人民党のタカ派クリストフ・ブロッハー国民議会(下院)議員の主張だ。ブロッハー議員は、また、国連加盟国となったスイスが負う経済負担について「国連平和維持活動、開発援助などへの拠出額が底なしに増える」と警告する。

スイスでは、国連加盟は過去2回国民投票で否決された。前回、86年の国民投票では、反対票3分の2以上で却下された。今月に入って実施された最新の世論調査では、反対は37%だ。「スイスのような小国は、世界のすべての国際機関に加盟する必要は無い。拠出金で債務が増えるだけだ。我々は政府が金を捨てて歩くのを阻止しなければならない。我々は欧州の中心にある中立国としていつも受け入れられてきた。国連に加盟しなくても、世界は変わらずにスイスを受け入れていくだろう。」と、ブロッハー議員の反対集会に出席したフリッツ・エーゲルターさんはいう。ブロッハー議員ら反対勢力が目指すのは「連邦の独立、中立、安全保障」の保持だという。さらに、「国際関係への不必要な介入」と呼ぶべき「外交上の行動主義」を阻止するつもりだという。

ベルンの政治紙「Der Bunnd」の政治記者ヨハン・エーシュリマン氏は、スイス人の心理に「永世中立」がどれほど深くしみ込んでいるかを過小評価してはいけないという。「スイスの『中立』は神話だ。スイスは完全に中立で独立した国であるという神話的なの見識が、15年程前まで政府によって公言され、また学校でも教育され、国民に植え付けられた。ブロッハー議員ら反対派は、我々が教えられたことを主張しているだけだ。今、世界は変わり、政府は政策を変更しなければならないが、彼等はついていけないのだ。」。さらに、エーシュリマン記者は、国連加盟反対派は主に右派、高齢層で構成されているという認識は誤りだという。「ブロッハー議員の支持層には若い世代が多い。彼等は自分達の主義のために長い戦いを続ける覚悟と意欲があり、実際彼等は戦い続ける中でスイスの伝統である寛容さを破壊している。」。

イタリア語州の歴史家マルコ・マルカッチ氏は、86年の国連加盟をかけた国民投票時、反対派が成功したのは心理的な訴えに集中したからだと分析する。「国連加盟支持派のキャンペーンは、外交的な論考と加盟による損得の分析に基づく物理的なものだった。反して、反対派は、スイス人の心に深く根ざす価値観を揺さぶるアイデンティティーに関する感情論に訴えかけた。が、今では、国際社会におけるスイスの孤立は、アドバンテージというよりもハンディキャップであると国民の目に映るようになり、反対派のキャンペーンは今回はあまり成功していないようだ。」と、マルカッチ氏はいう。

スイス公共放送協会が2月半ばに実施した最新の世論調査の結果では、国連加盟賛成が54%、反対が37%、まだ決めていないが9%だった。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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