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「スイス」航空(SWISS)の再々リストラ

アンドレ・トーゼ社長が会見で「スイス」航空、最後の救出プランを発表した。 Keystone

24日、スイス唯一の航空会社、スイス・インターナショナル・エアラインズ(以下「スイス」)はバーゼル本社で、発足以来、3回目のリストラを発表。同社が発表した再編プランは、3000人を解雇し、飛行機108機のうち、34機を削減予定で冬のダイヤ開始から実施される。

1年半前にスイス航空が破綻し、2002年、4月に地域航空クロスエアーと統合、再建された「スイス」航空は発足以来、経営難に苦しんでいる。今回の再編プランで、経営陣は毎年16億フラン(約1400億円)の経費削減ができると見ている。

経営難

 「スイス」は2002年に約9億8千万フラン(約170億円)の純損失を記録、今年は第1四半期までの純損失は2億円となった。この理由として新型肺炎=SARS(重症急性呼吸器症候群)、イラク戦争や経済停滞などを挙げている。

解雇プラン

 全社員、9520人のうち解雇予定の3000人については半分の1500人が地上職、700人がパイロット、850人が添乗員となっている。これは、雇用者の32%つまり、3人に1人にあたる。労働組合によれば、「スイス」の下請け企業にも多大な影響を及ぼし、約2000人が失業するとみている。フライトに関しては長距離用の飛行機を25機から18機に、中距離用を24機から21機に、地域線用を59機から35機に削減する。

政府の反応

 ジョゼフ・ダイス財務相は「スイス」の大幅なリストラに「ショックを受けている」と語ったが、政府は25日、「スイス」を支援するものの、前スイス航空破綻の時のような多額の出資はしないことを明らかにした。スイス政府は現在「スイス」航空へ20%の出資しかしておらず、この改革については「厳しい生存競争に生き残るために必要な手段」という見方をしている。政府は「スイス」発足時の2002年4月にも26億フラン(2300億円)を出資しており、お金を出すのはもう嫌だという世論の本音を代弁しているようだ。

スイスメディアの受け止め方

 スイスの多くのマスコミは「スイス」の取った極端な再編については生き残りに必要という見方だ。しかし、スイス紙ルタンは「誰が経営不安を抱える航空会社で旅行したいと思うだろうか」と疑問を投げかけ、ドイツ紙ル・ブントも「パイロットとの係争闘争を考えると将来は暗い」と分析する。また、「スイス」航空の経営幹部に関して、ゾンターク・ブリック紙は「経営者は全く事態を収拾できていない」と強く非難し、ターゲス・アンザイガー紙も「この会社を救うための納得のいくプランをまだ出していない」と手厳しい。トリビューン・ド・ジュネーブ紙は「再建の際に政府が押し付けた再編プラン26/26/82機のフェニクス改革プランが最初から甘かった。需要に見合わない図体の大きさが命取りで、これは政府の責任だ」と分析している。


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