「100ドルラップトップ」がデザイン賞受賞
スイス人のイヴ・ベアール氏は、デザイン界で名高いデンマーク・デザインセンターの国際デザインコンペ、インデックス・アワード2007年を「100ドルラップトップ ( OLPC ) 」のデザインで先月、受賞した。
貧しい国の子供たちにも行き渡るように作られた「100ドルラップトップ 」は多くの子供たちに親しまれるようにデザインされ、10月生産に入り、世界中の子供たちに配られる予定だ。
2007年にイヴ・ベアール氏のデザイン会社「フューズ・プロジェクト ( fuseproject ) 」は世界中の様々なデザイン賞を15ほど受賞した。しかし、コペンハーゲンの授賞式にサンフランシスコから自ら出席したのは「これはデザイン界のノーベル賞ようなものだから」と言う。ベアール氏のデザインしたOLPCは337点の応募の中から大賞の5点に選ばれ、10万ユーロ(約1600万円)の賞金を受け取った。
まだ続く冒険
ベアール氏は「最も成功した作品の1つ」であるOLPCがもうすぐ「世界中の子供たちが使うようになる」ことに誇りを持っている。10月末には上海の工場から最初の10万台が生産され、アルゼンチン、ブラジル、リビア、ナイジェリア、ルワンダとウルグアイに配送される。
ベアール氏が率いるフューズ・プロジェクトは「いかに効率的で高性能、なおかつ安価な機会の開発をするか」というチャレンジに成功した。それでも、ベアール氏のアイデアは尽きることがない。現在は、OLPCの新しい形を模索中だ。今度は、6分間手動で充電すれば1時間使えるという新しい形の充電池を開発中だ。
時計、ランプ、ヘルメット・・・
ベアール氏は、さまざまな要素を混ぜ合わせたカクテルのような人だ。スイス生まれのスイス育ちで、母親は東ドイツ出身、父親はトルコ人。これに、近代アートと技術革新を加えてシェイクするとベアール氏の世界ができあがる。
ベアール氏の作品で最も有名なものはハンス・ミラー社のリーフランプ。その時の気分によって、ランプの色が変えられるものだ。その他の代表作に、ミニクーパーの自動車ブランドMINIから出したミニ・モーション・ウォッチがある。文字盤の数字を横書きから縦書きに切り替えられるデジタル時計だ。日本では東芝のノートパソコンがアメリカのIDEAデザイン賞を受賞したので馴染み深い。
将来のプロジェクトについては、あまり語りたくなさそうだ。現在、彼の頭の中に描かれているのはニューヨーク市が注文した自転車用のヘルメットだという。
デザイン界のスターで、多忙なベアール氏だが、自らの時間も大切にする。日曜日にはゴールデン・ゲイト・ブリッジの北のビーチでウインド・サーフィンをする。「だから、サンフランシスコが好きなんです。経済活動の中心にありながら、自然に近い」。彼の着想の原点なのだろうか。
swissinfo、サンフランシスコにて ステファン・ヒスコック 屋山 明乃 ( ややま あけの ) 意訳
- ローザンヌ生まれの40歳。
- カリフォルニア州、パサデナのデザイン学校、アート・センター・カレッジを卒業。
- 1990年代にルナーデザイン事務所を経て、シリコンヴァレーにあるマッキントッシュやスウォッチなどのデザインを手掛けるフロッグ・デザイン事務所に就職。
- アメリカでの成功を受けて、1999年カリフォルニア州に自らのデザイン事務所、フューズ・プロジェクトを創設。現在従業員28人。
- ベアール氏のデザイン作品はサンフランシスコのモダン・アート美術館、ミュンヘンの工業デザイン美術館で展示されており、サンフランシスコの近代美術館 ( SF MoMA ) でも個展が開かれた。
- タイムズ誌に今年、「地球上で最も先見の明のある25人」として、トム・フォード、ノーマン・フォスター、ニコラ・ハイエックやフィリップ・スタルクと共にべアール氏が選ばれる。
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