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2004年の電子商取引は伸び悩む

電子商取引とはインターネット上での買い物だけでなく、企業間の電子商取引がほとんどを占める。 Keystone

国連貿易開発会議(UNCTAD/本部;ジュネーブ)は15日、2004年版「電子商取引と開発」報告を発表した。それによると、途上国のインターネットへの接続が50%も増えたにも関わらず、企業の電子商取引への参加はまだ限られているという。

同報告書の筆者の1人アンジェル・ゴンザレス氏は「多くの企業でコンピュータなど情報通信技術(ITC)が便利な道具として使われているにも関わらず、電子商取引に使われていないのが一番の問題」と指摘した。今後、途上国などの企業が電子商取引を通して生産性を上げる大きな可能性があることを強調した。

 電子商取引はインターネット上でモノ、サービスを受発注する商取引を指す。企業間(Business to Business)と企業と消費者間(Business to Consumer)と消費者間取引(Consumer to Consumer)などがある。その80%から90%を企業間の原材料取引を中心としたB to B(ビジネス トウ ビジネス)電子決済が占める。

 今年の報告では世界の電子商取引の総額は出ていない。しかし、米国とEUのデータからみると電子商取引の総額は着実に伸びている。オンライン売買によく使用されるSSL(データ通信が暗号化により保護される)サイト数も30万件と1年で57%増えた。それでも、企業のインターネット使用が増えているほどには電子商取引は増えていないと報告は指摘する。

伸び悩む理由

 途上国でも既に多くの企業はインターネット接続があり、リサーチや電子メールを使用している。しかし、ITCは整っているのに企業がB to Bに踏み出さないのは何故だろうか。

 この理由には途上国でも先進国でも一番の問題にサイバーセキュリティーが確立されていないことが挙げられる。その他に接続が悪かったり、サーバーが不安定だったりすることが理由だ。多くの企業は技術がないというよりも企業オーナーが電子商取引の重要性を認識していないことにも要因があるとしている。

今後の課題

 今後、電子商取引の発展に必要なこととして、前出のゴンザレス氏は「企業がインターネットを真のビジネスツールとして利用するには、各国政府がブロードバンドを引く環境を整えることや電子署名などが認められる法制度の改定をすることなどが必要。その一方、企業の方もEビジネスプラニングに対する人材育成などの投資が重要だ」と語った。

 
スイス国際放送 屋山明乃(ややまあけの)

UNCTAD発表の「2004年版電子商取引と開発」報告によると:

- 2003年末には世界で6億7,600万人(世界人口の約11%)近くの人がインターネットユーザーとなった。(ITUの統計による)

- これは前年度比で4,950万人(7.8%)増えた。

- 世界のインターネットユーザーの3分の1は途上国に住んでおり、2000年から2003年の間に途上国のインターネット人口は50%も増えた。ネット使用が増えた途上国は主にブラジル、中国、インド、メキシコと韓国の5カ国だった。

- 世界のインターネットに接続するコンピュータも前年比で35.8%増え、2億3,300万台になった。

- インターネットのウェブサイト数は2004年6月時点で約5,100万サイトあり、前年比で26.13%増えた。

- このうち、オンラインショッピングなどで、クレジットカードの番号を送信する際に利用されるSSL(データの通信が暗号化により保護される仕組み)プロトコルを利用しているサイトは、2003年4月から2004年4月までの間56.7%増え、30万件に至った。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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