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3月から再輸出に課税 

再輸出に課税されると、国内産業の負担は3%から8%に上るともいわれる。 swissinfo C Helmle

一度輸入した貨物をそのまま再び輸出する再輸出の課税問題で、EUとスイスが対立している。3月1日から、欧州連合(EU)諸国への再輸出に税金をかける計画があることがこのほど、明らかになった。EUからの一方的な決定が発効の10日前になって判明。スイス産業界は戸惑いを隠せない。

新課税の導入は、EU欧州委員会の内部書類で判明した。対象となるのがスイスだけか、欧州自由貿易連合(EFTA)加盟諸国にわたるのかは、いまのところ不明である。

経済省経済管轄局(SECO)のシュテファン・シュミット広報担当官は新たな課税措置に、不意を突かれた気持ちでいる。25日付のノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング紙(NZZ)の再輸出への新課税の報道を同氏は認め、政府はEUの措置が撤回されるよう、早速EUと交渉すると約束した。

スイス産業へのダメージは大きい

 SECOによると、課税されるようになれば幅広く多くの企業の負担が増加し、スイス産業界へのダメージは大きい。特に機械産業は3%、繊維産業は8%の再輸出課税を負担することとなり、小規模企業でも年間10万フラン単位の出費増になるとSECOは見ている。また、機械、エレクトロニクス、金属などの産業界を代表するスイス機械産業協会(Swissmem)もスイスの産業が他のEU企業に対して不利になると見る。

条約の解釈を変える

 EUはスイスを含むEFTA諸国と1972年自由貿易協定を結んだ。これまで再輸出される貨物は無課税で取引されてきたが、EUは条約を解釈し直し課税できると判断したと見られる。

 1992年にスイスは国民投票で、欧州経済共同体(EEA)への加盟を否決した。「EEAやEUに加盟しないスイスが、加盟国と同じように免税の権利を持ちつづけることにはおかしい」と、EU委員会は長らく疑問を持ち、条約の法的解釈を検討する必要があると感じていたことを明かした。

 現在進行中のEUとスイスの第2の協定交渉は、スイスに資産を預けている非スイス人への課税問題で難航中。しかし、今回の再輸出への課税措置は、交渉自体には影響しないとEU側は確信しているという。

スイス国際放送 (佐藤夕美 (さとうゆうみ)意訳)

EFTA加盟国 スイス、ノルウェー、リヒテンシュタイン、アイスランド
1972年 EU(当時EC)と自由貿易協定結ぶ。
1992年12月 スイス国民投票でEEAへの加盟を否決。
2002年6月 スイス-EU包括協定発効(第1協定)
第2協定は現在交渉中。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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