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3C ロードマップでアフガニスタンに平和を

3月19日、アフガニスタン南部で展開された42の特殊部隊からなる計500人の英国海軍兵のオペレーション。英国海軍はアフガニスタンの国民兵と協力して、このオペレーションを行なった。 Reuters

「紛争国や、政治的、社会的に不安定で紛争を起こしやすい国を援助する関係者が、協力して活動していくためのこのガイドラインは、大きなチャレンジへの第1歩だ」と連邦開発協力局のクリスティーナ・オヨス氏は力を込めた。

「3Cロードマップ」は、独自に援助を行なってきた国際機関や各国政府が、補完し合いながら援助を行うための新しいガイドラインだ。経済危機で資金が限られている今こそ、ターゲットを絞り込み無駄のない援助を行なう必要があるという。スイス政府が経済開発協力機構 ( OECD ) からの依頼で作成した草稿は、「3C会議」で2日間検討された後3月20日に採択された。

3C ロードマップ

 「各軍の部隊が協力関係を築くためには、まずトレーニングが必要だ」。「われわれNGOはほかの機関と協力はするが、やり方に規制は受けたくない」。「援助を受ける側が自分たちの自助能力を高めることが最優先だ」といった意見が19日の「3C会議」では次々と飛び交った。

 従来紛争が起こった場合、第1段階では戦火を止めるため、国連部隊や北大西洋条約機構 ( NATO ) 、さらに国連難民高等弁務官事務所 ( UNHCR ) などが支援に入る。次ぎの復興期には、安全を確保しながらインフラ構築、平和構築などが行なわれ、世界銀行や各国政府、国連開発計画 ( UNDP ) などが参加する。しかし、これらの諸機関は、あまりにもお互いに関係を持たずに活動してきた。
 
 「各国や各機関が自分たちの旗をテントに掲げているが、まったく関係がなかった。話してみると同じような援助を行なっていたりするが、援助後は各国に引き上げ何の連絡もない。こうした状況への反省から、経済開発協力機構 ( OECD ) を中心に『協力』という言葉が出てきた」
 と日本の「国際協力機構 ( JICA ) 」のフランス事務所長宮本幾文 ( いくふみ ) 氏はコソボなどでの経験から、今回のガイドライン作成の背景を説明した。
 
 OECDは昨年5月にスイス政府に対し、各援助機関の相互協力、補完関係などを明示するガイドライン作成のまとめ役を依頼した。
 「スイスの5つの省庁が同じデーブルを囲んで、何を協力できるかと話し合う過程で、例えば、連邦国防省( VBS/DDPS )は安全を保証する以外にの開発援助への可能性も見つけ出した。この過程で生まれたのが、『一貫性のある ( coherent ) 』、『協調性のある ( coordinated ) 』、『補足的な ( complementary ) 』方法、つまり3Cロードマップだった」
 とオヨス氏は説明した。その後この3Cロードマップの概念は、NATO、世銀、OECDの関係者にも受け入れられ、最終的に今回開催された「3C会議」で250人の政策決定者が意見交換しながら検討し、採択されることになった。

試される国アフガニスタン

 だが、「3Cロードマップ」採択後はどうなるのだろうか?
「OECDの会議で報告された後、NATO、世銀などにガイドラインを持ち込んで説明会を開き、こうした機関からの具体的な参加を仰ぎ、同時に各国政府からも今行なえる援助活動計画を提出してもらう」
 とオヨス氏。今後2年間かけてこの成果をまとめる役も、恐らくスイスがやることになるだろうという。

 一方、富本氏は具体的にこの新しいガイドラインで協力が実施される国はアフガニスタンだろうと見る。
 「日本はすでにカブールでインフラ整備や能力開発援助も行なっている。これはアフガニスタンの政府職員が医療、教育行政などをうまく行なっていけるよう援助するもので、彼らは日本の省庁で研修したりしている。現在アフガニスタンにはNATOなども入っているが、今後のこうした諸機関、各国政府、当時国がどのように話し合い、協力し合っていくかでこのガイドラインの成果が試されるだろう」
 と語った。

 実は、開発協力専門のJICAが武器の回収を行なったり、NATOが開発協力やインフラ構築に手を出し始めたり、各機関が枠を超えて歩み寄っている状況が生まれつつあった。ただそこに欠けていたのが対話、協力関係だったという。では、今後これらをコーディネイトする上部組織が必要になるのでは?
 「いいえ、これ以上組織は必要ない。恐らく安全性などの情報も手に入れ、全体を把握しやすい立場の国連開発計画が3Cロードマップを手に中心的な役割りを果たすことになるだろう」
 と富本氏は見ている。

swissinfo、里信邦子 ( さとのぶ くにこ )

世界にはアフガニスタン、スーダンなど紛争状態にある国や政治的、社会的に不安定で紛争を起こしやすい国が50カ国存在し、こうした状況下に置かれている人が12億人いる。

これらの国々を助ける国際機関や各国が協力関係を築く必要性から、OECDはスイスにガイドラインの作成を依頼した。スイスが指名された理由は、政治的に中立で、国際会議を開きやすい環境を持っているためだと言われている。

3Cとは、「一貫性のある ( coherent ) 」、「協調性のある ( coordinated ) 」、「補足的な ( complementary ) 」方法で援助を行なうという、3つの英語の頭文字Cからきている。

援助を受ける側が「オーナーシップ( ownership ) 」と呼ばれる自助能力を高めること。相手国の変化していく状況に合わせて適切な時期に、適切な援助をすること。援助をする国や国際機関がお互いの責任を高めること。制限されたお金を有効に使うことなどの項目別に、多くの勧告がガイドラインには明示されている。

およそ5ページから成るガイドラインの最終ページには、国際機関や各国の今後の援助計画も記載されている。

このガイドラインは、3月19日、20日に開催された「3C会議」で検討され、採択された。その成果は2年後の2011年に再び会議を開いて検討される。 

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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