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スイス企業にはトンネルの向こうの光が見える

エコノミースイスの調査では、高級品部門の伸びはまだ期待できる? Keystone

このほど発表になったエコノミースイス ( economiesuisse ) の調査によると、多くのスイスの企業は景気に対していまだに楽観的だ。スイス国内の来年の経済成長率はゼロと予想され、世界の景気は後退しているにもかかわらず2009年の業績は上昇すると見ている。

エコノミースイスの予想では、失業率は今年の2.5%から3.2%に上昇する。しかし、金利の引き下げにより消費が押し上がり、景気後退が緩和されるというのだ。

スイスはまだ大丈夫 と主張

 輸出関連企業は、スイスフラン高によりダメージを受けているにもかかわらず、光がかすかに見えるという。チーフエコノミストのルドルフ・ミンシ氏は、繊維機械分野には厳しい状況であると認める一方で、食品、精密機械、時計、高級品などの分野は引き続き伸びるという。
「来年は、輸出も内需も楽観的な要素と悲観的な要素のどちらもある。確かに過去のような大きな伸びはない。しかし、産業界の多くの分野で2009年も伸びると予想している」
 
 最も悲観的な見方をする企業でさえ、アメリカの景気は来年9月には回復し、年末にはスイスにもその良い影響が表れるだろうと見ている。回復の時期はアメリカが7月、スイスは10月というのが大方の予想だ。
「経営者たちは、アメリカの景気対策のおかげで、2009年下半期には景気が上向くと見ている」
 とミンシ氏。スイスの回復はEU ( 欧州連合 ) 諸国より、早いとさえ見ているという。

自由化の必要性を強調

 隣国の予想よりスイス経済でやや悲観的な点を挙げれば
「不動産価格が安定していることと、スイス企業は負債による投資に伝統的に慎重であることだ」
 とミンシ氏は言う。もっとも、エコノミースイスのパスカル・ジェンティネッタ次長は、スイス経済は、輸出関連企業の推移以外に注目されなければならない問題を抱えていると警戒している。
「問題は消費者の信頼を失っていくことだ。これは、スイスだけの傾向ではない。全ての工業国の問題だ」
 と語った。

 ゲロルト・ビューラー会長は以前から、金融界における多額の損失が端をなし、消費者の信用を失っていくことの危険性を幾度となく指摘している。ビューラー氏はまた、スイス政府による極端な介入は、市場の自由化を推し進める経済改革にブレーキをかけるのではないかと、憂慮しているという。現在進んでいる自由化の動きは2009年も引き続き行われなければならないと強調した。これは、WTO ( 世界貿易機関 ) の終結、EUとの農業交渉とエネルギー分野の改革、郵政とエネルギー産業の自由化や、二国間の自由貿易条約の達成といった自由化の動きを指す。

swissinfo、マシュー・アレン 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 訳

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エコノミースイス ( economiesuisse )

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの企業が構成する国内最大の経済連合。会員約3万社で、従業員総数はおよそ150万人。企業の規模は多様。目的は、スイスの経済に対し最高の環境条件を作ることにある。

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