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スイス 景気は堅調

スイス企業は将来も堅調 Keystone

連邦工科大学の景気調査機関「KOF」によるスイスの産業界全体の調査によると、企業の売り上げや利益が減少するであろうという予測にもかかわらず、景気は後退しないという。

スイスの景気は、ほかのライバル諸国と比較して堅調である。これはしっかりした内需と金融業と輸出産業に支えられているためだという。銀行業はサブプライムローン問題から抜け出し、今年下半期は上向く。一方、建築業界はEU諸国の輸出に依存しているため、下半期はブレーキがかかると見られる。

KOFもSNBも同意見

 「内需型産業と輸出型産業との違いが出てくる。スイスの経済は外部に開かれており、最終的には、国際市場でその位置を確立しなければならない。しかし現在は内需が好調で、スイスの経済にとってはラッキーな状態にある」
 KOF所長のジャン・エグベルト・シュトゥルム氏は語った。また
「過去2年間にわたり、労働市場が堅調で、実質賃金は上昇している。今後も高いレベルで消費が活発に進むと見られる」
 と続けた。

 シュトゥルム氏の発言はスイス国立銀行 ( SNB ) のジャン・ピエール・ロート総裁のファイナンシャルタイムズ紙上での発言を踏まえたものだ。ロート総裁は、スイス経済は世界の不況から孤立していると発言し、以下のように語った。
「隣国と比較して、スイスの景気はより好調になるだろう。理由は堅調な内需だ。労働市場もしっかりしている。ほぼ完全雇用状態にある」

負の要素と楽観的予測

 とはいえ、スイスの景気が停滞するという兆候は最近、見られた。製造業の業績は軒並み悪く、今年1年の収益の悪化を予想させるものだった。「ゲオルク・フィッシャー ( Georg Fischer ) 」、「リーター ( Rieter ) 」、「エリコン ( Oerlikon ) 」などの上半期の業績は悪化し、株価がこれに応じて下がった。例えば織物機械のリーターは、15%の人員削減を含むリストラを発表し、アメリカのプラントを閉鎖した。化学薬品の「チバ ( Ciba ) 」と「クラリアント ( Clariant ) 」も原料価格の高騰でダメージを受けている。
 8月に発表されたスイス銀行大手「クレディ・スイス ( Credit Suisse ) 」とヨーロッパ経済リサーチセンターの予測によると、経済アナリストの8割が今後6カ月間の企業収益は悪化すると答えている。

 しかし、スイスの景気は引き続き堅調で、企業の業績もこうした負の圧力に耐えうるとシュトルム氏は見る。
「景気の上昇は緩和されるだろうが、極端に停滞したり、後退することはない。その理由の1つに挙げられるのは、国際金融界が荒れていることだ。大手銀行は大きな問題を抱えていることは確かだが、視野を広げて見れば、投資家はやはりスイスの銀行を通して商売の決済をしようと思っている」
 シュトゥルム氏はスイスが世界に冠たる商品取引センターであることを挙げ
「スイスには原料取引市場もあり、他国にはない特異な位置にある。原油国の景気が良く原油を生産するという状態にあれば、間接的にスイスにも良い影響がある」
 とスイスの景気が堅調に推移するという予想を説明している。

swissinfo、マシュー・アレン 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 訳

スイスのGDP伸率予想
連邦経済管轄局 ( seco ) 2008年6月23日発表 2008年 1.9% 2009年 1.3%
KOF 2008年6月23日発表 2008年 2.0% 2009年 1.8%
スイス国立銀行 2008年6月19日発表 2008年 1.5-2.0% 2009年 —
BAK バーセル経済研究所 2008年6月13日発表 2008年 2.0% 2009年 1.6%
スイス経済連 ( economiesuisse ) 2008年6月12日発表 2008年 1.5-1.7% 2009年 1.0%

金融、工業、小売、建設、サービス、ホテル、ケータリング業界の1万1000社にアンケートを発送。今回の回答率は約61%だった。
銀行、保険業界は下半期の6カ月間で業績は大幅に上昇すると答えた。もっとも、2008年上半期の業績が一部不振だったこともある。
唯一建設業界は、将来は短期的に売り上げも利益も縮小すると答えた。
輸出関連企業も悲観的だが、工業部門は年末にかけて業績がやや下降すると予想している。

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