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ロジテックがテレビとインターネットの融合マーケットへ

グーグルTVをソニーの最高経営責任者 ( CEO ) ハワード・ストリンガー 氏が紹介 Keystone

開発者にとってメディア古参のテレビと新参者インターネットの「結婚」は長い間の夢だった。スイスのロジテック、グーグル、ソニーが共同で、この二つを融合する新しい試みに取り組んでいる。専門家の間では、成功のチャンスはまだ不明とみられている。

こうしたアイデアは新しいものではないが、IT産業の大手、マイクロソフトやアップルもいまだに成功には漕ぎ着いていない試みだ。

スイス企業には素晴らしいチャンス

 「グーグルTV」の開発は、グーグル、スイスのコンピューター周辺機器メーカーのロジテック ( Logitech ) 、ソニーの3社が手がけた。
「技術的観点から見ると3社は酷似している。しかし、グーグルの環境が開発に最も有利に働くだろう。すでに確立したユーチューブを持ち、ビジネスモデルに沿ったマーケティングがある」
 と語るのは、連邦工科大学チューリヒ校 ( ETHZ ) の情報学科のユルク・クネヒト教授だ。また「ロジテックにとっては、素晴らしいチャンスだろう」とも言う。

 IT業界は今、フェデラー対ナダルのテニスの試合やトランプゲームの番組をノートブック上で観たり、フェイスブックやスイスインフォのサイトをテレビ画面上でチェックしたり、同じ画面で、撮った写真を見ながら旅行を懐かしむといったことを試みようとしている。

 技術的には、テレビとインターネットの技術の融合には何の支障もない。しかし、ユーザーの動向が問題だ。メールを見るためにテレビにノートブックをつなげる人はいないだろうし、例えば土曜日の夜、わざわざコンピューターを立ち上げてクイズ番組を観るひとも少数ではないだろうか。

ユーザーの頭の切り替えがカギ

 両者の融合についてクネヒト氏は「技術面では全く問題なく、むしろ利点が多くある」と言うが、テレビとコンピューターは全く別々の機械だ。クネヒト氏によれば、グーグルTVの成功は、機器の開発やユーザーの利用システムだけではなく、ユーザーが頭の切り替えをして、いかに固定観念が破られるかにかかっているという。

 「この問題については、ユーチューブがコンピューターとテレビの橋渡し役になると思う。ボッドキャストからテレビへの移行は、ほんの数歩でできる」

 グーグルの狙いは、テレビとコンピューターを融合させ、テレビの広告を取ることにもある。テレビ番組の録画動向を分析し、個々のユーザーに見合った広告を付け、インタラクティブな宣伝も可能になるからだ。

 大ざっぱに言えば、グーグルTVはグーグルのソフトで作られる。このソフトはすでにスマートフォンで使われているソフトOSの「アンドロイド」で、ハードはロジテックとソニーを使う。ソニーは次世代のテレビを製造し、ロジテックはその周辺機器となるキーボード、リモコンといった従来の薄型テレビをグーグルTVにつなげる「セット・トップ・ボックス」の製造を担当する。

 「多くの消費者が買える価格で、高品質のものを作る必要がある」
 とロジテック創始者、ダニエル・ボレル氏は語るが、消費者が買える具体的な値段には触れなかった。発表されているのは、このセット・トップ・ボックスがこの秋アメリカで、来年にはヨーロッパで販売されるということだけだ。

一度にいくつものことができるライフスタイル

 ボレル氏は新製品には助走時間が必要だと見ており、グーグルTVをアイフォーンと比較した。アップルのスマートフォンも市場でその存在を知らしめるまで3年間かかったのだ。
「( アイフォーンのように ) グーグルTV での成功の前兆はある」
 とボレル氏は言う。確かなことは、ロジテックが製造を独占することはないということだ。グーグルTVが成功すれば、グーグルのプラットフォームの情報は開発者に公開されてしまうからだ。
「コンピューター周辺機器の競争の激しい市場での実績がある。ライバルを恐れる必要はない」
 とボレル氏は自信のほどを語った。

 セット・トップ・ボックスを買うか、新しいテレビを買うのか。消費者にとっては、グーグルTVの使い手が決め手だ。テレビの番組を観て、DVDに番組やネットにある情報を記録するということができるのは、今まで通り。番組は好きな時に観ることができるようになり、録画した番組を観ながらネットサーフィンしたり、すべてを同時に進行させたりできる。一つの画面の中に小さなウィンドーを開け、異なった情報を受信するようになる。

 すなわち、1台の機械で、例えばサッカーの試合を観戦しながら、ニュースを読み、フェイスブックにサッカーの審判の悪口を書き込み、フリーキックになったという書き込みを読んでは考え、Eメールをチェックしながら、テレビドラマを録画する一方で、映画をダウンロードし、片手間に結婚記念日にパートナーに贈るプレゼントをオンラインショップで注文するというライフスタイルが可能になるというわけだ。

アンドレアス・カイザー 、swissinfo.ch
( 独語からの翻訳、佐藤夕美 )

2009/2010年業績 ( 3月決算 )
2010年1月から3月の売上は29%上昇し、5億2540万ドルを計上した。
支払金利前税引き前利益 ( EBIT ) は2720万ドル。前年は営業損益4320万ドルを計上していた。第1四半期が振るわなかったため2009/2010年全体の売上は19億6670万ドル ( 前年度比11%減 ) にとどまった。来年度の目標として同社は、売上23億フラン、粗利益は前年度比で34%増を掲げている。

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