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スイスにおける銀行の現状 外資系銀行、相次ぐ事業縮小などでスイスから姿を消す?



外資系銀行に代わり、新興国の銀行がスイスの金融市場に参入するだろうか?

外資系銀行に代わり、新興国の銀行がスイスの金融市場に参入するだろうか?

(Mark Henley/Panos Pictures)

プライベートバンク部門をスイスの銀行に売却して、スイスの営業拠点を引き払う(欧州を中心とした)外資系銀行が、ここ数年後を絶たない。そんな中、こうした銀行に代わって、中国やブラジルの大手銀行がスイスの金融市場に参入してくるとの憶測が飛び交う。

 スイスで事業展開する外資系銀行の数は、2009年のピーク時には162行に上ったが、今年の5月末付けでは121行に減少。撤退した銀行の中にはロイズ、ABNアムロ、サンタンデール、コメルツ銀行、INGなどが含まれる。

 この傾向は7月に入っても続き、イスラエルのルーミ銀行がスイスのジュリアス・ベアにプライベートバンク部門を売却することで同意。ポルトガルのエスピリト・サント銀行もそのプライベートバンク部門の売却を発表した。さらに、イギリスのスタンダード・チャータード銀行もスイスのプライベートバンク部門を他行に委ねる意向だ。

 前出の数字(在スイス外資系銀行の数)には、事業を縮小した外資系銀行は含まれていない。HSBCのように、顧客資産の一部を売却、資産管理サービス部門を縮小する銀行は他にもある。

 こうした状況下で、在スイス外国銀行協会(AFBS)他のサイトへは、ブラジル、中国、シンガポールの銀行がスイスの金融市場に参入し、撤退した銀行の穴埋めをしてくれるよう期待している。事実、その兆候はすでに見え始めている。

 2011年、オランダ系銀行の傘下にあったサラシン銀行を買収したブラジルのサフラ・グループはこの4月、米大手モルガン・スタンレーのプライベートバンキング部門を買収することで同意。7月には同じくブラジルのBTGパクチュアルがイタリアのBSIプライベートバンキングを買収すると発表した。

 「(ブラジルだけでなく)中国やシンガポールの銀行もスイスでの事業展開を計画しているらしい」と言うのはAFBSのマーティン・マウラー事務総長だ。「新興国の銀行には、市場の新規開拓を視野に入れられるまで成長したものがいくつかある。事業を多角化し、新たにプライベートバンキング業に着手するのに、スイスは理想的な土地だ」

更なる懸念

 中国の銀行がスイスの金融市場に参入するという憶測は、先日スイスが中国人民銀行とのスワップ協定の締結に同意したことで一層真実味を増した。スイスが人民元取引のハブ(拠点)となるために、まずはスイスの土地に中国の銀行が根を下ろすことが必要だ。

 しかし、プライスウォーターハウス・クーパースのファイナンシャル・サービス部門のマーティン・シリング部長は、スイスから撤退する外資系銀行の数は、今後も増えるだろうと予測する。

 外資系銀行間に見られる事業統合の動きは、スイスの銀行間で見られるより速いペースで進んでいる。さらに、これまでで最大規模の事業縮小が実施されたのも外資系銀行だった。つまり、想定内だったということだ。「この先も、こうした動きが続くことは十分考えられる」とシリング氏は指摘する。

 外資系か否かに関わらず、スイスに拠点を持つ銀行が現在直面している問題は同じだ。それは、金融危機とそれに続く経済停滞の余波、一連の訴訟問題を引き起こした世界的な脱税撲滅運動、そして規制強化に対応するためのコストの三つだ。

外資系の苦難

 しかし、こうした厳しい状況のもとで最も打撃を受けたのは、やはりスイスの外資系銀行だ。中には、スイスの銀行守秘義務を脱税ほう助のために利用したツケを払っただけの銀行もあるが。

 ルーミ銀行チューリヒ支店は、脱税ほう助をしたとして米国司法省の標的となった14行の一つだった。

 不利な状況に陥り、売却を余儀なくされた銀行もある。エスピリト・サント銀行は、業績不振に加え、かつての経営者リカルド・エスピリト・サント・シルバ・サルガード氏が脱税の疑いで調査を受け、その最中にポルトガルで逮捕され窮地に追い込まれた。

 しかし、前出のシリング氏は、これほど多くの外資系銀行が閉鎖または事業縮小する主な理由は、スイスの業務の規模が小さくニッチだからだと説明する。「規制強化や経済的プレッシャーが高まる中、コアではない業務部門をカットする国際的な銀行があっても当然だ」

銀行業界をとりまく環境の変化

 世界的な金融危機により、全ての銀行が経費削減と戦略の見直しを強いられることになった。時には多大な損失をも伴う業績の悪化、規制当局によるリスク対策としての資本準備金増加の要請に直面し、多くの多国籍銀行が、十分な利益を生み出さないビジネスからの撤退を余儀なくされている。

 さらに、脱税ほう助の疑いをかけられ銀行の評判に傷が付く危険性を考えれば、スイスで細々と営まれているプライベートバンキングを存続させる価値は無くなったと見なす経営者もいる。

 しかし、AFBSのマウラー氏はスイスの外資系銀行セクターは今後安定し、かつてのように繁栄するだろうと確信している。

 「過去2年間の事業統合の動きを見ると、5年後にはスイスに外資系銀行は存在していないのではないかと思うだろう。しかし、そうはならない」

 「確かに外資系銀行の数は減少するだろう。しかし、その時点でスイスに拠点を置き続けている銀行は、さらに強大で(現在とは)違う国籍の銀行だ」

アラブ系の銀行

比較的規模の小さいアラブ系の銀行は、事業統合による外資系銀行撤退のトレンドに反し、その存在を維持し続けている。

2008年の金融危機で世界経済が打撃を受けた時、スイスで事業展開していたアラブ系銀行は10行。そのうちスイスから撤退したのは、バーレーンに本拠地を置くフェイサル・プライベートバンクのみ。ジュネーブにあった同行は、その4年後に米国と東欧の不動産事業に失敗、閉鎖を余儀なくされた。

同じくジュネーブにあるアブダビのファルコン・プライベートバンクは、ヒポスイスの資産管理部門やクレディ・スイスの傘下にあるクラリデン・ロイのヨーロッパでの事業を買収し、事実、拡大を続けている。

ウェルス・マネージメントを主な業務とするスイスのアラブ系銀行は、他の銀行と違い、脱税ほう助スキャンダルとは無縁だと、スイスのアラブ系銀行を対象にコンサルタントを行うナスリ・ムルハム氏は言う。ムルハム氏はかつてジュネーブのアラブ系銀行の最高経営責任者を務めていた経歴を持つ。

「アラブ諸国では、そもそも税率がかなり低いか全く無いため、脱税目的でスイスに資産を持ち込む顧客はいない」とムルハム氏。

「スイスの銀行が好まれる一番の理由は、スイスが政治的に安定しているから。政情が不安定な時世に、安心して資産を預けることができる場所は、スイスをおいて他には考えられない」

さらに、ジュネーブはフランス語圏にあり、生活レベルも高く、商品取引の拠点としての重要性も増していることから、アラブの富裕層には常に人気がある。

この人気は、1970年代に中東で石油が採掘されるようになって以来続いている。当時、中東地域の銀行業務が遅れていたためだ。


(英語からの翻訳・徳田貴子 編集・スイスインフォ), swissinfo.ch


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