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スイスの金融大手、黒字と人員削減 

UBSをはじめ、スイスの大銀行はまだ暗雲を追い払わなければならない Reuters

第3四半期、スイスの銀行最大手UBSは10億2000万フラン(約905億円)、第2大手のクレディ・スイス(Credit Suisse)は6億8300万フラン(約606億円)の純利益を計上した。

クレディ・スイスは同時に1500人の人員削減を発表。UBSも今夏すでに3500人の削減を発表している。

UBS予想外の黒字

 UBSの純利益は昨年同期比39%の減益だが、アナリストの予想3億フラン(約265億円)を大幅に超えた黒字となった。ロンドンの投資部門で発生した不正事件の影響もあり、暫定CEO(最高経営責任者)のセルジオ・エルモッティ氏は10月初旬の時点で「そこそこの利益」しか見込んでいなかった。

 この予想外の業績はほとんどが会計上の押し上げ効果によるものだ。7月から9月までの3カ月間、相場の変動により、UBSを含む世界の銀行が持つ負債の価値が減少した。UBSは数年前から、このような動きを利益として記帳している。

 帳簿上の利益は17億6500フラン(約1558億円)で、最終的に18億5000万フラン(約1633億円)となった不正事件の損失をほぼ飲み込む金額だ。これに有価証券の売却で得た7億2200万フラン(約637億円)が加わる。この利益は資産管理部門の利益改善、スイス国内のユニバーサルバンキング、リストラ費用の調整に投入された。

 資産管理部門ではロンドンのスキャンダルの影響はほとんど見られず、新規に第2四半期とほぼ同額の実質78億フラン(約6882億円)の資金純流入を計上した。これらの顧客の大半はアメリカやアジア出身、新興国の大富豪も多い。一方、ヨーロッパでは資金の流出が目立つ。

CS リスクを放出

 金融第2大手のクレディ・スイスは今夏、投資部門などの不調からすでに2000人の削減を発表したが、今回再び1500人カットに踏み切る。広報担当者によると、対象となるのは主にスイスで行われている有価証券の取引業務やプライベートバンキングなどの部門だ。

 市場の変動に左右されやすい投資部門は今後縮小される見込み。銀行規制の厳格化に目を据えて資本の土台を強化し、リスクを放出する。投資部門の中でも特にリスクが大きい確定利付証券を扱う業務は半減される予定。2007年から2008年にかけて、この分野で各国の多くの銀行が膨大な損失を出した。

 投資部門はこの先、法人顧客の投資管理やプライベートバンキングへの加勢に力を入れる。同部門は第3四半期、経済の緊張により1億9000万フラン(約168億円)の税引前損失を計上した。

 全体では税引前利益10億4000万フラン(約919億円)、純利益6億8300万フラン(約606億円)を計上。しかし、純利益は10億フラン(約883億円)近くになるというアナリストの予想を大きく下回る形となった。

スイス中銀も再び黒字に

 10月末にはスイス国立銀行(SNB/スイス中銀)も業績を発表した。上半期には108億フラン(約9539億円)に上る赤字を計上したが、第3四半期終了後には58億フラン(約5123億円)の黒字に転換。続くスイスフラン高の中、ユーロ/スイス フラン相場に下限を設定したことよりも、金の保有高および確定利付き商品への投資によるところが大きいという。

 金価格は年初から9月末までに11.4%上昇し、今年9カ月間で50億フラン(約4420億円)の評価益があった。利子収入も40億フラン(約3539億円)に達し、低金利による相場上昇で有価証券など37億フラン(約3269億円)の評価益を計上した。

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