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スイスフラン相場に上昇圧力 介入観測が浮上

Swiss franc and euro coins
スイスフランはユーロなどの外貨に対してまたもや上昇している Keystone / Laurent Gillieron

米中貿易戦争がスイス経済に暗雲をもたらしている。投資家心理が下向き、安全通貨であるスイスフランに資金が流入している。スイス国立銀行(中央銀行、SNB)がフラン高の抑制に動き出すのかどうか、注目が集まっている。

フランの対ユーロ相場は7月の大部分で1ユーロ=1.10フラン台を維持していたが、8月に入って1.09フラン台に急騰している。

ジュリウス・ベアのチーフエコノミスト、ヤンヴィレム・アケット氏を始め、米中貿易戦争の深刻化が市場不安をもたらしていると指摘する専門家は多い。中国が5日に人民元相場をドルに対して切り下げると発表し、緊迫が高まっている。

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フランの上昇はスイスの輸出企業や観光産業にとってマイナスとなる。アケット氏はスイスの製造業がすでに景気後退期に入っていると指摘する。SNBは為替市場に介入し、外国通貨・債券を買いフラン相場を押し下げることを検討していたという。

SNBは介入の実績や予定を明らかにしていない。だが民間銀行がSNBに預けている当座預金の額は、SNBが介入を実施したことを示唆する。当座預金はSNBの負債に当たり、SNBが外貨買い・フラン売り介入を行うと、売ったフランに相当する額が当座預金に計上される。SNBの統計外部リンクによると、7月29~8月2日の平均値は5827億フランと、1週間で15.5億フラン増えた。日刊紙ターゲスアンツァイガーによると、クレディ・スイスのマキシム・ボテロン・エコノミストは「1週間に10億フラン以上の増加は、介入を強く示唆する動きだ」と話している。

もう一つ、SNBには利下げによりフランの魅力を低下させるという手がある。政策金利は既にマイナス0.75%と負の領域にあるが、米国が先月末に約11年ぶりに利下げに踏み切り、欧州中央銀行(ECB)も来月利下げすると予想されている。

アケット氏はフラン相場が1ユーロ=1.06フランを下回った場合、SNBもマイナス1.00%まで金利を引き下げざるを得なくなるとみる。

スイスの民間銀行はマイナス金利を法人顧客に転化し始めている。スイス最大手のUBSは、11月から200万フラン(約2億2千万円)以上の資産を預ける超富裕層にマイナス金利として0.75%の手数料を課すと報じられている。

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(英語からの翻訳&編集・ムートゥ朋子)

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