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クレディ・スイス 脱税ほう助認め罰金約28億ドルでようやくの終止符

 エリック・ホルダー米司法長官(中央)はワシントンで行われた記者会見で19日、クレディ・スイスは積極的に米国人顧客の脱税ほう助を行ったと述べた Keystone

脱税ほう助疑惑で刑事訴訟に持ち込まれたスイス金融大手クレディ・スイスと米司法省(DJO)との間に決着がついた。クレディ・スイス側は、「米国人顧客の脱税を意図的にほう助した」と有罪を認め、米当局が課した罰金28億1500万ドル(約2850億円)を受け入れた。スイスのエヴェリン・ヴィトマー・シュルンプフ財務相はこの結末に満足し、「これでスイス金融界は再び力を取り戻せる」と話した。しかし、州立銀行などまだ脱税ほう助疑惑での協議が終了していない銀行がスイスには13行ある。

 

 エリック・ホルダー米司法長官は、ワシントンで行われた記者会見でスイス時間の20日早朝、「クレディ・スイスは米国人顧客に対し『積極的に』、無申告の口座に収入や財産を隠し、脱税するよう促した」と述べた。また、クレディ・スイスが捜査に非協力的だったとして強く批判。米国人顧客に関するデータの破棄も行われたと述べた。

 ジム・コール副長官は、同じく米国人顧客の脱税ほう助で2009年に7億8千万ドルを払ったUBS(UBSは有罪ではなかった)とクレディ・スイスとの大きな違いは、3年間にわたる捜査の間の非協力的な態度にあったと強調した。

 一方、クレディ・スイス側は、「意図的に米国人顧客の脱税をほう助した。改ざんされた税申告書を提出するよう顧客に促した」と述べ、有罪を認めた。

  米上院常設調査委員会が今年2月に発表した調査書によれば、クレディ・スイスは、2006年に2万2千人の米国人顧客口座を所有し、計100~120億ドルの資産を保管しているが、この大半が脱税資産だという。

 なお、ホルダー氏は「規模の大小に関わらずいかなる銀行も司法の目を逃れることはできない」と再び明言し「クレディ・スイスは過去20年で、自行を有罪だと認めた最も大きな銀行だ」と結んだ。

最も重要な刑事事件

 スイスの銀行が払う罰金としては最高額を課されたクレディ・スイスは、これを受け内部整理を迫られている。リスク部門を減らし、一部不動産の売却も行う予定だという。

 

 一方、クレディ・スイスのブレイディ・ドゥーガン最高経営責任者(CEO)はコミュニケで、「米国との間で行われたこの脱税ほう助事件を心から悔やんでいる。これは、クレディ・スイスにとって最も時間のかかった、最も重要な刑事事件になった」と述べている。

 しかし、これでクレディ・スイスが銀行ライセンスを失うことはない上、業務にも影響は出ない。また、現在のところ、ドゥーガン氏の退任も伝えられていない。

「一つ終わった」とスイス政府

 スイスでは、エヴェリン・ヴィトマー・シュルンプフ財務相が記者会見で20日、米司法省と決着がついたと胸をなでおろした。

 ヴィトマー・シュルンプフ氏は協議に直接参加しなかった。しかし、米国がクレディ・スイスを米国や他国の銀行と同じように平等かつ正当なやり方で扱うよう、政治レベルでの努力を怠らなかった。

 「一つこれで解決した」と財務相は述べ、米当局から脱税ほう助疑惑で調査を受け協議を続けているスイスの銀行がまだあることを示唆した。「13行はそれぞれ個別に協議を行っていき、また今回のクレディ・スイスの罰金額は他行にとっての規範には決してならない」と語った。

 つまり、罰金額はこれら13行の「犯罪」の度合いと米当局の捜査に協力的か否かによって決まるとされる。

富裕層の資産管理分野の変化

 この結末を受け、スイス国立銀行(SNB/スイス中銀)のトーマス・ジョルダン総裁は、「数年来引きずってきた事件に終止符が打たれ、新しいページがめくられた。クレディ・スイスは過去の過ちを正すことで、今後自信を取り戻すだろう」と財務相同様、満足感を示した。

 ただし、「この事件で富裕層の資産管理分野の国際部門は変わってしまった。特にここ数年の間、この部門のせいでスイスの銀行の評判がかなり悪くなってしまった」と指摘した。

 残る13行については、「米国は13行を、国籍とは関係なく正当な形で取り扱ってくれることは間違いない」と話した。

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