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スイスで500年の歴史を持つ書店

オレル・フュズリのポスター
Orell Füssli Gruppe

チューリヒなどドイツ語圏でよく目にする書店「オレル・フュズリ外部リンク」。500年の長い歴史を持つ印刷会社でもあり、始まりはチューリヒ聖書の印刷だった。現在は書籍の販売に加え、紙幣やパスポートの印刷も行っている。

今をさかのぼること500年前。スペインの船乗りたちが新大陸を見つけに大海原に飛び出し、ミケランジェロがフィレンツェでフレスコ画を描いていたころー。チューリヒは宗教改革の真っただ中にあった。

10フラン紙幣
スイスの10フラン新紙幣はオレル・フュズリが印刷している Dominic Büttner / Orell Füssli Verlag

スイスの新10フラン紙幣は、オレル・フュズリでも印刷されている

宗教改革という新しい思想を多くの人に届けるためには、新しい媒体が必要だ。そこに目を付けたのが、独バイエルン出身のクリストフ・フロシャウアーだった。彼はチューリヒの小さな会社を引き継ぎ、ツヴィングリが訳した「チューリヒ聖書」の印刷で頭角を現した。

>>フルドリッヒ・ツヴィングリが関わったチューリヒの宗教改革期の「ソーセージ事件」

それから5世紀が経ち、会社は多角化したが、印刷業はいまだ健在だ。偽造防止印刷のマーケットリーダーとして、オレル・フュズリはスイス国立銀行と契約し、紙幣印刷を請け負う。スイスのパスポートもここで印刷されている。

オレル・フュズリ
チューリヒ聖書が初めて印刷されたのはオレル・フュズリだった Keystone

有名なチューリヒ聖書。オレル・フュズリが初めて印刷した

一方で、何世紀にもわたり同社のビジネスを支えてきたのは書籍だ。フロシャウアー自身は、その生涯を閉じるまでに約700の書籍出版にかかわった。その一部はチューリヒの国立博物館に展示されている外部リンク(4月22日まで)。

オレル・フュズリのサイトで販売する書籍は約800万冊に上る。ドイツ語圏地域には35の店舗があり、本、ビデオゲーム、文具を販売している。

オレル・フュズリ
チューリヒにあるオレル・フュズリ本社 Keystone/ennio Leanza

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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