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自動車の見本市「グランドバーゼル」、スイスで初開催

自動車の見本市「グランドバーゼル」が今月初め、スイスのバーゼルで初めて開かれた。選りすぐりの車だけを展示するこのイベントの巨大なロゴが、会場入り口のドア上部に掲げられている。アルファロメオからザガートまで、新旧のクラシックカー、レーシングカー、スーパーカーが会場を彩った。

それにしても1万2千人の来場者で採算は取れたのだろうか?イベントの主催者は満足しているようだ。当初から控えめな表現はなかった。「この展示場は期待に満ちあふれている!」「傑作、価値の高い車。それがここに集結している」「車は芸術だ!」

会場のホール1は開催日遅くになってようやく人が集まってきた。コレクターやVIPはイベント前の2日間に来場していたからだ。私が訪れたのは一般公開の初日で、非常に居心地が良いと感じた。多くの来場者が私と同じようにカメラを構え、そうでなくともスマートフォンで写真を撮っていたからだ。女性は少なく、ほとんどが誰かの同伴で、一人で来ている人はほぼ皆無だった。これだけの素晴らしさと美しさを目の当たりにすると、教会にいるような感覚さえ覚える。ほぼがらんどうのメッセ会場に集まった人々の控えめな足音、そしてボリュームを抑えた会話が聞こえる。

グランドアベニュー(展示会の通路)の端ではパオロ・トゥミネリ教授が、デザインをこよなく愛する来場者グループの中心にいる。ここでは突如として女性ばかりだ。(車体が)丸いのか角ばっているのか、そんな質問が飛び交い、教授が議論を始めようとする。より丸みを帯びたほうが、人に好まれる。四つの車輪が支えるボディの丸みを帯びたカーブ、そこに人は女性的な欲望の対象を見出し、妖艶な歌で人を誘惑するセイレーンを思うのだと。

展示会のミニマルなコンセプトのど真ん中に、明らかに神経を逆なでするものがある。それはぼろぼろのシートにボディのさびついたフィアットパンダだ。フィアットパンダは人工芝のカーペット上に展示されている。これはいかにもおかしく、そして不思議と道理にかなっている。この車はフィアットの「デザインアイコン」であることは間違いないからだ。ただ、この車に絶滅の危機に瀕する動物にたとえて「パンダを救え」というスローガンを付けたのは、むしろ痛々しく、(会場に展示された)美しいデザインの車たちの中で悪趣味さを際立たせているとも言える。

グランドバーゼルはアートバーゼルやバーゼルワールドを主催するMCHグループが企画した。バーゼルワールドはスウォッチグループの撤退を受け財政危機に陥っている。主催者は、とても手の出ない夢の一台を一目見ようとやってくる自動車ファンはもちろん、何よりも世界のカーディーラーやコレクターをターゲットにしている。

自動車はただ並んでいるのではなく、専門委員会が展示に趣向を凝らした。文化的・歴史的価値が高く、デザインの優れた車約100台が、グランドバーゼルのコンセプトに合うよう作られたショーケースにおさめられた。つやつやとした光沢の美しいレーシングカーやリムジンの保険価格は3億フラン(約330億円)に上る。展示品のほとんどはスイス国内のものだ。展示会で配られた無料の刊行物のタイトルもやはり「車は芸術だ!」。雑誌にざっと目を通すと、一部のコレクターはまるで切手を収集するかのごとく車を集めていることがわかる。展示会では、約4分の1の車が実際に売却済みだった。

グランドバーゼルは来年2月に米マイアミ、その後は香港でも開催される。

(独語からの翻訳・宇田薫)

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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