バーゼルを拠点に活動する写真家兼アートデザイナーのロジャー・フンベルトさんは、スイスの前衛写真の第一人者だ。1950年代に幾何学的均衡を重んじる抽象表現を生み出した小規模な芸術家グループの一員で、ドラマチックな光の使い方が特徴だった。
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英国生まれ。1994年からスイス在住。1997年から2002年までチューリヒでグラフィックデザインを学ぶ。数年前に写真編集者に転身し、2017年3月からswissinfo.chのチームに参加。
Helen James, 写真(Roger Humbert/スイス写真財団)
フンベルトさんは2019年12月に90歳を迎えた。写真とグラフィックデザインを学び、その分野で仕事をしたのち、1950年代に独自の表現方法で実験的な作品制作を始めた。制作に使ったのは写真カメラではなく光源で、印画紙に長時間露光することで画像を作り出す、ルミノグラムという手法だ。「私は光を撮る」。フンベルトさんはそう語った。
そして印画紙上に直接物を置くなどして感光させイメージを生成する技法「フォトグラム」で、新たな形や構造をグラフィカルに作り出していく。
フンベルトさんはさまざまに光の温度を変え、それが画像にどう影響するかを調べた。ステンシルや他の道具なども使い作品のデザインを完成させた。
技術的性質の強い作品を制作していたことから、フンベルトさんは「写真界の自然科学者」と呼ばれた。
ロジャー・フンベルトさんの作品はチューリヒ近郊のスイス写真財団(Fotostiftung Schweiz)に保存されている。また、ヴュルツブルクのペーター・C・ルパート・コレクションやジュネーブ美術・歴史博物館など、数々の国際的な美術館で展示されている。
フンベルトさんは現在バーゼルで暮らし、活動を行っている。
(英語からの翻訳・西田英恵)
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スイス東部の町、ザンクト・ガレンのパン屋の息子として生まれたミッテルホルツァーは、ギムナジウム(中等教育)を終えた後チューリヒに引っ越し、そこで写真の技術を学んだ。早くから野望を抱いていた彼は、実家のパン屋を継ぐ気はなかった。
実業家としての才能があったミッテルホルツァーは、スイスの初期のプロペラ機に乗り込み、国内の村や町、工場の写真を撮影して、それを住民、行政機関、工場主などに販売した。やがて彼は国境を越え、ノルウェー領スピッツベルゲン島で調査を行っていた極地探検家ロアール・アムンセンの元へ飛ぶことになる。それから1年後、今度はペルシアに向けてプロペラ機を飛ばし、その際に新たな飛行ルートを開拓。そして、「スイス号」でのケープタウンへの飛行で一躍有名になる。
このプロペラ機には、現地の熱帯気候にも耐えうる特別なカメラと小型カメラがそれぞれ2台積まれていただけでなく、現像室までもが作り付けられていた。まさに「空飛ぶ暗室」だ。ミッテルホルツァーの撮影隊が描く被写体のイメージははっきりしていた。野生動物、踊る人々、上空からの景色だ。
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