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ロイタルト大統領 新年の抱負を語る

隣国との友好関係は、ロイタルト大統領の優先課題の一つになる swissinfo.ch

2010年度のスイスの大統領を務めるドリス・ロイタルト経済相が今年の展望、抱負を語った。

経済危機のなか、昨年から引き継ぐ多くの課題を前に「経済問題を解決するには諸外国との友好関係が必然だ」と語る。ロイタルト経済相は昨年10月、日本・スイス経済連携協定 ( FTEPA ) 締結を記念し日本を訪問している。

swissinfo.ch : 2009年から引き継ぐ経済問題など、2010年は大変多くの課題を抱えていますが、喜びを持って大統領の任務に就かれるのでしょうか、それともある種の危惧をお持ちですか。

ロイタルト :  何と言っても第1に、強い責任を感じています。大統領としての一年は、興味深い会議への参加など多くの有意義で豊かな経験があると思います。しかし、昨年から引き継ぐ問題を解決することはわたしの責任ですし、政府が一体となってスイスの直面する問題に立ち向かっていくためにも、わたしの責任は大きいと思っています。

従って、繰り返しになりますが、この意味で責任感を強く感じ、また相手に対する尊重ということも大切にしていきたいと思います。

swissinfo.ch : 対外問題と国内問題のどちらがより大切な政治的な挑戦になるのでしょうか。

ロイタルト :  この二つを切り離すことはできません。スイスの収入の2フランのうち1フランは外国からもたらされるからです。諸外国と良い関係を維持すること、スイス企業がハイレベルのマーケットアクセスを行えることは非常に大切です。また、高い評判を維持することも欠かせません。

そうしなければ、今年は失業率が最高になるような国内問題を解決することはできないのです。国内における新しい仕事の獲得、労働市場の回復など、すべてが対外関係と緊密に関係し合っています。

swissinfo.ch : 諸外国の中でも特に隣国との友好関係を維持することが優先だと言われましたが、それは具体的にどういう意味でしょうか。

ロイタルト :  最も緊密な外国との関係とは、実は隣国との関係なのだということを忘れがちですが、文化、経済、交通、教育など、スイスは隣国に強く結びついているのです。

つまり、絶えず対話を続けていく相手は欧州連合 ( EU ) だけではなく隣国であり、隣国との国境を挟んで起こる問題を解決していく必要があります。

swissinfo.ch : しかしまさに、隣国のドイツ、フランス、イタリアと銀行守秘義務で問題になっています。

ロイタルト :  経済危機では各国の関心が多岐にわたるのは当然のことです。フランスでは、財務大臣が国庫を埋めようとしてスイスを攻撃しています。スイス政府はこうした状況だからこそドイツと租税条約を結び、またチューリヒ空港のドイツからの便の着陸問題を解決していこうとしています。

フランス、イタリアとも同様に租税条約を結ぼうとしていますが、租税問題はまだ多くの課題を抱えています。だからこそ、この3カ国との関係は緊密に保っていかなくてはならないのです。

swissinfo.ch : スイスは孤立していて、同盟を結べる国がないとう批判者がいますが、これをどう思われますか。

ロイタルト :  スイスは孤立してはいません。対外的に難しい時期なのでこうした印象を持つ人がいるかもしれませんが。スイスは良い友好関係や他国との緊密なネットワークを維持しています。しかしこれは育てていかなければならないものです。特にEUやG20、北大西洋条約機構 ( NATO ) に所属していない国としては大切なことです。

swissinfo.ch : 今年の大統領のリストの一つに中国との経済関係を緊密にするということがありますが。

ロイタルト :  中国はスイス政府にとって最優先の国です。中国と経済連携協定を結ぶという視野から、少なくともわたし自身が1回は中国を訪問し、中国からもハイレベルの閣僚がスイスを訪れることになっています。

swissinfo.ch :  ところで、再び国内問題ですが、失業率が高くなっているにもかかわらず、失業保険改正を行うのは矛盾だという批判がありますが、どう思われますか。

ロイタルト :   失業保険の構造の欠陥は改善されなければなりません。それは、すでに景気が良いときからの問題で赤字は増加するばかりです。今後景気が回復するまで待つような問題ではないのです。

今修正されつつある失業保険改正法は、現在失業している人には関係せず、不景気が終わったときに適用されます。

( 若者を対象に失業保険支給を削減するという ) 今回の改正はかなり理にかなったものだと思います。若者を除けば、ほかの年齢層における保険料も期間も以前と変わらない上、若者は仕事において ( 職を容易に変えられるといった ) 柔軟性があり、家族の面倒を見るといった義務もまだなく、専門性もまだ高くないのである種の職にさほど執着する必要がないからです。例えば、55歳で職を失ったシングルマザーと比べて、若者の保険支給料を少なくするのは正当化できることです。

swissinfo.ch :  ところで、7人の大臣から構成される内閣に対し、仕事のやり方や構造のあり方において改革が必要だという声がありますが、どう答えますか。

ロイタルト :  こうした改革を単に口にするだけではなく、実際に取り組んでいくのがわたしの目的です。スイス連邦議会との多くの仕事、諸外国との多くの課題を解決するためにはかなりの時間が必要とされます。そして、そのための政治的意思は存在していると信じています。

アンドレアス・カイザー、swissinfo.ch
( 英語からの翻訳、里信邦子 ) 

1963 年生まれ。弁護士。
2006年、内閣に入閣。
以降、キリスト教民主党 ( CVP/PDC ) からは唯一の大臣として任務にあたっている。

The Swiss presidency rotates スイス政府には、ほかの多くの国と違い、首相も常任の大統領もいない。
1848年以来、政府は連邦大臣と呼ばれる7人の閣僚で構成され、その中の1人が1年ずつ輪番制で大統領の任務を遂行する。
大統領は連邦議会の上、下院によって選ばれる。
通常、大統領になる前の一年は副大統領を務める。
大統領は、国内外で政府の代表として活動するが特別な権限を有せず、従来の大臣としての職務を遂行する。しかし、大統領は7人で行う閣僚会議の議長を務め、「平等な7人の閣僚の第一人者」となる。

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